- 2023-10-4
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「テート美術館展 光」で、久しぶりにお目にかかった画家”ジョせフ・ライト・オブ・ダービー”
テート(TATE)ですから、もちろんイギリスを代表する画家の一人。一度でも彼の作品を見た事のある人なら、光と影の描き方が印象に残るかと思います。そしてもう一つ忘れてはならないのが”啓蒙思想を絵画に取り入れた画家”と言われている点です!
啓蒙思想を絵画に取り入れた?
確かに洒落た表現ではあるけれど、ちょっと分かりにくいとも言える。今回は18世紀のイギリスで活躍した画家ジョセフ・ライトについて解説していこうと思います。
【 目次 】 ・ジョゼフ・ライト・オブ・ダービーの特徴を一言で! |
ジョゼフ・ライト・オブ・ダービーの特徴を一言で!
私が思うジョゼフ・ライトは、明暗を描かせたら天下一の画家という印象です。
ロウソクや月明かりを用いた光の描写は絶品!
明暗の強調と言ったら、一般的にカラヴァッジョやアダム・エルスハイマーなどが思い浮かぶとお思いますが、ジョゼフ・ライトの場合はまたちょっと違ってきます。ジョゼフ・ライトは啓蒙思想を絵画に取り入れた画家と言われていて、つまり科学技術や近代を題材にした作品を多く描いていました。ある意味”科学技術や産業を明暗技法を用いて描いた画家”という感じになると思います。
・147.3×203.2cm、カンヴァスに油彩、ダービー美術館所蔵
これは代表作「太陽系儀について講義する哲学者」と言う作品です。
よくジョセフ・ライトは”キアロスクーロ”を特徴とする画家と言われているけれど、私の印象では他とちょっと違うのです。
※キアロスクーロ(Chiaroscuro)…イタリア語で「明暗」を意味する言葉。美術では明暗のコントラストを指します。
対象物を明暗法を用いて描く…。
ジョゼフ・ライトの場合は、科学や産業といった思想といったモノだったわけです。こういった題材を描いた背景には、パトロン(支援者)の影響もあったと言われています。とにかく題材と自身の明暗技法の相性は良かったと言う事でしょう。代表作は後世に残り、評価を得るに至ったわけですから。
ジョゼフ・ライトについて解説します。
私はこれまで何度か彼の作品を見た事はありますが、不思議と記憶に残る作品が多い印象です。
特に風景画はインパクトが大きい感じがします。写実的で強い明暗表現と言ったら、他にも似た様が画家はたくさんいます。でもジョセフ・ライトの場合はちょっと違う。それは時代の分岐点を絵画で表現したからかもしれませんね。
だから余計に目新しさがあるのかもしれません。
ここで参考として、『西洋絵画作品名辞典』の解説をちょっと見てみようと思います。
ライト・オブ・ダービー(Joseph Wright of Derby)〔英〕1734ー97同地
18世紀イギリスの肖像画家、風景画家。1750年代ロンドンで肖像画家T・ハドソンの下に学び、肖像画家として出発。主にダービーとリヴァプールで活躍し、ロンドンのロイヤル・アカデミーにも出品。60年代初頭からろうそくの明かりによる陰影の強い作品を制作し、E・ダーウィンやR・アークライトなど知友の影響もあって科学実験や産業技術のテーマを意欲的に描いた。73ー75年イタリアに旅行、帰国後2年間バースに滞在したのち、ダービーに戻り、地方色の濃い風景画を描いた。81年ロイヤル・アカデミー準会員に選ばれたが、84年正会員への推挙を辞退、生涯アカデミーの画家とは一線を画した存在でありつづけた。
・出典元:「西洋絵画作品名辞典」
さて、真っ先に気になる名前が登場してきました。T・ハドソン、つまり”トマス・ハドソン(Thomas Hudson)”です。
ジョセフ・ライトは最初、T・ハドソンの下で学び肖像画家として出発します。実はロイヤル・アカデミーの初代会長でもある”ジョシュア・レノルズ”もT・ハドソンの元で修業した画家の一人でした。
・127×101.2、カンヴァスに油彩、エール英国美術センター(ニューヘヴン)
それから、60年代に入ってから陰影の強い作品を描くようになります。
『西洋絵画作品名辞典』の解説文に。”60年代初頭からろうそくの明かりによる陰影の強い作品を制作し、E・ダーウィンやR・アークライトなど知友の影響もあって科学実験や産業技術のテーマを意欲的に描いた”と。
↑上は”絵を描いている人物”のドアップ画像になります。
どういった理由で明暗の強い作品を描くようになったのか分かりませんが、少なくともレンブラントやカラヴァッジョから影響を受けているのは間違いない様です。
・182.9×243.8cm、カンヴァスに油彩、テイト・ギャラリー所蔵(ロンドン)
1760年代後半に描いた作品「空気ポンプの中の鳥の実験」です。
思うに一番の代表作と言っても過言ではないでしょう。科学技術を絵画に取り込み、強調された明暗技法!それからリアルで写実的な人物描写。ジョセフ・ライトの様々な要素が集結したかの様な作品だと思います。
・132×121.3cm、カンヴァスに油彩、テイト・ギャラリー所蔵(ロンドン)
熱せられた鉄の描写は特に目を惹きますね。これは一度見てみたいものです。
・188×152.4、カンヴァスに油彩、エール英国美術センター(ニューヘヴン)
・101.6×127cm、カンヴァスに油彩、スミス・カレッジ美術館所蔵(ノーザンプトン)
他にも洞窟を描いた作品が6点ほどあります。
こうやって見てみると、風景画でも様々な光を使い分けているのが分かります。熱せられたマグマの明るさや、差し込める柔らかい陽の光。ロウソクのボワッとした柔らかい明るさや、科学的な明るさ。最初に明暗を描かせたら天下一と言った理由が分かってもらえたかと思います。
「テート美術館展 光」で見れる、ジョセフ・ライトの作品は?
ジョセフ・ライトの作品を一番多く所蔵している場所と言えば、おそらくダービー美術館になるのでしょうか?もちろんイギリスを代表する画家ですから、テート(TATE)にも作品は所蔵されています。2023年から始まった「テート美術館展光」でも2点展示されていましたから。
ジョセフ・ライトの作品の特徴と言えば、何といっても明暗のコントラストが挙げられます。”光”がテーマの展覧会には最適な画家と言ってもイイ!
・122×176.4、カンヴァスに油彩、テート美術館所蔵
個人的に噴火するヴェスヴィオ山の風景画は印象的でしたね。これは物凄い迫力があります。基本的にジョセフ・ライトの作品は大き目な作品が多いですから、写真や画像ではなく実物を観てほしいと思います。
・101.6×127.6、カンヴァスに油彩、テート美術館所蔵
今回展示されていた2点とも風景画でした。出来るなら科学や産業を描いた作品が観たかったですが…、それは次の機会に出会えることを祈るばかりですね。とにかく明暗の描写を描かせたら、やっぱり天下一の画家と言っても過言ではないと思っています。
【 テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ 】 ・ |
「テート展」では、忘れずに魅入ってほしいものです。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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