- 2020-3-12
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ルネサンス期の画家”カルロ・クリヴェッリ”
これまで何度かクリヴェッリの作品は見てきたけれど、
改めて調べて見てみるとその凄さ!に驚かされます。
今回はクリヴェッリの作品を見ながら、
その特徴や魅力に迫っていこうと思います。
カルロ・クリヴェッリの生い立ち
”カルロ・クリヴェッリ”ってどんな画家だったの?
あなたは知っていますか??
時代的には
ルネサンス期に活躍したイタリアの画家です。
”カルロ・クリヴェッリ(Carlo Crivelli)”
1430年頃生~1495年没
カルロ・クリヴェッリは1430年頃にヴェネツィアで生まれる。
実は詳細については不明とされていて、
実際に生まれた年など不明な点も多いのです。ただこれまでの研究結果や専門家の意見などから、
アントニオ・ヴィヴァリーニの工房で修業をし,
そこでゴシック様式の多翼祭壇画制作の技術を学んだとされています。
クリヴェッリの生い立ちについては
はっきりとしていない部分も多いわけですが、
実は1457年の裁判記録からこんな事実があったといいます。
1457年に姦通罪で有罪となった過去があったのです。
これが原因でクリヴェッリはヴェネツィアを去る事になり、
イタリアのマルケ地方に移り、そこで居を構えたと言います。
そしてこのマルケの地でクリヴェッリは
様々な作品、
特に祭壇画を制作していったのです。
実はカルロ・クリヴェッリには兄弟がいて、
これは弟ヴィットーレ・クリヴェッリと共同制作した作品。
その後カルロ・クリヴェッリの祭壇画はマルケ地方に残されたのですが、
19世紀頃になるとその多くが解体されてしまいます。
それぞれのパネルが独立した作品として売却されてしまったのです。
そんなわけで今では
元の姿の祭壇画を見る事は難しくなってしまったのです。
せっかくの1つの祭壇画が、
それぞれ解体されてしまったのは残念ですね。
でもパネル自体でも1つの作品として成しえる事から、
クリヴェッリの技術の高さを感じてしまいますね。
ではそんなクリヴェッリの作品を見ながら、
その特徴なり典型を見ていこうと思います。
・・・
宗教画から見えてくるクリヴェッリの特徴…
カルロ・クリヴェッリは
主に宗教画を多く手掛けていますが、
その中でも代表作とされているのがこの「マグダラのマリア」です。
カルロ・クリヴェッリ「マグダラのマリア」(1480年頃)
※現在アムステルダム国立美術館に所蔵されています。
さてあなたはこの絵を見てどう感じますか??
これはクリヴェッリの持ち味を知るには最適だろうと思います。
カルロ・クリヴェッリの特徴は
金打ちした背景と硬質な描線。
そして装飾的で精密な描写と言われています。
もちろんこの作品にも
そんな典型が見れると思います。☟
まず注目がマグダラのマリアのこの気品と色気溢れる感じ!
もちろん”金”をふんだんに使っているのも理由だろうけど、
この色気は単に金だけでは表現できないと思います。
キリッとした目つきと
まるで誘うかの様な色気ある表情。
そして独特な指のしぐさも一層色気を醸し出しています。
ある意味不自然ともとれる手のしぐさ。
他の画家にはない独特な描写だと思います。
それに細部まで精密に描き込まれているのも凄い!
着ている服の模様が細部まで描かれていて、
これは一見の価値あり!!って感じだと思います。
これは当時クリヴェッリが滞在していた
マルケ地方にあるマルケ州教会の祭壇画として制作されたもの。
祭壇画だからこそ
装飾的に見えるのかもしれませんが、
とにかくクリヴェッリの「マグダラのマリア」は
他の画家と比べてかなり異質なのは分かると思います。
・・・
カルロ・クリヴェッリ作「聖ゲオルギオス」(1472年)
これもクリヴェッリらしい感じです。
くっきりとした線で描かれ細密ともいえる描写。
それに全体的に装飾的だと思いませんか?
そしてお次は…
これはフランクフルトにあるシュテーデル美術館の「受胎告知」。
カメリーノのサン・ドミニコ多翼祭壇画の一部で、
主要部分はミラノのブレラ美術館に所蔵されています。
カルロ・クリヴェッリの「受胎告知」と言えば、
ロンドン・ナショナル・ギャラリーのが特に有名だと思います。
ロンドンのは2020年に日本でも見る事が出来ます。
※ロンドン・ナショナル・ギャラリー展で、
その「聖エミディウスを伴う受胎告知」を見る事ができる予定。
・・・
これは大天使ガブリエル。
こちらは処女マリア(聖母マリア)。
大天使ガブリエルが降りてきて、
処女マリアにキリストの妊娠を告げる場面です。
この「受胎告知」を見て思う事ですが、
レンガの1つ1つの大きさや色合いの違い。
それに台やテーブルの木の年輪までもがキッチリと描かれている!
ここまで細部まで描いているのも凄いですね。
クリヴェッリについての詳細は不明な点が多いのですが、
ここまで細密まで描いていた事をみると、
何となくですがクリヴェッリの性格が見えてくる感じがします。
・・・
中央に居るのが聖母子の姿。
そして左には聖フランチェスコ、
右には矢で射られた姿の聖セバスティアヌスが描かれています。
この絵の人物”聖セバスティアヌス”に注目!
実はセバスティアヌスは黒死病(ペスト)の守護聖人とされています。
弓矢で射られた跡がペストの黒い斑点と似ていた事、
そして矢で射られても死ななかったという伝説から、
ペストの恐怖から救われたいという願いがこの絵には込められているのです。
そんな経緯があって
聖セバスティアヌスは矢で射られている姿で描かれる事が多いのです。
・・・
この絵は一体何を意味しているのだろう?
この絵を見る限り、
すでにイエスの手や足には磔にされただろう傷跡が残っています。
そしてそんな状態でイエスは十字架を抱えているのです。
これは亡くなった後のイエスを
ある種の伝説として描いているのだろうか??
見れば見るほど考えさせられる作品ですね。
これは現在イタリアのミラノにある
”ポルディ・ペッツォーリ美術館”に所蔵されています。
ぜひこの絵の詳しい背景を知って見たい作品ですね!
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カルロ・クリヴェッリ作「ピエタ」(1476年)
これはメトロポリタン美術館に所蔵されている作品。
”ピエタ”と言えばあのミケランジェロの彫刻で有名です。
”ピエタ(Pietà)”…イタリア語では哀れみや慈悲と言う意味。
十字架に磔にされて亡くなったキリストを降ろし、
そして聖母マリアがキリストを抱くシーンを指しています。
カルロ・クリヴェッリ「キリストの体を支える2人の天使」(1472年頃)
もちろんこの2つも装飾性豊かで細密な描写もさることながら、
特に泣いている表情がまた印象的ですね!!
装飾性など派手な部分に目が向きがちですが、
こういった人物の表情もクリヴェッリの巧さだと思うのです。
ぜひ見る機会がある時には、
装飾性や細部まで描かれた精密さ!
また人物の表情にポイントを押さえて観るのもイイと思います。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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