- 2022-2-17
- Artwork (芸術作品)
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オランダ南西部にある都市”デルフト(Delft)”。
ここはフェルメールの名画「デルフトの眺望」で有名な街ですが、歴史的な大火”火薬庫爆発”があった事でも知られています。現在にも語り継がれるというだけあって、爆発の被害は相当なものだったそうです。
このデルフトの火薬庫爆発が起こったのは1654年10月12日の事。40トンを超える火薬が爆発し、デルフト市街の大半が破壊されました。死者は1,200、負傷者は1,000人を超えるほどだったそうです。
数字だけ見てもかなりの被害だったのが分かりますよね。できるならビジュアルで確認したいものですが、当時の様子を映した写真はない様です。被害状況を知る手掛かり…、あるとしたら画家の描いた絵画くらいでしょうか?
・37×62cm、板に油彩、アムステルダム美術館所蔵
この絵を描いたのは”エフベルト・ファン・デル・プール(Egbert van der Poel)”。
※1621年生~1664年没、オランダの黄金時代に活躍した風景画家
あまり聞きなれない名だと思いますが、実はこの画家は大火の風景画を何枚も描いているのです。1~2枚ならいざ知らず、何枚も描いている事からデルフトの大火と何らかの関係があるのは分かると思います。
街全体を覆いつくしている火。そして逃げ惑う人々の様子。まるでその場に居合わせたかの様な臨場感!特に炎の描写が物凄くリアルで生々しいと思いませんか??見ていてちょっと恐ろしく感じてくるくらいです。正直言ってず~と見ていられないほどです。
実は1654年のデルフトの爆発は、画家ファン・デル・プールにとって単なる出来事じゃなかった。とてつもなく辛い悲劇だったのです。
というのも画家仲間だったカレル・ファブリティウスがこの爆発で亡くなってしまった。そして妹までも巻き込まれてしまったそうです。これ以降ファン・デル・プールは名前と日付を書き入れて爆発風景を描く様になったそうです。
・26×35cm、板に油彩、エルミタージュ美術館所蔵
単に出来事を描いた風景画でないのが分かりますよね。デルフトの爆発による悲劇を後世に残したかった。画家の強い想いが絵に込められている様に思えるのです。
実は先日東京都美術館の「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」に行き、「夜の村の大火」を目にしたのですが…この時感じたのは、炎の描写が異様なくらいに生々しくて迫力があった事!私の解釈になりますが、ファン・デル・プールは炎に対して執着というか憎しみというか…。そんな感情が込められている様に思えたのです。
・36,2×49,5cm、板に油彩、ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵
ファン・デル・プールはデルフトの大火以降、火事を題材にした作品を多数描いています。もちろんあまり評価されなかったそうですが、そんなものは関係なかったのかもしれませんね。
画家は絵を描く事しかできないけれど、でも描いた絵によって歴史を後世に伝える事が出来る。ある意味”歴史の伝道師”的役割も担っていたのかな?と思うのです。よく絵画には何かしらの意味やメッセージが込められているとは言うけれど、特にファン・デル・プールの作品に関して言えばメッセージ性は強い様に思えて仕方がないのです。人それぞれ解釈の違いはあるだろうけど、ぜひ彼のメッセージ性や想いを感じ取ってほしいですね。
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コメント
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地元に来たので行ってきました「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」。
本邦の絵仏師良秀、芥川の地獄変を思い出す絵でした