国立西洋美術館の新収蔵作品「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」について解説!

国立西洋美術館

 

先日国立西洋美術館の「常設展」で、新たな収蔵作品を目にしました。

ラヴィニア・フォンターナアントニエッタ・ゴンザレスの肖像です。

 

知っている人もいるでしょうけれど、この絵はちょっとインパクトのある作品です。

愛らしい少女が描かれていると思いきや、実は顔が体毛で覆われているからです。

今回は「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」について話していきたいと思います。

 

目次

「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」の詳細
新収蔵化された理由は、画家が女性だから!?
女性画家ラヴィニア・フォンターナと代表作について

 

 

 

 

「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」の詳細

「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」(1595年頃)ラヴィニア・フォンターナ

「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」(1595年頃)ラヴィニア・フォンターナ

・54.5×47cm、カンヴァスに油彩、国立西洋美術館所蔵

初めて目にする人は、顔が体毛で覆われている事に驚くと思います。

別に”だまし絵”というわけはなく、正真正銘少女を描いた肖像画です。

遺伝的な疾患のため、顔が体毛で覆われているだけなのです。つまり”多毛症”という病気です。

ちなみに当時はこの病気に対する理解がなかったようで、”半人半獣”。つまり”見世物”として扱われていた様です。現在の価値感では、差別的となるだろうけど、当時はまだまだ差別に対する認識が低かったようですね。

 

私の考え
て、そんな時代的な背景が分かると、この作品の魅力がさらに増すというもの。

まず注目して欲しいのが、この絵では少女を見世物として扱っていない点です。

凛とした態度”が見て取れるというか、つまり一人の人間として描いた様に見えるのです。

 

画家ラヴィニアは少女を見世物としてではなく、”一人の人間”として描いたというわけです。

少女が真正面を向いてモデルになっている点からも、画家とモデルとの信頼関係が読み取れますしね。

見た目はちょっとインパクトはあるけれど、でも見れば観るほど作品に深みが増してくる。これはこれで”名画”と言っても過言ではないでしょうね。

ちなみにこの作品は、元々ブロワ城美術館が所蔵していました。それが2023年に国立西洋美術館が購入し、現在に至るというわけです。

 

て、ここで一つ疑問に思う人もいるでしょう!!

国立西洋美術館
なぜ国立西洋美術館は、この絵を購入したのだろう?? …と。

日本を代表する国立の美術館ですから、”奇をてらってではないのは確かです。

つまり、ちゃんとした深い理由があっての事!

それは以下で話していこうと思います。

 

 

 

新収蔵化された理由は、画家が女性だから!?

解説

なぜ、国立西洋美術館は「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」を購入したのか??

ネットで調べると、女性芸術家の作品だからと書かれています。美術館側が積極的に女性芸術家の作品を蒐集しているという背景がある様です。

 

も、単に女性画家が描いたからだけではないと思っています。

私独自に深読みすると、現代社会に照らし合わせて、この画家と絵が最適だったからだろうと思っています。

 

「自画像」(1579年頃)ラヴィニア・フォンターナ

「自画像」(1579年頃)ラヴィニア・フォンターナ

・15.5cm(直径)、銅板に油彩、ウフィツィ美術館所蔵

ラヴィニア・フォンターナ(1552年~1614年)は、16世紀後半に活躍したイタリアの画家。

絵画史で言えば、ルネサンス後期になるでしょうか。ちょうどエル・グレコと同時代に生きた画家です。

画家の詳細については以降で話していきますが、ラヴィニアを語る上で特に重要なポイントは、歴史的に初めて職業画家として成功した女性という点でしょう!

16世紀頃と言えば、まだ女性芸術家はほどんどいなかった時代です。そんな時代に、ラヴィニア・フォンターナは女性画家として評価を得た。この功績は凄いと思いませんか?

しかもラヴィニアは結婚してからも、職業画家として一家を支えていった。女性の社会進出のパイオニアと言っても過言ではないわけです。

 

私の考え
こうやって考えると、「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」が新収蔵化された理由は、単に女性画家の作品だからというだけじゃない。

もっと言えば、女性の社会進出が叫ばれる現代において、もっとも最適な画家だから!と言った方が適切だろうと思うわけです。

 

 

 

女性画家ラヴィニア・フォンターナと代表作について

Dictionary

もうちょっとラヴィニア・フォンターナについて話していこうと思います。

随所にラヴィニアの代表作も挙げていくので、どういった画家でどんな絵を描いたのか?

簡単ですが、私なりに解説していこうと思います。

 

時代で言えば”16世紀頃”で、ルネサンス後期に活躍した女性芸術家。

当時、女性画家はほとんどいませんでした。そんな時代にラヴィニアはどんな形で評価されていったのか?

 

「使用人が伴奏するスピネットのある自画像」(1577年)ラヴィニア・フォンターナ

「使用人が伴奏するスピネットのある自画像」(1577年)ラヴィニア・フォンターナ

・27×24cm、カンヴァスに油彩、聖ルカ・アカデミー所蔵

ラヴィニア・フォンターナ(Lavinia Fontana)

1552ー1614年、イタリアのボローニャで生まれます。

父”プロスペロー・フォンターナ”が画家だった事もあり、早くして絵の指導を受けます。

ラヴィニアは宗教画や神話画、肖像画など様々なジャンルを描いていましたが、特に肖像画での評価が高かったそうです。早くして肖像画家として活躍していきました。

そして1577年、ラヴィニアが25歳の時に結婚します。

 

「貴婦人の肖像」(1580年頃)ラヴィニア・フォンターナ

「貴婦人の肖像」(1580年頃)ラヴィニア・フォンターナ

・115×90cm、カンヴァスに油彩、国立女性美術館所蔵

ここでラヴィニアを語る上で外せないエピソードを紹介したいと思います。

ラヴィニアは20代で結婚しますが、その後も一家の大黒柱として家計を支えていきます。

別に夫に問題があったというわけではなく、ラヴィニア自身が職業画家として活動したかったからだと言われています。事実、夫は非常に協力的で、時には助手として制作のフォローもしていたそうです。

 

「女性の肖像」(1590年頃)ラヴィニア・フォンターナ

「女性の肖像」(1590年頃)ラヴィニア・フォンターナ

・55×41cm、パネルに油彩、個人蔵

家族の協力もあり、ラヴィニアは肖像画家として成功をおさめていきました。

当時の権力者や貴族階級の人たちから多くの注文があり、特に注目すべきは、当時のローマ教皇家系からの依頼でした。例えば、第226代ローマ教皇グレゴリウス13世も肖像画に描いています。

 

「服を着るミネルヴァ」(1613年)ラヴィニア・フォンターナ

「服を着るミネルヴァ」(1613年)ラヴィニア・フォンターナ

・258×190cm、カンヴァスに油彩、ボルゲーゼ美術館所蔵

こういったラヴィニアの活躍を目にすると、女性の社会進出のパイオニアと言っても過言ではないと思いませんか!?

それに、そんな彼女の作品を購入した国立西洋美術館の見る目も流石だな!!と。

ラヴィニア・フォンターナの装飾的な描写や鮮やかな色彩観も非常に見物です。でも美術鑑賞は単に作品を観るだけがすべてじゃないと思っています。画家の背景を知ってこそ、より深く味わえる部分もあるわけで、これも芸術の醍醐味!!

 

国立西洋美術館
ぜひ、美術館に行ってLIVE感で作品を観てほしいものです。

もちろん今回の話を参考に、鑑賞してくれたらより幸いですが。^^

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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