キュビスムと抽象絵画の架け橋的な画家”ロベール・ドローネー”を解説!

画家”ドローネー・ロベール”について解説!

 

キュビスムの様で、でも抽象画にも見える。

フランスの画家ロベール・ドローネーを、一言で説明するほど難しいものはないですね。

 

何せ、様々な画風が入り混じっている様に見えるからです。

でもこれがロベール・ドローネーの魅力でもあるし、私が好きな理由でもあるわけですが。

ちなみに私の解釈では、”キュビスムと抽象絵画の架け橋的な画家”という位置づけです。なぜそう思うのか??今回はR・ドローネーの生い立ちと作品を見ながら、解説していこうと思います。

 

目次

はじめに、私が思うR・ドローネーの解釈について
ロベール・ドローネーの画風・特徴
ロベール・ドローネーの生い立ち、代表作を見てみよう!
余談、私がドローネーとは呼ばない理由

※参考:R・ドローネーの描く『パリ市』『 エッフェル塔』が純粋にイイ!と思える。

 

 

 

 

はじめに、私が思うロベール・ドローネーの解釈について

アートを愉しむ!

ところで、ロベール・ドローネー(Robert Delaunay)という画家を知っていますか?

私の解釈としては、キュビスムと抽象芸術の架け橋的な画家という認識。よく知られる抽象絵画の先駆者ピート・モンドリアンと同じくらい重要な画家だと思っています。

 

国立西洋美術館で開催した「パリ ポンピドゥーセンター所蔵  キュビスム展 美の革命」
先日『キュビスム展』で、彼の代表作「パリ市」が展示されましたが、あなたはもう観ましたか??

まだ見ていない人は、東京は国立西洋美術館で2024年の1月28日まで。その後は京都でも開催するので、ぜひ行ってみるのもイイと思います。

 

て、さすがに展覧会名が”キュビスム展”となっていると、如何せんキュビスムの画家と思う人も多いでしょう。確かに間違いではないと思いますが…、でも好きな画家ですからコレではちょっと悔しい。

それにR・ドローネーを深掘りしていくと、結構興味深い点も多い画家なので、ぜひ知ってほしいと思ったわけです。

 

 

 

ロベール・ドローネーの画風・特徴

解説

プリズムの様な…、万華鏡の様な…、まさに色彩の協奏曲という表現が似合う画家だと思います。

美術用語で言えば、一般的にR・ドローネーの画風オルフィスムと呼ばれています。

ギリシア神話に登場する竪琴の名手”オルフェウス”が名称の由来で、ロベール・ドローネーの明るく華やかな色彩を、音楽的なリズムや流れに例えているわけです。

”オルフィスム”と名付けるなんて、何とも洒落ていると思いませんか??こういったセンスはフランス的かな?と思いますね。
※名付けの親は、フランスの詩人で美術評論家”ギョーム・アポリネール(Guillaume Apollinaire)

 

 

て、あまり説明チックになるのもなんですから、作品を見てみようと思います。

 

「パリ市(The City of Paris)」(1911年)ロベール・ドローネー

「パリ市(The City of Paris)」(1911年)ロベール・ドローネー

・119.5×172.2cm、カンヴァスに油彩、トレド美術館所蔵

私のイメージでは、まるで七色の虹の様な色遣い!

1910年頃のピカソやジョルジュ・ブラックのキュビスムは、モノクロ重視の作品が多かった。画風は確かに似ているけれど、でも色彩の点で一線を画しているのが分かると思います。

逆にここまで色彩的に華やかだと、キュビスムとは違うものに感じてしまいます。

 

 

様々な画風を感じる多様性!

私の解釈になりますが、どことなくカンディンスキーの雰囲気もあるし、ピート・モンドリアン的な画風も感じられる。もっと言ってしまえば、ジョルジュ・スーラの新印象派らしさも感じられる。つまり様々な画風が入り混じった画風に見えてくるわけです。

私が思うロベール・ドローネーの魅力は、まさにここに集約されていると思っています。

実は生い立ちなどを調べていくと、上で挙げた画家たちとは少なからず接点があったのが分かってきます。

 

 

 

 

ロベール・ドローネーの生い立ちと代表作を見てみよう!

Story

これまで様々な画家を見てきましたが、画家の生き様生い立ちが作品に与える影響力はかなりあると思っています。それだけ生きている間に出会った画家や作品から受けた影響力が大きかったと言う事でしょう。

私の持論にはなりますが、画風を理解するには画家の生い立ちを知るのが一番!だと思っています。

 

「自画像」(1905‐1906年)ロベール・ドローネー

「自画像」(1905‐1906年)ロベール・ドローネー

・54×46cm、カンヴァスに油彩、国立近代美術館(パリ)

 

ロベール・ドローネーはどうかというと…

ドローネー、ロベール Robert Delaunay 1885.4.12ー1941.10.25

フランスの画家。パリに生れ、モンペリエで没。晩年にアンリ・ルソーと親交を結ぶ。初期には新印象主義、キュビスムの時期を経る。1910年ソニア・テルクと結婚(ドローネー、ソニア)。ともに色彩と動きの追求に進み、『窓』(1911、パリ、個人蔵ほか)によってアポリネールから「オルフィスム」と命名される。エッフェル塔、飛行機、フットボール(『カーディフ・チーム』1912ー13、エントホーフェン、市立美術館)などの近代的な要素をとりあげる一方、色彩のフーガともいうべき純粋抽象に達し(連作『円環的かたち』1912-13)、クレーに影響を与える。その後、抽象構成の建築装飾への適用を試み、1937年のパリ万国博覧会の鉄道館、航空館の壁画などを制作した。

・出典元『新潮 世界美術辞典』

 

新潮「世界美術辞典」

もうちょっと説明が必要かな?と思うので、私なりに付け加えながら話していこうと思います。

ロベール・ドローネーを語る上で、まず重要だと思うのが若い頃に専門的な教育と受けていないという事。多くの画家は若い頃に、美術学校で専門的に絵画の勉強をしていたりします。でもロベール・ドローネーの場合は、ほぼ独学だったというわけです。

 

「都市」(1911年)ロベール・ドローネー

「都市」(1911年)ロベール・ドローネー

・145×112cm、カンヴァスに油彩、グッゲンハイム美術館所蔵

解説にもありますが、”初期には新印象主義、キュビスムの時期を経る。”とあります。

ロベール・ドローネーは、最初ジョルジュ・スーラの新印象派から影響を受けたり。ポール・セザンヌに興味を持つようになり、作品や画風を研究していた時期もあったと言います。

 

それから色彩について研究をしていたのも有名な話です。

ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルール(Michel-Eugene Chevreul)の代表的著書『色彩の同時対比の法則と配色について』からも、かなりの影響を受けています。簡単に言えば、隣同時に並べられた色同士が影響し合うという考え方。

この色彩の配色を上手く利用したのが、点描画でも知られる”新印象主義”。実際にジョルジュ・スーラやシニャックも影響を受けていますからね。

 

「エッフェル塔」(1909‐1910年)ロベール・ドローネー

「エッフェル塔」(1909‐1910年)ロベール・ドローネー

・116×81cm、カンヴァスに油彩、カールスルーエ州立美術館所蔵

R・ドローネーは色彩に興味の持っていたわけですから、モノクロ重視のキュビスムが性に合っているかと言えば…

 

おそらく”NO!”になるかと思います。

事実、ピカソやブラックのキュビスムの運動に賛同するものの、早くして抜けています。そしてキュビスム的構図は受け継ぎ、そこに色彩の理論を取り入れたというわけですね。

 

「街に開いた窓(第1部、第3モティーフ)」(1912年)ロベール・ドローネー

「街に開いた窓(第1部、第3モティーフ)」(1912年)ロベール・ドローネー

・45.7×37.5cm、カンヴァスに油彩、テイト・ギャラリー所蔵

1912年頃から制作していった連作『窓』からも分かりますが、キュビスムからの脱却が伺えると思います。そしてアポリネールがこの頃の作品を見て、色彩に音楽的なリズムを感じる!と。ロベール・ドローネーの絵画様式をオルフィスムと呼んだわけです。

こういう流れを見ると、キュビスムに完全傾倒することなく、独自の色彩感覚を活かして抽象的になっていったという感じでしょうか。

 

「カーディフ・チーム」(1913年)ロベール・ドローネー

「カーディフ・チーム」(1913年)ロベール・ドローネー

・326×208cm、カンヴァスに油彩、パリ市立近代美術館

これは代表作の一つ「カーディフ・チーム」です。

 

「ポルトガルの女性」(1916年)ロベール・ドローネー

「ポルトガルの女性」(1916年)ロベール・ドローネー

・53.5×63.3cm、カンヴァスに油彩、コロンバス美術館所蔵(米国オハイオ州)

ここまで来ると、キュビスム的な画風はあまり感じられない。どことなくカンディンスキーの雰囲気も感じられませんか?

 

「円形」(1930年)ロベール・ドローネー

「円形」(1930年)ロベール・ドローネー

・67.3×109.8cm、カンヴァスに油彩、グッゲンハイム美術館所蔵

まるでピート・モンドリアン的な作風に見えてきます。まさに抽象画と言った感じでしょうか。

思うにR・ドローネーは若い頃に専門的教育と受けてこなかったのが大きいと思っています。イイ意味で染まっていなかったので、出会ってきた画家や作品の影響をモロに受けてきた。

こういった背景があるから、結果的に抽象画の先駆者として名を残したのかもしれませんね。

少なくとも鮮やかな画風が好きな私としては、R・ドローネーの画風は好きです。華やかな色彩は観ていてイイものですしね。^^ 純粋にイイと思える作品って、その人にとっての名画でもあるわけですしね!

 

 

 

 

余談、私がドローネーとは呼ばない理由

考え

最後に私のこだわりについて話そうと思います。

正直言ってどうでもいいと言えばどうでもいいのですが…。

 

美術系の本や雑誌などを見ていると、ロベール・ドローネー(Robert Delaunay)ドローネーと書いているものを見かける事もあると思います。つまりロベールを省略しているわけです。別に間違いではないし、どちらでも構わないとは思いますが。

でも私が言うのもなんですが、省略してはいけないと思っています。個人的に好きな画家というのもありますが、何よりドローネーの名が付く画家が他にも数人いるから。

 

ローネーの名が付く画家は?

例えばロベール・ドローネーの妻ソニア・ドローネーもその一人。画家やデザイナーとしても活躍していました。そしてあまり知られてはいないかもしれませんが、ジュール=エリー・ドローネーという画家もいます。

ソニア・ドローネー(Sonia Delaunay)1885ー1979年
…旧姓はテルク(Terk)、1910年にロベール・ドローネーと結婚するが、その後も画家として活動していた。

ジュール=エリー・ドローネー(Jules-Elie Delaunay)1828ー1891

 

個人的に好きな画家の一人でもあるし、他にいるドローネーの画家と区別するためにも、”ロベール・ドローネー”、もしくは”R・ドローネー”で呼びたい!これが私のちょっとしたこだわりです。少なからず、私なりのロベール・ドローネーに対する敬意の様なものでしょうか。^^

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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