カルロ・クリヴェッリの「聖エミディウスを伴う受胎告知」

聖書(Bible)

 

カルロ・クリヴェッリの代表作「聖エミディウスを伴う受胎告知

正確な遠近法と細密な描写と装飾的この作品は、
まさしくカルロ・クリヴェッリにしか描けない代物だと思います。

 

これは国立西洋美術館で開催の
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で展示予定の作品でしたが、
現在開催延期のため観る事が出来なくなっています。

・・・

「聖エミディウスを伴う受胎告知」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

「聖エミディウスを伴う受胎告知」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

カルロ・クリヴェッリ聖エミディウスを伴う受胎告知(1486年)
・207×146.7cm、ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵

1482年3月25日イタリアの都市アスコリ・ピチェーノが、
当時のローマ教皇シクストゥス4世よって自治権を認められた事を記念して、
サンティッシマ アンヌンツィアータ教会の祭壇画として制作された作品。

実はこの3月25日は受胎告知の日だった頃もあり、
この偶然の一致もあって”受胎告知”をテーマとして制作されたと言われています。
(カトリック教会などでは3月25日を受胎告知の日としています。)

※”受胎告知(The Annunciation)”とは
…マリアが大天使ガブリエルによってキリストを妊娠した事を告げられた出来事。

 

この作品で特に特徴的なのが
天使ガブリエルの横に”聖エミディウス”が描かれている事!

聖エミディウス(Saint Emygdius)”について

…273年~309年に生きたとされる司教で、
地震や疫病などから都市を守ってきたとされ
都市アスコリ・ピチェーノの守護聖人として崇拝されています。

※今回の作品「聖エミディウスを伴う受胎告知」で言えば、
都市アスコリ・ピチェーノの模型を持っている事からも分かります。

 

この「聖エミディウスを伴う受胎告知」は、
自治権を与えられた事による記念と
受胎告知の日の2つの意味が込められているのです。

 

 

「聖エミディウスを伴う受胎告知」をより細部まで…

聖書(Bible)

「聖エミディウスを伴う受胎告知」には、
カルロ・クリヴェッリの”らしさ”や
凄さやふんだんに盛り込まれていると言います。

 

「聖エミディウスを伴う受胎告知(detail)」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

「聖エミディウスを伴う受胎告知(detail)」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

まずは画面を覆いつくすように描かれた精密描写を見てほしい!

絨毯の模様が細部まで描かれていて、
まさにクリヴェッリらしい描写だと思います。

それに建物の建築美や模様が細かく再現されていて、
この画面を埋め尽くす装飾さもクリヴェッリらしさだと思います。

 

考え…・思い…
果たしてこの絵に空白はあるのだろうか??

そう思うほど画面すべてを
何かしらの模様や装飾で埋め尽くしているのです。

ここまで細部までモチーフや模様を描き込むと、
作品全体の調和というかバランスが保てないとも言うけれど、
この作品に関して言えば妙にしっくりとくるのが不思議ですね。

それは装飾的だからだと思うのですが、
これこそクリヴェッリの画力の凄さなのかもしれませんね。

 

「聖エミディウスを伴う受胎告知(detail)」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

「聖エミディウスを伴う受胎告知(detail)」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

そして画面手前に描かれた妙に存在感のある胡瓜(きゅうり)とリンゴ

 

ポイント!
この果物の描き方に注目!!

ここで描かれているリンゴと胡瓜が
画面から飛び出している様に描かれている事に注目!!

この様に果物が画面から飛び出すように描くのは、
クリヴェッリの作品にはよくある事です。

果物以外にも花や人物の手足が
目の前に突き出る様に描くことが度々あります。

クリヴェッリは遠近法にこだわって画家とも言われていて、
こうやって果物や物を飛び出す様に描くのは、
奥行き感遠近感を出すためだったのかもしれませんね。

 

ちなみにリンゴは原罪を象徴しているとされ、
(原罪=人間が犯す罪、堕落を象徴)

胡瓜(キュウリ)はキリストの復活と救済を象徴しているとされています。

 

ちろんこの絵に込められている
宗教的テーマ”受胎告知”も忘れてはいけません!

「聖エミディウスを伴う受胎告知(detail)」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

「聖エミディウスを伴う受胎告知(detail)」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

この作品で描かれている天から差し込んでいる光は、
マリアが精霊によってキリストを妊娠した事を表していると言います。

そしてマリアはその光をしっかりと受け止めている。
つまりイエスを妊娠した事をマリアは受け入れているわけです。

たしかにこの絵は装飾性や細密さに目が向きがちですが、
しっかりとした宗教的テーマが込められているのです。

 

ここでCheck!
この「受胎告知」は当時としては異例な作品!?

通常”受胎告知”を描く場合は
マリアと大天使ガブリエルの2人を描く場合は多いといいます。
でもこのクリヴェッリの作品に関して言えば
様々な人物があちらこちらに描かれているわけです。

 

「聖エミディウスを伴う受胎告知」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

「聖エミディウスを伴う受胎告知」(1486年)カルロ・クリヴェッリ

左の階段に立っている数人の人々。
アーチ状の橋の下を歩いている人や、
その橋の上で手紙の様な読み物を見ている人など…。

画面のあちこちに描かれた様々な人物と、
隙間なく描き込まれた模様やモチーフの数々。

この「受胎告知」は単なる宗教画に収まっていないわけです。
これがクリヴェッリの作品の個性であり凄さなんだと思います。

 

まさにカルロ・クリヴェッリの代表作と言っても過言ではないのです。

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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