- 2017-3-15
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![地獄](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2017/03/inferno.hell01.jpg)
現在ある”地獄”という概念の基を創ったのが
ダンテ・アリギエーリの『神曲』と言われています。
この『神曲』が完成したのが1321年頃なので、
約700年前には地獄という世界観が創られた事になりますね。
そしてダンテの『神曲』地獄篇を正確に再現したのが
サンドロ・ボッティチェリの「地獄図(地獄の見取り図)」になります。
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![「地獄の見取り図」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2016/10/botticelli.chartofhell02.jpg)
「地獄の見取り図」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ
漏斗状の形をした地獄の世界観を表現した絵。
この地獄は9つの階層から構成されていて、
罪を犯した者はその罪に度合いに応じて
それぞれの階層の地獄へ振り分けられる仕組みになっていると言います。
そして下へ行くほど大罪の地獄になっていて、
最も重い罪を犯した者が行く場所が最下層にある地獄…
別名”コキュートス”と言われる”裏切者”が行く氷の地獄が待っているのです。
今回はそんなダンテの創造した”地獄”を、
ギュスターヴ・ドレの挿絵を見ながら覗いてみようと思います。
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(地獄界) 第一圏…”辺獄”洗礼を受けなかった者が行く地獄。 |
このダンテの書いた『神曲』は
暗い森の中に迷い込んだダンテ自身が
古代ローマに生きた詩人”ウェルギリウス”と出会う所から始まります。
そして導かれるかの様に
地獄の世界へと案内されていくのです。
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![「ダンテ『神曲』地獄篇、第3歌9行」ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2017/03/inferno_3line9.gustave_dore01.jpg)
「ダンテ『神曲』地獄篇、第3歌9行」ギュスターヴ・ドレ
まず2人の前に現れたのが”地獄の門”。
この門には次のような文字が黒々と刻まれていたのです。
この門をくぐりし者、苦痛に満ちた都市に入る…
この門をくぐりし者、永遠なる苦痛が待ち受けている…
この門をくぐりし者、破滅した人々の一員になる…。
この門をくぐりし者、一切の希望を捨てよ…と。
ここからでも
うめき声や悲痛な叫び声が聞こえてくるのでした。
・・・
そして最初の地獄が目の前に見えてきたのです。
・第一圏…”辺獄(リンボ)”の地獄
![「ダンテ『神曲』地獄篇、第3歌9行」ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2017/03/inferno_3line9.gustave_dore01.jpg)
「ダンテ『神曲』地獄篇、第3歌9行」ギュスターヴ・ドレ
ここは洗礼の恵みを受けなかった者が行く場所”辺獄の地獄”。
彼らは決して罪を犯してはいないものの、
洗礼を受けなかったがためにここで時を過ごす事になるのです。
特に叱責もなければ希望もない…
ただ永遠と時を過ごす事になると言います。
ちなみにキリストが生まれる以前に生きていた人間は
洗礼の恵みを受けていないのでこの辺獄の地獄に居ると言います。
例えば詩人ウェルギリウスやソクラテス、プラトンがここに当てはまります。
・第二圏…”愛欲者の地獄”
![「ダンテ『神曲』地獄篇、第5歌105行」ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2017/03/inferno_5line105.gustave_dore01.jpg)
「ダンテ『神曲』地獄篇、第5歌105行」ギュスターヴ・ドレ
…ここは肉欲の罪を犯した者が行く場所”愛欲者の地獄”。
肉欲…つまり性欲や愛欲と言ったものでしょうか、
歴史上の人物で言えば”クレオパトラ”がここに居るそうです。
この”愛欲者の地獄”では
休むことなく地獄の暴風が吹きすさんでいる。
荒々しい地獄の暴風によって
愛欲者たちはあちこちへと吹き流され、そして互いにぶつかり合っている。
想像するだけでうめき声や鳴き声が聞こえてきそうですね。
・第三圏…”貧食者(どんしょくしゃ)の地獄”
![「ダンテ『神曲』地獄篇、第6歌24行」ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2017/03/inferno_6line24.gustave_dore01.jpg)
「ダンテ『神曲』地獄篇、第6歌24行」ギュスターヴ・ドレ
…”大食いの罪を犯した者が行く場所”貪食者の地獄”。
ここには3つの頭部を持つ犬”怪物ケルベロス”がいて、
罪を犯した者はケルベロスによって引き裂かれ牙で噛み砕かれるそうです。
そして食われた後もまた糞となって排出され再生し、
またケルベロスによって食いちぎられるという永遠の地獄が待っているのです。
つまり永遠にケルベロスによって噛み砕かれ、喰いちぎられるわけですね…。
・第四圏… ”貪欲者の地獄”
![「ダンテ『神曲』地獄篇、第7歌65行」ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2017/03/inferno_7line65.gustave_dore01.jpg)
「ダンテ『神曲』地獄篇、第7歌65行」ギュスターヴ・ドレ
…ここはケチで浪費の激しい者が行くとされる場所”貪欲者の地獄”。
節度を持ってお金を使う事が出来なかった者は、
重い袋を転がし互いに罵声を浴びせあっているそうです。
個人的にはケルベロスによって
永遠い喰いちぎられる貪食者の地獄の方が苦しい感じに思いますが…。
・第五圏… ”憤怒者の地獄”
![「ダンテ『神曲』地獄篇、第8歌27行」ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2017/03/inferno_8line27.gustave_dore01.jpg)
「ダンテ『神曲』地獄篇、第8歌27行」ギュスターヴ・ドレ
…そしてここは怒り狂った者が行く場所”憤怒者の地獄”。
傲慢で怒り狂った者たちが沼に漬け込まれ、互いに責めたてている。
現世で怒り狂っていたものは、この地獄でも怒り狂い続けるのだそうです。
・第六圏… ”異端者の地獄”
![「ダンテ『神曲』地獄篇、第9歌124行」ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2017/03/inferno_9line124.gustave_dore01.jpg)
「ダンテ『神曲』地獄篇、第9歌124行」ギュスターヴ・ドレ
…ここは異端者が行くとされている場所”異端者の地獄”。
ここでは異端者は炎が噴き出ている墓に葬られているそうです。
炎によって灼熱の如く赤熱した墓からは
異端者のうめき声が聞こえてくる。
灼熱地獄に近い悲痛な様子が想像できると思います。
・第七圏… ”暴力者の地獄”
…ここは他人や自身に対して暴力を行った者が行く場所”暴力者の地獄”。
その暴力の種類に応じて3つの環に振り分けられているのでした。
![「Inferno Canto14(37-39)」ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2016/11/inferno_canto14_37_39.gustave_fore01.jpg)
「Inferno Canto14(37-39)」ギュスターヴ・ドレ
第1の環…隣人への暴力を行った者は、
煮えたぎる血の川で茹で上げられて悲痛な声を発している。
第2の環…自ら命を絶った者は自殺者の森で灌木と化し、
ハルピュイアによって葉をついばまれるのです。
血と悲痛な声を上げていたり…
(ハルピュイアとは半人半鳥の怪鳥の事)
第3の環…神を蔑(さげす)んだ者には
火を発する熱砂と上からは火の雨が降り注いでいたりと、
暴力の行いによって様々な拷問が待っているのでした。
・第八圏… ”悪意者の地獄”
…悪意を持って罪を犯した者が行くとされている地獄。
・第九圏… ”裏切者の地獄”
…裏切りをした者が行くとされている最下階の地獄。
ここは別名”コキュートス”とも言われています。
![「Inferno Canto32(97-98)」ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2016/11/inferno_canto32_97_98.gustave_fore01.jpg)
「Inferno Canto32(97-98)」ギュスターヴ・ドレ
ここでは裏切りの罪を犯した者は永遠に氷漬けにされるという末路が待っています。
辺りを見渡すとあちらこちらに凍り付いた裏切り者たちの姿が…。
分厚い氷に浸かった身体と、
頭だけが出ている様はまさに寒さに悶える様子が見えてくると思います。
![「Inferno Canto34」(1861~1868年)ギュスターヴ・ドレ](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2016/11/inferno_canto34.gustave_fore01.jpg)
「Inferno Canto34」(1861~1868年)ギュスターヴ・ドレ
そんな最下層”裏切者の地獄”には、
堕天使ルシファー(別名”サタン”)がいます。
このルシファーは元は天使の長だったそうです。
でも神に謀反を企てるという裏切りによってこの地獄に堕ちたとされているわけです。
このダンテの『神曲』で書かれている”罪”を見ていくと、
今の法律や常識とはかなり異なる価値観だったのが分かりますね。
”愛欲”や”貪食”が罪になる事からも
当時の宗教や倫理の違いが見えてくると思いませんか!?
ちなみにダンテの叙事詩『神曲』の作品には、
”聖書”や哲学、倫理学など様々なものからの引用も多く、
現在世界的に評価が高い文学作品とされているのです。
この話を少しでも知っていると、
映画『インフェルノ』の内容もより深く味わえると思います。
映画『インフェルノ(Inferno)』 映画「ダヴィンチ・コード」シリーズの第3作目。 |
ちなみに
「インフェルノ(inferno)」は”地獄”という意味になります。
もちろん映画上でダンテの”地獄篇(インフェルノ)”をモチーフとした
ボッティチェリの「地獄の見取り図」が登場してきます。
気になる方は映画もご覧くださいね!
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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