- 2016-1-25
- Artwork (芸術作品)
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”サンドロ・ボッティチェッリ”と言えば、
日本でも何かと見る機会が多い画家の一人です。
特に宗教画や神話の作品を多く描いていて、
中でも「プリマヴェーラ」や「ヴィーナスの誕生」は有名だと思います。
もちろんそれ以外にも多くの名画を残していて、
今回の取り挙げる「アペレスの誹謗」の様に
ユニークで意味深い絵画も描いているのです。
・・・

「アペレスの誹謗」(1494-96年頃)サンドロ・ボッティチェリ
サンドロ・ボッティチェッリの「アペレスの誹謗」(1494-96年頃)
これは以前東京都美術館で開催した「ボッティチェリ展」で観た作品です。
そういえば初めてこの絵画を観た時の印象ですが、
物凄い違和感を持った記憶があります。
というのもとても厳かな神聖なる神殿の中に、
手を挙げている聖人らしき人物が描かれていたり、
それとは対照的に黒装束の怪しい人物が描かれている。
背景と描かれている人物の違和感が物凄いのです!
実はこの「アペレスの誹謗」は
それぞれある意味を擬人化していると言います。
つまり”寓意的”に描かれた絵画なのです。
※”寓意”…ある意味を直接には表さず、別の物事に託して表すこと。
この「アペレスの誹謗」を愉しむためには、
まずその人物に込められた意味を探っていくのが近道になると思います。
1、「アペレスの誹謗」のアペレスとは?
まずこの「アペレスの誹謗」のアペレスについて話したいと思います。
このアペレスは古代ギリシアで最も有名な画家だったそうです。
でも現在アペレスの作品は現存していないと言われ、
当時書かれた書物でしか知る事が出来ないそうです。
そんなアペレスが描いたとされる作品を、
復元しようと試みたのがこの「アペレスの誹謗」なのです。
ここで??と思いませんか?
アペレスの作品が現存していないのに、
そのアペレスが描いたとされる「誹謗」を復元した。
一体何を基に描いたのだろう??と思いませんか?
実はアペレスの「誹謗」がどういう作品だったかが、
ギリシアの作家ルキアノスの記述に残されていたのです。
(一体どこまで詳細に記していたかは分かりませんが…)
そしてルネサンス期でこのルキアノスの記述が翻訳され、
レオン・バッティスタ・アルベルティの「絵画論」で、
学ぶべき歴史画としてこの「アペレスの誹謗」が取り挙げられた。
そんな経緯があって、
当時の画家たちがアペレスの誹謗を再現しようと挑戦するに至ったというわけです。
ボッティチェッリが生きていたルネサンス期では、
古代芸術家の偉業を再現する事が頻繁に行われていたそうです。
もちろん「アペレスの誹謗」を復元しようとした画家は、
このボッティチェッリ以外にも他にもいたわけです。
2、「アペレスの誹謗」の人物が意味しているものとは?
実はこの「アペレスの誹謗」は逸話的な要素を含んでいるといいます。
さて部分的に人物を挙げていきながら、
その逸話や意味を見ていこうと思います。
まずは…

「アペレスの誹謗(detail)」(1494-96年頃)サンドロ・ボッティチェリ
この手を合わせている若者から見ていこうと思います。
上半身裸の若者が女性によって髪を引っ張られ、
王の前に引きずり出されている場面が描いていると思います。
まずこの引きずり出されている若者が意味しているのは”無実”。
そして”無実”の若者を引きづっている
松明を持っている女性は”誹謗”を表しているそうです。
その”誹謗”の女性の髪の毛を整えている2人の女性が
それぞれ”欺瞞”と”嫉妬”を表しています。
※欺瞞(ぎまん)…あざむく事、だます事。
そんな”誹謗”の女性の腕を掴み
王座に手を伸ばしているフードをかぶった男性
これは”憎悪”を表しているそうです。
描かれている人物それぞれに
こんな意味が擬人化されているわけです。
ここまでで私なりの解釈ですが、
人をだまそうとする心と嫉妬によって、
無実の人間を悪く罵り陥れようとしている。
その根底には人を憎む気持ちがあるって事なのだろうか??
とにかく考えれば考えるほど、
人間の悪い部分が浮き彫りになってきそうで、
ちょっと怖くなってくるのです。
…

「アペレスの誹謗(detail)」(1494-96年頃)サンドロ・ボッティチェリ
それから王座に座っている男性らしき人物が見えると思います。
これは”不正”を意味しているといいます。
その両肩でささやく2人の女性は、
それぞれ”無知”と”猜疑”を表しているそうです。
何も知らない人間や疑いの目でしか見れない人間によって、
この純情な王は騙され
無実の人間を裁こうと不正に走ろうとしている。
そんな意味でもあるのでしょうか??
・・・

「アペレスの誹謗(detail)」(1494-96年頃)サンドロ・ボッティチェリ
そして後ろにいる黒装束の人物は”後悔”を表し、
横にいる右手を挙げている人物は”真実”を表していると言います。
描かれている人物一人一人に意味があるわけです。
そしてこの絵が言いたいのは、
”嫉妬からか無実の罪で捕らえられた男の悲惨な姿”
それを擬人化して伝えているそうです。
これは知らないで見ると、
単なる上手い絵だな~しか思わないかもしれないけれど、
描かれた内容まで見てみると実は深い作品だったりします。
ちょっと難しい言葉で言うと、
”寓意(ぐうい)”という言葉が当てはまると思います。
※寓意(ぐうい)…直接には表さず、他の物事に託して表す事。
実はボッティチェリの絵画は、
どれもが何かしら意味が込められている場合が多い様に思います。
それだけにボッティチェリの作品は、
見れば見るほど深く、魅力溢れるのかもしれませんね!
そういえば…
この本を見て知った事ですが、
ボッティチェリは性格的にいたずら好きで、
ユーモアあふれる人物だったと言われています。
画家の性格や作品の背景を知っていくと、
1枚が絵画がより奥深いものになる!!
まさにこの「アペレスの誹謗」は
ボッティチェリだからこその名画だと思いますね。
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