- 2025-10-18
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”インフルエンザ流行”の時期になると、普段よりも”マスク着用”を意識してしまうものです。
そして同時に、私は”ペスト医師(Plague Doctor)”のマスクや衣装を思い浮かべてしまう!
芸術好きになると何でもアートと結び付けて考えてしまうのは、”芸術好き人間のあるある”ではないでしょうか。

「17世紀、ローマのペスト医師」 ※public domain画像
ペストが大流行していた時代に、ペストの治療に当たっていた”医師”をご存知ですか!?
カラスの口ばしに似たマスクを着用し、奇妙な衣装を身に付けた格好が特徴で、俗に”ペスト医師”と呼ばれていました。
この衣装を考案したのが、フランスの医師”シャルル・ド・ロルム(Charles De Lorme、1584-1678)”
1619年に考案され、最初はパリで使用。その後はヨーロッパ全土に広まっていったそうです。
現在でいう防護服の様なものだろうけど、当時はまだペストに対する治療法や予防法が分かっていなかったので、この格好が”当時のベスト”だと考えられていた様です。

「1720年、ペスト大流行の光景」(1721年)ミシェル・セール
・カンヴァスに油彩、マルセイユ美術館所蔵
とはいうものの、ペストに感染してしまう医師も多くいたそうで、効果で言えばそこまではなかったかもしれませんが…。
ただこういった思考錯誤の連続が、現在の”ペスト撲滅”に一役買っていると思うわけで、歴史的に見たら無駄な事ではなかったと。
現在日本では1927年以降ペスト患者の報告はないですが、ただ一部の国や地域では報告されているそうです。

「ペスト医師の衣装」(1656年) ※public domain画像
さて、一見奇妙にも思えるペスト医師の格好ですが、実はこの様な意味があったのはご存知でしたか??
まず医師が着用している帽子や衣装ですが、これは接触や露出をできるだけ防ぐためだったとか。
つまり、現在でいう防護服の様なものだったそうです。

では”カラスの口ばし”に似たマスクは、一体どんな意味があったのだろうか!?
実はこれにもちゃんとした意味があったと言われています。
口ばしにはミントやアンバーグリス、バラの花びらなどが詰められていて、これによって悪臭から身を守ってくれると信じられていたそう。
つまり当時ペスト(黒死病)は、悪性の空気によって感染(空気感染)すると考えられていたわけです。
現在ペストの感染経路は、感染者(もしくは動物)との接触や飛沫感染とされているので、このペスト医師の衣装が決して間違いではなかったと思います。
それでも感染した医師も多かったと言われているので、当時のペストの恐ろしさが垣間見れるわけです。

「ペスト(The Plague)」(1898年)アルノルト・ベックリン
・149.5×105.1cm、テンペラ、バーゼル市立美術館所蔵
当時ペストに感染したら、3人~2人に1人は死亡すると言われていたそうです。
14世紀にヨーロッパで大流行時では、ヨーロッパの人口の約3分の1以上に当たる”約2000~3000人”が死亡したとか。全世界でみたら約8000人が亡くなったといわています。
参考に新型コロナ感染による死者数は、全世界では680万人を超えたと。(WHOによれば、約1500万人との推計)
そう考えたら、ペストがいかに恐ろしい感染症だったかが分かると思います。
医師に携わった人たちもそれなりに覚悟の上で従事していたって事でしょう。

という感じで今回は、マスク繋がりで”ペスト医師”の話をしてみました。
現在ではアートは娯楽の一つではあるけれど、時として”歴史を伝える資料”ともなる。
これも”ART”の魅力だと思います。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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