- 2021-9-12
- Enjoy This (観てほしい絵画展)
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ファン・ゴッホというと
どうしても色彩豊かな油絵ばかりが注目されがち!
でも白と黒を主とした素描もかなりの出来栄えだと言われています。
ゴッホが素描を頻繁に描いていた時期は、
本格的に画家を目指すようになってからの事。
もちろん絵の勉強や練習のために始めた事ですが、
この頃に描いた作品も
ゴッホを語る上では忘れてはならないと思うのです。
ハーグ時代に描いたゴッホの作品
ゴッホが画家として歩み始めた初期の頃については
不思議なほどあまり触れられる事ってありません。
ほとんどは色彩が際立った作品ばかりが注目されがちで、
例えば「ひまわり」や「糸杉」などなど…。
でもこういった名画を生み出すに至った経緯には、
初期の頃に描いていた素描の存在が大きいと思うのです。
ゴッホが本格的に画家としての道を歩み始めたのが1880年。
その翌年の1881年の12月にハーグという都市に移り住みます。
ゴッホはこの時期に多くの素描を描いていました。
・56×45cm、クレラー・ミュラー美術館所蔵
そしてゴッホはこのハーグという地で
ハーグ派を代表するアントン・モーヴに指導を受けました。
ハーグ派については以前触れた事がありますが、
オランダのハーグで活動した画家たちの総称をいいます。
そのものの雰囲気を伝える事を目指し、
傾向としては明暗といったトーンで描いていました。
そのため白黒を中心とした薄暗い感じの作品が特徴的でした。
ゴッホはこのアントン・モーヴから
様々な絵画の指導を受けたと言われています。
デッサンの重要さから絵具の使い方、
そして生活の援助まで受けていたそうです。
・28.5×47cm、デッサン、クレラー・ミュラー美術館所蔵
この上の作品を見てどう感じますか?
私的には地味というか質素な感じを受けます。
でもこういった雰囲気は
当時の質素な農村の生活を描くには非常に合っている様に思います。
その当時の生活ぶりが生々しく見えてくる様ですよね。
・60×50cm、デッサン、個人所蔵
元々ゴッホは美化されたものを描く事より、
農村の人たちの貧しい生活ぶりや生き様を描きたかったそうです。
おそらくこれはバルビゾン派のミレーの影響もあったのだろうと思います。
それは描いた作品からも分かる事で、
ゴッホの描く農民の素描は確かに貧しさや生活の苦しさを感じます。
でもどことなく農民たちへの敬意というか、
ある意味神聖さの様な感じを受けるんですよね。
ミレーの作品はリアルな農民の生活ぶりが描かれているけれど、
でも内面的には宗教画の様な崇高的で神聖さが感じてならない。
ゴッホはミレーの作品を何度も模写していたのは有名な話ですが、
おそらくミレー作品の内面的なものにも影響を受けていたのかもしれませんね。
現在分かる限りでは、
ゴッホは素描を少なくとも1,000点は描いていたと言われています。
将来的にゴッホの作品が評価されるに至る理由には、
こういった初期の頃の下積みがあったからだと思います。
・51.5×70.7cm、鉛筆、黒チョーク、水彩、クレラー・ミュラー美術館所蔵
現在ゴッホの作品言えば「ひまわり」などが代表作として挙げられますが、
でもこういった素描もゴッホの作品として注目を浴びてほしいですね。
ゴッホを象徴する厚塗りやうごめく様なうねり!
確かにこれも魅力的ではあるけれど、
ゴッホの描く素描もまた油絵にはない魅力があると思います。
そういえば以前ゴッホの素描が
日本円にして11億円で落札された事がありました。
ゴッホの素描の良さを分かる人は分かっているって事でしょうね!
ぜひゴッホの素描を見れる機会があったら、
油絵以上に味わってほしいと思います。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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