- 2023-9-17
- Impression (絵画展の感想)
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先日東京都美術館で「永遠の都 ローマ展」を観てきました。
今回は世界最古のカピトリーノ美術館から作品が集結!という事で、前々から愉しみにしていた展覧会でした。約2000年前の”古代ローマ”の彫刻が見れるわけですから、そりゃあ期待値は高くなるというもの。
そして実際に行ってみたら、大理石彫刻は釘付けの連続!でしたね。改めて彫刻は”LIVE(生)感”に限るな~と思ったものでした。
「永遠の都 ローマ展」は東京と福岡の巡回開催になっています。これから行こうと考えている方、どうしようか迷っている方もいるでしょう。今回は実際に観てきた私の感想レビューを元に、見所のポイントについても話していこうと思っています。ぜひ、参考にしてもらえたら幸いですね。
【 目次 】 ・はじめに… |
はじめに…
私的には2023年の下期で、特に注目していた展覧会が今回の「永遠の都 ローマ展」でした。
なぜここまで注目していたのか??
やっぱり”カピトリーノ美術館(Musei Capitolini)”という存在が大きかった。
何せ、地味に凄い美術館だからです。世界最古の美術館と言われるだけあって、歴史を感じさせるだろう作品がこの目で観れると思ったから。そう考えると、2000年を超えるローマの歴史と文化を垣間見よう!という趣旨にはピッタシだろうと思っていました。
でも如何せん…
チラシもそうですが、地味なんですよね。世間的な注目度はイマイチなのかもしれませんね。
私が思う「ローマ展」の見所はコレです!
一言で言えば、”大理石の彫刻”これに尽きます!!
もちろん、奇跡の初来日!と言われる、「カピトリーノのヴィーナス」もそうです。(東京限定にはなりますが)
彫刻作品の醍醐味は、何といっても全方位から鑑賞できる事!
前から真横から、そして斜め上から。ちょっと下から眺める感じで観たり。こういった楽しみ方が出来るのは、彫刻作品ならでは。
しかも大理石の彫刻は、キラキラと光る光沢があったり、模様があるのが特徴です。それらを間近で、しかも様々な角度から観れるわけですから。この感動は言葉でいくら説明しても分からないと思います。ぜひ実際に足を運んで観てもらいたいものですね。
参考として、私がおススメの彫刻作品をピックアップしてみました。
・「負傷した牝犬」44×69cm、ペンテリカス産大理石
・「豹と猪の群像」70×120×43cm、ペンテリカス産大理石
…ほぼ等身大の彫刻です。しかも制作は1世紀だそうで、この時代にここまでリアルな彫刻を作れる技術があるなんて…、想像しただけでも驚愕です。猪と豹のリアルな動きをそのまま忠実に再現したかの様で、観ているだけでも鳥肌物です。
・「トラヤヌス帝の肖像」高さ68cm、パロス島産大理石、カピトリーノ美術館所蔵
…この肖像のモデルとなっているのがローマ皇帝”トラヤヌス”です。今回「トラヤヌス帝の記念柱」の版画も展示されているので、こちらも要チェック!
今回の「ローマ展」では、人物肖像の大理石彫刻だけで約10点ほど、他にも「豹と猪の群像」と言ったリアルな作品まであります。近年ここまで彫刻の質と量を備えた展覧会は他にあっただろうか??
「永遠の都 ローマ展」の感想レビューをお話しします!
”カピトリーノ美術館”はローマの歴史が凝縮した世界で最も古い美術館の一つに数えられます。そこから作品がズラ~とやって来たわけですから、期待しないわけにはいかないですよね!?
特に楽しみだったのが、彫刻と版画作品たち!これまで何度か話しましたが、ピラネージの版画は個人的に期待大ですし、それから複製とはいえ「コンスタンティヌスの巨像」なども気になります。中でも必見は「カピトリーノのヴィーナス」でしょう。ただ東京限定の展示なので、福岡では見れないですが…。
そんなワクワクを胸に秘め、「ローマ展」に行ってきたのですが…
観てきた私の感想としては、”大理石の彫刻”は圧巻だった!でも全体的には、もの足りなかったな~という感じです。
展示作品が約70点程なので、欲深い私からすれば物足りないと感じるのは当然です。それに元々期待感が高過ぎただけに、物足りないと思うのも仕方がないですよね。
とはいえタイトルにも書いている通り”大理石の彫刻たちは、実に良かった!” 2000年くらい前に制作された彫刻から醸し出す重厚感と品の高さ!これは見ごたえありますね。^^ この興奮は、実際に本物を観ないと分からないと思います。
さて、この流れで話をしていくと文章多めになりそうなので、ここでちょっと気分を変えて作品を挙げてみようと思います。順番的には版画を挙げたいところですが、色的にモノクロだと地味ですから、色映えする絵画を一点紹介しようと思います。
・199.0×128.0cm、カンヴァスに油彩、カピトリーノ美術館 絵画館所蔵
ピエトロ・ダ・コルトーナ(Pietro da Cortona)の代表作の一つに数えられる「教皇ウルバヌス8世の肖像」です。
教皇ウルバヌス8世は、本名マッフェオ・ヴィンチェンツォ・バルベリーニ(Maffeo Vincenzo Barberini)。コルトーナにとって、ある意味パトロン的な存在だった人です。事実ウルバヌス8世の依頼で制作した作品も多かったようです。その一つがコルトーナの最大傑作と言われるバルベリーニ宮殿の『神の摂理(フレスコ画)』という天井画です。いつかこの天井画は見てみたいものですね!^^
これはチラシの一部分になってしまいますが、上の写真は「コンスタンティヌス帝の巨像(複製)」です。今回の「ローマ展」では、頭部と左手、左足が展示されていました。本物ではないにしろ原寸大ですから、迫力は満点です。
それから古代ローマのシンボルと言われる「カピトリーノの雌狼(複製)」も必見ですね。
ただこればっかりは仕方がないですが、今回の「ローマ展」は基本撮影が出来ません。彫刻は全方位から楽しめるので、角度によって違った表情を見せてくれます。もちろん写真も同じで、角度によって彫刻の様々な表情を撮れたりできる。本当なら破損した脚の部分とかも見せたかったですが、ん~残念ですね。(私の目には焼き付ける事は出来ましたが…。)
余談にはなりますが、同じような彫刻で「ルーパロマーナ(ローマの牝狼)」があり、東京の日比谷公園で見れるので良かったら参考に!
さて、タイトルにも書いていますが、今回の「ローマ展」で超必見は大理石の彫刻作品です。
約10点ほどの”人物肖像の大理石彫刻”は見事!としか言いようがないです。意図して展示していたのか分かりませんが、一部石膏の彫刻もありました。石膏と大理石を比べて見れたのは、実にオモシロイ部分でしたね。キラキラと光る大理石で造られた権力者や女性の像は、高貴さと品が感じられてイイですね!^^ つくづく相性がイイのが分かる瞬間です。
「カピトリーノのヴィーナス」(2世紀)高さ193cm、大理石、カピトリーノ美術館所蔵
そんな大理石の上品さと女性の美しさを最大限に発揮した作品が、今回の目玉でもある「カピトリーノのヴィーナス」でしょう。大理石の美しさによって、”美”の象徴と言われるヴィーナスがより美しく見えるからです。
それに体つきも実に魅力的ですしね!腰からお尻にかけての柔らかそうな肉感には見とれてしまいます。現代では太った部類に入るかもしれない体型ですが、当時はこのくらいが理想的な体型だったのかもしれない。少なくとも、私にとっても理想的な感じではありますが。^^ ここだから言える話ですが、実は「カピトリーノのヴィーナス」の周りを何周もグルグル回りながら、眺めてしまっていたほどです。美術館内だから許される行為かもしれないけど、これが現代の街中だったら、変人扱いされ警察沙汰になっているかも!?おかげで目に深く焼き付いたので、写真要らずですが…。
・印刷面:40.2×64.4cm、エッチング・エングレービング
そして↑こちらが、個人的に楽しみにしていた”ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ(Giovanni Battista Piranesi)”の版画作品です。
・印刷面:40.4×54.5cm、エッチング
以前の記事でも書きましたが、建築家視点の版画は凄い!の一言です。改めて詳しくは書きませんが、ルーペでじっくりと鑑賞してほしいですね。ピラネージ版画の醍醐味は何といっても”マクロ鑑賞”に尽きると思っています。
・紙面(6面合計)286×46.5cm、エッチング
特におススメは、展示室”SECTION5”で展示している「トラヤヌス帝の記念柱」です。
・紙面(6面合計)286×46.5cm、エッチング
紙面の横幅は46.5cmで、驚きは286cmという高さ!!さすがに立てた状態の展示は難しいようで、テーブルに広げた状態での展示でした。私なんかは時間を忘れて、ルーペでじっくりと魅入ってしまいました。^^ 何せ人間1.5倍の高さの紙面に、約2500人が描かれているわけですから!!この細かな描き込み様は、ピラネージ版画の真骨頂だろうと思います。
(参考)
⇒「ローマの景観」で知られる版画家で建築家”ピラネージ”を解説!
⇒ピラネージの版画「トラヤヌス帝の記念柱」は、見れば観るほど凄い!
これは図録の表紙になっている「カンピドリオ広場の眺め」です。
エッチング技術による版画の醍醐味は、何といっても線一本一本の細密ともいえる描写です。この世界観はマクロ派の私にはドンピシャですね。ぜひルーペで堪能してほしいと思います。
そういえば…、美術館内で感じた事!
今回美術館内で鑑賞している時にふと感じた事があります。それは版画をルーペで鑑賞している人が本当に少ない。もうちょっと版画の楽しみ方が分かれば、よりオモシロイのに…と思いつつ。今回展示している版画作品の多くはエッチングによるもの。繊細な線が特徴の一つでもあるので、こういったマクロな世界観はやっぱりルーペじゃないとなかなか味わわえないです。もし持っているなら、持参は必須です。その方がより楽しめると思います。
・101.0×151.0cm、カンヴァスに油彩、カピトリーノ美術館 絵画館所蔵
マッティア・プレーティ(Mattia Preti)、1613ー1699年に活躍したイタリアの画家です。知る人ぞ知るカラヴァッジオに影響を受けた画家”カラヴァッジェスティ”の一人です。
・185.0×137.0cm、カンヴァスに油彩、カピトリーノ美術館 絵画館所蔵
先ほどちょっと話しましたが、ピエトロ・ダ・コルトーナの作品です。
(参考)⇒バロック期の建築家で画家”ピエトロ・ダ・コルトーナ”を解説!
・23×44cm、羊皮紙に水彩、カピトリーノ美術館 絵画館所蔵
そして締めに挙げたい作品がカスパール・ファン・ヴィッテル(Caspar van Wittel)の水彩画です。
写真の様な景観的構図と水彩画ならではの柔らかさ!地味にイイ作品です。実は写真的な作品にイッポリート・カッフィの「フォロ・ロマーノ」もあります。一見写真の様に見えて、でも間近で観ると油絵だと分かる。この”紙一重”的な作品は、実際に本物を観ないと分からない部分でしょうね。
興味のある人は、ぜひ行ってみる事をおススメします。
「永遠の都 ローマ展」の開催概要
この「ローマ展」の大きな見所は彫刻作品と言っても過言ではない!彫刻は全方位から楽しめる芸術です。実際に行かない、その良さは分からないもの。だから、個人的には行ってほしいわけです。
【 永遠の都ローマ展 】 (東京開催) (福岡開催) |
カピトリーノ美術館の作品を通して、2000年というローマの歴史を知ろう!とカッコよく言うつもりもなく、純粋に作品を楽しむにも最適です。出来ればルーペを持参する事をおススメしますね。版画のマクロな世界観も見れますしね。
興味のある人は、ぜひ行ってみる事をおススメします。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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