ブルターニュに魅了された画家”リュシアン・シモン”を解説!

ブルターニュ(Brittany)

 

ブルターニュに魅了されたフランスの画家リュシアン・シモン(Lucien Simon)

 

おそらく、あまり聞かない名だと思います。日本での知名度はそこまでないだろうけど、個人的にはおススメの画家です。現在日本で作品を見れる場所は、上野にある国立西洋美術館くらいでしょうか。特に一押しは「婚礼」という作品で、シモン独特な色彩感は何度観てもイイものですね。

一応画風的には”ポスト印象派”に属する様ですが、とにかく流派はどうでもいいと思っています。イイと思った作品が良いわけですから^^。

今回は私がおススメする画家”リュシアン・シモン”について解説していこうと思います。

 

 

リュシアン・シモンの魅力! 一目ぼれの理由は?

リュシアン・シモンを解説!

リュシアン・シモン(Lucien Simon)…

「ブルターニュに魅了された画家」というタイトルから始めるように、作品の多くはブルターニュの風景画や風俗画がほとんど。しかも作品の多くが地元にあるカンペール美術館に所蔵されている事からも、いかにブルターニュに根付いた画家だったのかが分かると思います。

私の持っている辞書「新潮 世界美術辞典」には多少の生い立ちや詳細は載っていましたが、本当にそれくらいでした。日本での知名度の低さがこういった点からも分かりますよね。個人的に好きな画家で、あれだけイイ作品を描く画家なのに、如何せんあまり知られていないのが残念ですね。

 

が魅力の画家なのだろう??

早速、リュシアン・シモンの生い立ちについて話すのもいいですが、まずは何が魅力の画家なのか?に触れてみたいと思います。あまり知られていない画家ですから、いきなり生い立ちについて話してもピンと来ないでしょうから。

論より証拠!ではないですが、まずは言葉よりも作品から見てみようと思います。

 

「ケリティの波止場」(1937‐38年)リュシアン・シモン

「ケリティの波止場」(1937‐38年)リュシアン・シモン

・カンヴァスに油彩、カンペール美術館所蔵

素朴な感じもするし、民族的な雰囲気もある。明るめな色調と色彩感が、特に際立っている感じがしませんか!?私が初めて彼の作品を見た時、一瞬で一目ぼれしてしまったわけですが、一番魅了された点はリュシアン・シモンの色彩感!

有名な画家かどうかではなく、純粋に作品の雰囲気に惹かれたわけですね。まさに、恋愛における一目ぼれと同じ様なものだろうか?

この気持ち、あなたにも分かるかな??

 

「自画像」(1908年)リュシアン・シモン

「自画像」(1908年)リュシアン・シモン

リュシアン・シモン(Lucien Simon)は、1861年~1945年に生きたフランスの画家。アンリ・マティスやモーリス・ド・ヴラマンクといったフォーヴィスム(野獣派)の画家たちと同時期に活躍していた画家です。でも画風的にはフォーヴィスムとは程遠い感じでしょうか。確かに色彩的に華やかな感じはあるにせよ野獣的とは程遠い感じです。明るく華やかな感じが特徴なので、”ポスト印象派の画家”が一番合っているのかもしれませんね。

 

なみに新潮世界美術辞典」では、リュシアン・シモンの作風について、こんな解説がされていました。

印象派的な明るい色彩をとり入れているが、伝統的な写実主義をも受け継ぎ、ブルターニュの風俗、生活を描いた。肖像画家としてもすぐれた作品を遺す。代表作『教会のブルターニュ人たち』(マンハイム、美術館)

・出典元:新潮『世界美術辞典』の一部抜粋

作風的には印象派のイメージが強いですが、でも根底には伝統的な技法があるって事でしょうか。

これは私の解釈ですが、リュシアン・シモンはブルターニュに魅了され、この地へ移り住んだ経緯があります。いかにブルターニュを素晴らしく描くか?好きな場所を美しく描きたい!!この思いがシモン独特な色彩感や色調に現れているのかもしれないですね。

 

 

リュシアン・シモンの生い立ちと作品

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それでは、リュシアン・シモンの生い立ち、作品を見ていこうと思います。

 

リュシアン・シモンの生い立ちと作品

1861年フランスのパリで生まれる。学校を卒業後、兵役に就きますが、そこで画家ジョルジュ・デヴァリエール(George Desvallieres)と出会います。この出会いがきっかけで、シモンは画家の道をこころざします。

その後ジュール・ディディエ(Jules Didier)に師事し、1881年~1885年を美術学校”アカデミー・ジュリアン”で学ぶ。美術学校ではアカデミズムを代表する画家ウィリアム・アドルフ・ブグローからも指導を受けています。

1891年に画家アンドレ・ドーシェの姉ジャンヌ・ドーシェと結婚。それから頻繁にブルターニュ地方ベノデにあるドーシェ家の別荘を訪れる様になり、1901年にはブルターニュ地方のコンブリに家を購入します。

 

「サン=タンヌ・ラ・パリュの祭りの行進」リュシアン・シモン

「サン=タンヌ・ラ・パリュの祭りの行進」リュシアン・シモン

 

リュシアン・シモンはブルターニュの風景・風俗画を多く描いていますが、その理由にはブルターニュを拠点として活動していたのが大きい。1901年に家を購入するという経緯から、シモン自身画家としての方向性が見えてきたって事でしょうか。

シモンは学校を卒業した後、積極的に展覧会などに作品を出品し続けています。そして1900年開催のパリ万博博覧会では、出品した作品「私の家族」などが評価された。私が思うに1900年という時期が、リュシアン・シモンにとっての分岐点だったのかな?思います。

 

「La chapelle de la Joie」(1907年)リュシアン・シモン

「La chapelle de la Joie」(1907年)リュシアン・シモン

・カンヴァスに油彩、カンペール美術館所蔵

これはブルターニュにある教会を描いた作品です。印象派を感じさせる海と空、教会の描写。そして手前の女性たちが着ている青い衣装もイイ味を出していますね。色が非常に映えるので、民族衣装の感じが際立っている感じがしませんか?

 

リュシアン・シモンはブルターニュに移り住み活動をしますが、着実に実績と評価を積み重ねていったようです。1920年頃から、画家としてだけでなく指導者としての活動も増えていったから。ブルターニュを代表する画家ではあるけれど、フランス芸術界にとっても重要な存在だった。シモンの生い立ちからも、何となく見えてきませんか?

 

何度観てもシモンの作風はイイですね!色が映えるというか、妙に心に染み入るというか。独特な民族文化や風習が根強く残る地域ブルターニュ”。リュシアン・シモンの画風との相性の良さを感じませんか??

 

 

 

 

日本で見れるリュシアン・シモンの作品

どこで見れるの!?

主にフランスで画家として、そして指導者として活躍しただけに、作品の多くはフランスにある様です。対して日本での知名度はないかもしれないけれど、でもちゃんと日本でも見る事は出来ます。

現在”リュシアン・シモン”の作品は、東京上野にある国立西洋美術館に数点所蔵されています。

 

・「婚礼(Wedding)カンヴァスに油彩、112.3×151cm
・「二人の婦人(Two Ladies)カンヴァスに油彩、105×60.5cm
・「庭の集い(Reunion in the Garden)カンヴァスに油彩、159×216cm
・「ブルターニュの祭り(Village Fair in Brittany)カンヴァスに油彩、165×200.5cm

・「墓地のブルターニュの女たち紙に水彩・グアッシュ、94×102cm
・「ブルターニュの女(Woman of Brittany)紙に水彩、102×54cm
・「養老院(An Asylum for the Aged)麻布に紙貼・グアッシュ、97×120cm
※すべて国立西洋美術館所蔵、松方コレクション

 

国立西洋美術館
現在のところ、国立西洋美術館には計7点の作品が所蔵されているようです。当然ながら松方コレクションという自前の作品ですから、普段は「常設展」でも見る事が出来ます。(時期によって展示替えもあるため、展示日程は前もって調べた方がいいですが。)

 

中でも、特におススメは「婚礼」という作品です。通りの周辺に立っている樹木の花の描写は本当に美しい!!印象派らしい描き方が何ともイイですね!華やかな色彩感といい、花の描き方といい、一見の価値ありだと思います。
参考に⇒国立西洋美術館所蔵作品:リュシアン・シモン「婚礼」

 

「じゃがいもの収穫」(1907年)リュシアン・シモン

「じゃがいもの収穫」(1907年)リュシアン・シモン

・102×137cm、カンヴァスに油彩、カンペール美術館所蔵

 

2023年は「ブルターニュ展」が開催したりと、比較的リュシアン・シモンの作品が多く展示されるので、観る機会としてはチャンスだと思います。

憧憬の地 ブルターニュ モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷 】
2023年3月18日(土)~6月11日(日)まで、国立西洋美術館にて
※国立西洋美術館所蔵の作品7点が一堂に展示されます。

 

ブルターニュの光と風 画家たちを魅了したフランス 】

東京開催:2023年3月25日(土)~6月11日(日)、SOMPO美術館にて
福島開催:2023年7月1日(土)~8月27日(日)、福島県立美術館にて
静岡開催:2023年9月5日(火)~10月22日(日)、静岡市美術館にて
愛知開催:2024年3月1日(金)~4月7日(日)、豊橋市美術博物館にて
※リュシアン・シモンの作品は上で挙げた「じゃがいもの収穫」1点だけですが、日本ではあまり知られていない画家の作品が見れるのは必見です。

 

今後ブームになるかどうかは分かりませんが、少なからず素敵な絵を描く画家という点は間違いない。実際に観て”良さ”を感じてほしいと思います。美術において、画家の知名度って関係のない事!あなたが観て、「イイな~」と感じる作品があればイイわけですから^^!

 

 

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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