- 2024-8-25
- Enjoy This (観てほしい絵画展)
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夏場の美術館は、「創世記」の”エデンの園(楽園)”そのもの!
灼熱と化した炎天下と比べたら、約20度に設定された館内はまさに楽園です。それに美術館ですから周りはアートで溢れているし、これほど居心地の良い場所って他にあるだろうか!?
…
否、ないですよね!^^
今回は”楽園”つながりで、”エデンの園”の世界を絵画作品を観ながら解説していこうと思います。
【 目次 】 ・”エデンの園”ってどういった場所なの!? |
”エデンの園”ってどういった場所なの!?
まず作品を見ていく前に、”エデンの園(Garden of Eden)”について話す必要がありそうですね。
先ほどちょっと触れましたが、エデンの園は『旧約聖書』の「創世記」に登場する理想郷をいいます。他には、楽園やユートピアと呼ばれたりもします。
人類の祖先と言われるアダムとイヴが暮らしていた場所で、禁断の果実を食べて楽園を追い出されたという話はよく知られています。
でも、どういった場所だったのか!?
具体的な世界観まで知っている人は、あまりいないのではないでしょうか。
ここからは、『旧約聖書』の内容も交えながら見ていこうと思います。
「創世記」でエデンの園が書かれている描写は、第2章の8節辺りから。
神は楽園(エデン)を造り、そして人を置いた。そして神は人に”生えている木から、あらゆるものを食べても良い。”と言うが、”善悪の知る木の実だけは食べてはいけない。もし食べると、死ぬであろう。”と命じました。
それから動物も造り、人が一人ではよろしくないと、女も創ったとされています。現在の人間世界の基本的な部分が出来上がっていったというわけです。
・77.5×107.5cm、パネルに油彩、グルーニング美術館所蔵(ベルギー)
僕らのイメージでは、”理想郷(もしくは楽園)”は、のんびり贅沢三昧な世界を想像する人が多いと思います。でも「創世記」の内容を見る限り、実際はそうではない様です。
私の解釈になりますが、”規則正しい世界”といった感じでしょうか。
例えば、「創世記」の第2章の15節では、”アダムに園を耕させ守らせた”と。
つまり人に仕事を与えたのが書かれています。
また「あらゆる植物は食べても良いけれど、中央に生えている木の実だけは食べてはいけない!」と。
これが俗に言う”禁断の果実”というものですが、ルールを守る事の重要さが書かれています。
・81×114cm、板に油彩、ウィーン美術史美術館所蔵
つまり人間としてやるべき行いとルールを守る事が前提で、理想郷”エデンの園”が成り立っていると。
人によって解釈は異なるかもしれませんが、少なからず私はこう解釈しています。
元々『聖書』は人間の生きる指針、つまりバイブルでもあった。
そう考えると「創世記」に書かれているエデンの園は、まさに人間の理想的な生き方を示していると思うわけです。
ところで、”エデンの園”は実在する!?
ここまでの話を聞く限り、エデンの園は神話上の架空の場所だろうと思うでしょう。
でも専門家の間では、伝説ではなく実在していたとの説もあります。
「創世記」の第2章10節からの文章に、ヒントとなるワードが登場してくるからです。
エデンから流れ出た一つの川が園を潤し、そこから4つの川に分かれた。
一つ目はピション川で2つ目はギホン川、3つ目はヒデケル川、そして4つ目はユフラテ川であった。
多くの専門家はヒデケル川をチグリス川に、4つ目のユフラテ川をユーフラテス川と関連付けているそうです。
専門家によっていくつかの説はありますが、現在のチグリス・ユーフラテス川周辺に”エデンの園”があったのでは?との説が強い様ですね。
絵画で理想郷”エデンの園”を観てみよう!
「創世記」のアダムとイヴは、絵画でもよく描かれる場面です。
これまで様々な画家によって、多くの作品が残されています。
今回はその中の本の一部ですが、紹介していこうと思います。
・78×135cm、板に油彩、ベルリン国立美術館所蔵
ルーラント・サーフェリー(Roelant Savery)は、鳥獣など動物の絵を得意としたオランダの画家。
1578年頃生~1639年没で、時代的には巨匠ルーベンスとほぼ同時期の画家です。
・24×37cm、銅板に油彩、個人蔵
”エデンの園”が描かれる場合は、人間の堕落がセットで描かれる場合が多い。
私がエデンの園を、単なる”人間にとっての理想的な楽園”ではなく、”規則正しい世界”と解釈する理由はここにあります。エデンの園はルールの上で成り立っている世界だからです。
・74×115cm、パネルに油彩、マウリッツハイス美術館所蔵
おそらく人間の堕落とエデンの園を描いた作品で、最も有名な作品と言ったら、ブリューゲルとルーベンスの合作になるのではないだろうか!?
花や動物、風景画を得意とした”ブリューゲル”と、人物を描かせたら天下一の画家”ルーベンス”ですから、これほど最高の組み合わせは他にはいないと思います。
ちなみに『西洋美術解読事典』では、ちょっと気になる一文があったので紹介します。
アダムとエヴァ
〔1〕エデンの園:動物の名付け
北方絵画に描かれた楽園は、植物が青々と繁り、遠方まで見晴らしがきき、森の中には空地があるのに対し、南欧の作品ではこれを砂漠の中のオアシスのように表わす傾向があった。
・『絵画・彫刻における主題と象徴 西洋美術解読事典』より一部抜粋
地域によってもエデンの園の世界観が違うのも興味深い点です。
神話画は画家の解釈によって描かれ方も様々ですが、時代や地域によっても違ってきます。これも神話画のオモシロさであり醍醐味だと思っています。
この違いを知るだけでも、作品鑑賞の面白さの幅も広がると思っています。
「創世記」やアダムとイヴに関する作品は、『聖書』においても非常に重要な題材です。美術館でも目玉作品に挙げられる場合が多いので、もし日本で目にする機会があったら、絶対に逃してほしくないですね。
その日のために、今回の話を参考にしてもらえたら幸いです。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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