- 2021-3-15
- Impression (絵画展の感想)
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‐ STEPS AHEAD:Recent Acquisitions ‐
先日”アーティゾン美術館”の新収蔵作品展を観てきました。
このアーティゾン美術館は
これまで印象派絵画や近代芸術を中心に蒐集していたそうですが、
今回は新たにコレクションの幅を広げて展示。
美術館としてさらなる”STEPS AHEAD!!”
つまり”前進”という意味になるんでしょうけど、
これまで未公開だった作品92点を中心に約200点が展示されたわけでした。
【STEPS AHEAD: Recent Acquisitions】 ・開催期間2021年2月13日(土)~9月5日(日) |
今回はいくつか作品を取り上げながら、
レビューしていきたいと思います。
・・・
ギュスターヴ・カイユボット「ピアノを弾く若い男」(1876年)
タイトルの通りピアノを弾く男性を描いた作品です。
今展の最初の方に登場してきた作品で、
これは今回の新収蔵作品ではないけれど、
初っ端から”オオッ!!”と言いたくなる様な作品だったので挙げてみました。
あなたはこの絵を観てどう思いますか!?
特に必見はピアノの質感とリアリティの凄さ!!
男性の弾いている手や室内の装飾が
ピアノの表面に映って見えているのが分かると思います。
ピアノの表面の艶や光沢感がリアルに表現されているんですよね。
素人の私が見ても明らかに写実主義の傾向が強いと思うのですが、
でもなぜかこの作品は「第2回印象派展」に出品されたとの事。
”??”と首を傾げたくもなるのですが…
実際この作品は”写実的過ぎる”と批判を受けたそうです。
このカイユボットは写実から次第に印象派へと向かっていった画家ですが、
おそらくこの時期は印象派へと移行していく時期になるんでしょうね。
松本竣介「運河風景」(1943年)
この絵は新橋近くにあるごみ処理場と汐留川にかかる蓬莱橋の風景を描いたそうです。
描かれた時期は1943年
ちょうど第2次世界大戦の末頃に当たります。
薄暗く、よどんだ空気感がある雰囲気ですが、
おそらく戦争による時代を描いているからなんでしょうね。
当時の重苦しい感じがこの絵から伝わってきますね。
今回のアーティゾンでは西洋画だけでなく、
日本の洋画家の作品も多数展示しているのが特徴的。
もちろん青木繁の「海の幸」(1904)
そしてこの美術館を代表する藤島武二の「黒扇」(1908‐09年)も観れました。
古賀春江は1895年~1933年の大正から昭和にかけて活躍した画家。
シュルレアリスムを代表する日本の画家とされていますが…
これも古賀春江が描いた作品ですが、
同じ画家が描いたとは思えない画風の変化ですよね。
実はこの古賀春江氏は度々作風が変化した事で知られている画家です。
今回で言うなら「無題」はキュビスム風な作品
対して「素朴な月夜」はシュルレアリスムを彷彿される絵です。
この古賀春江は38歳という短命だったにも関わらず、
画風は次々と変化していったわけですが、
実にその変化の速さには驚かされますね!
もしもっと長生きしていたら
果たしてどんな他の作風の作品を残していたのか!?
ここで前半部分で惹かれた作品を挙げてみたいと思います。
≪ 私の心惹かれた作品 ≫ ・「新聞と開かれた本」(1913年-14年)フアン・グリ ・「円卓の上の静物」(1916年)ジャン・メッツァンジェ ・「金管奏者(路上演奏者)」(1916年頃)ジーノ・セヴェリーニ ・「3本の菩提樹」(1908年)ヴァシリー・カンディンスキー でもカンディンスキーらしい独特な色彩感覚は健在!! |
そして後半に差し掛かってくると
より作品の抽象感が増してきます。
・・・
これは今回のSTEPS AHEAD展の看板ですが、
これはエレイン・デ・クーニングの「無題(闘牛)」(1959年)を元にしている様です。
タイトルの”STEPS AHEAD(前進)”と
前に勢いよく走る”闘牛”のイメージが一致したためなんだろうけど、
背景の大胆で飛び抜けた感はとてもピッタシだと思います。
実は最初この作品を観た時は”何だろう??”と思ってしまったのですが、
闘牛というタイトルを見た瞬間
この絵のパワフルさと勢いで何となく納得してしまったわけです。
これはぜひ間近で観て感じてほしいと思いますね。
抽象絵画はどうやって鑑賞するの!?
抽象絵画はちょっと取っつき難いイメージがあるものですが、
実は意外と愉しく面白いものなのです。
実は最初の頃私もそうなのですが、
抽象絵画を見ていてちょっと理解に苦しんだものです。
でもふとした時”抽象絵画は感じるものなんだ!!”と思った事があります。
実際作品を観て”これイイな~”みたいに感じるだけでも充分!!
これも抽象絵画のちゃんとした愉しみ方なのだろうと思いますね!!
気楽にブラ~と散歩する気分で作品を鑑賞してみては?
さてここで後半に展示していた作品から
私の印象に残っている作品を挙げてみたいと思います。
≪ 私の心惹かれた作品 ≫ ・「水に沈んだ都市」(1954年)ザオ・ウーキー ・「集中する力」(1958年)堂本尚郎 ・「赤い鬼」(1954年)菅井汲(すがい くみ) |
それからオーストラリアの美術も数点展示していて、
”アボリジナルアート”と称した先住民アボリジニのアートや文化が取り上げられているのもオモシロイですね。
昔オーストラリアには数年滞在していた事もあって、
見ると”確かにそうだな~”と思える作品ばかり!!
ふと懐かしさも込み上げてしまったわけです。
特に1900年以降の現代芸術になってくると
さすがにここで挙げる事が出来ないのが残念ですが、
それは実際に「アーティゾン美術館」に行って見てきてほしいですね。
”芸術は生で観るに限る!!”と思います。
ぜひあなたも行ってみては!?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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