- 2021-12-19
- Artwork (芸術作品), Enjoy This (観てほしい絵画展)
- コメント:4件
フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」。あなたは修復された姿を目にしましたか!?
現在ドレスデン国立古典絵画館に所蔵されているヨハネス・フェルメールの名画「窓辺で手紙を読む女」。以前からX線調査で”画中画”が隠されているのは分かっていたけれど、最近の修復でついに隠されていた画中画が姿を現したのです!
・83×64.5cm、カンヴァスに油彩、ドレスデン国立個展絵画観所蔵
これは修復される前の「窓辺で手紙を読む女」。今回姿を現した”画中画”は、女性の背後の壁に描かれていたものでした。ちなみに、”画中画”とは絵画の中に描かれた絵画という意味。フェルメールは作品の中に絵画を描く事がよくありました。現在フェルメールの作品は37点程と言われていますが、その内の半分に画中画が描かれています。画中画が描かれた絵画はフェルメールの特徴と言っても過言ではないのです。
さて、この修復後の状態が2022年の「ドレスデン国立個展絵画展」で観れます!東京、北海道、大阪の順で開催するので、機会のある人は行ってみる事をおススメします。
【ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展】 ・(北海道開催)2022年4月22日(金)~6月26日(日)、北海道立近代美術館にて |
※修復前の状態と修復後を見比べるて鑑賞できるので、違いを味わうのも愉しいですよ!^^
フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」、修復までの生い立ち
1657年~59年頃に描いたフェルメールの作品「窓辺で手紙を読む女」。それから350年以上の時を経て、やっと当時の姿に近づいてきたわけです。2017年から始まった作品の修復作業と科学的分析。もちろんその過程は順調ではなかったそうです。しかも隠されていた画中画が露わになるにしたがって、深まっていく謎!フェルメールの作品は、なぜこうも謎と隣り合わせなのだろう!?
・83×64.5cm、カンヴァスに油彩、ドレスデン国立個展絵画観所蔵
これは私たちがよく知る姿の「窓辺で手紙を読む女」。窓のそばに立って手紙を読んでいる金髪の女性と、窓ガラスに映し出されている女性の姿。そして手前右に大きく描かれているカーテンは、特に目を惹きます。
ちなみに、手前に大きくカーテンを描くという構図は、フェルメールの作品でよく見かけます。この大胆な構図によって絵に奥行きや遠近感を表現しているそうです。
さて、現在「窓辺で手紙を読む女」はフェルメールの作品と言われているけれど、でも当初はフェルメールが描いたものではないと言われていたのは知っていましたか??
・・・
1742年…
ザクセン選帝侯が「窓辺で手紙を読む女」を購入します。もちろんこの時すでに、画中画は消されていた状態でした。実は購入時フェルメールではなく、レンブラントの作品として購入していたと言います。
そして1860年になって、正式にフェルメールの作品と鑑定されました。
1979年…
サンフランシスコへの貸し出しの際のX線調査によって「窓辺で手紙を読む女」の壁面に、キューピッドが描かれていた事が判明!
※この時点では、フェルメール自身によって塗り消したと考えられていました。
2017年…
「窓辺で手紙を読む女」の修復作業が開始します。まずは作品を覆っていたニスを取り除く作業から始まりますが、ここで大きな発見が!!キューピッドの画中画の部分のニスの上に、汚れの層があった事が分かったのです。これによって画中画が描かれてから、長年経過してキューピッドが塗り消された事が分かったのです。
つまり…
・83×64.5cm、カンヴァスに油彩、ドレスデン国立個展絵画観所蔵
修復によって姿を現した弓を持ったキューピッドの画中画。これまで画中画を塗り消したのは、フェルメール自身によるものと考えられていましたが、実はそうではなかったのです。
2019年…
画中画”キューピッド”を塗り消したのは、フェルメール以外の人物によるものと判明!
一体誰が”キューピッド”を塗りつぶしたのか??
果たして、何の目的で”キューピッド”を消したのだろう??
修復作業によって明かされる事実と、深まる謎!これぞ”フェルメール作品のアートミステリー”!
2021年…
8月に修復が終了。そして一般公開が決定します!修復作業によって本来描かれていた”キューピッド”がついに姿を現すことになったのです。
さて、ここで重要なポイントが!このキューピッドの画中画によって、女性が読んでいる手紙が”恋文(ラブレター)”だとはっきりとしたわけです。キューピッドは”恋の神”とも呼ばれています。今回の修復によって、手紙の真相がはっきりとしたのも、大発見だったわけです。
【ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展】 (東京開催) (北海道開催)たくさん (大阪開催) |
今回の「ドレスデン国立古典絵画展」では、修復前と修復後の状態を見比べる形の展示があります。また修復作業の映像が公開されたりと見所もいっぱい!そして一体誰が”キューピッド”を塗りつぶしたのか??もしかしたら、この謎が解明されているかもしれませんね!?そう考えたら楽しみで仕方がないわけです。
とにかく絵画は実際に本物を間近で観るに限ります!!ぜひ行ってみては!?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
コメント
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塗りつぶされた時代はフェルメールの死後なのでしょうか?フェルメール本人が後に修正したとか?
コメントありがとうございます。現在のところフェルメールの死後の可能性が高い様ですよ。というのもキューピッドの絵には長年空気に接していた跡が残っていたそうで、この事からもフェルメールの死からかなり経っているとの事。その詳細が展覧会で公開される予定だったそうですが、延期になっているのが残念ですね。
あの空白部分がなんとも言えない静寂感を産んでいたので、正直今回の修復は残念です。
コメントありがとうございます。絵画史においては大発見なんだろうけど、あの空白の空間は修復しないで、残しておいて欲しかったですね。同じく残念な気持ちです。