- 2023-12-27
- Enjoy This (観てほしい絵画展)
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印象派といえば、フランスをイメージする人も多いかと。
それゆえ、アメリカで活躍した印象派画家と言われても、ピンと来ない人もいるでしょうね。今回紹介する”チャイルド・ハッサム”を知らなくても、別に不思議ではないと思います。
でもハッサムの描く風景画は、どれも日本人が好みそうな素敵な作品ばかり!
しかも近々「ウスター美術館」展で、彼の作品が数点展示されます。
この機会にぜひ知っておいてほしい!というわけで、今回は彼の生い立ちを追いながら、深掘り解説していこうと思います。
【 目次 】 ・まずはチャイルド・ハッサムの作品を見てみよう! |
まずはチャイルド・ハッサムの作品を見てみよう!
・43.8×54.9cm、カンヴァスに油彩、デトロイト美術館所蔵
これはチャイルド・ハッサム(Childe Hassam)が、フランスのパリ滞在中に描いた作品「パリのノートルダム大聖堂」です。
どうでしょう!?
とても素敵な作品だと思いませんか?
どことなく、モネやルノワール、シスレーにも通じる様な…。
私の解釈だと、印象派の巨匠たちの良い所どり!といった感じでしょうか。
見た目はオーソドックスな印象派に見えて、でも非常に洒落っ気がある風景画にも感じてしまう。数年前に日本で話題になったレッサー・ユリィとダブって見えるのは、私だけでしょうか!?
・61.5×51.4cm、カンヴァスに油彩、イスラエル博物館所蔵
これまでハッサムの作品は、日本でも展示された機会はありました。
最近だと「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」展になるでしょうか。その時に展示された作品が、上の「夏の陽光(ショールズ諸島)」で、記憶に残っている人もいるかと思います。
ただハッサムの魅力を伝える上で、どうしても外せないのは”都市部の街路”を描いた作品です。オシャレな街並みと、生活感の感じる人の描写は、実に素敵です。
私が思うに、一見の価値があると!
2024年に開催する「ウスター美術館所蔵の印象派展」でも、彼の作品は数点展示されるので、興味が湧いたなら行ってみるのもイイかと思います。
アメリカの印象派画家チャイルド・ハッサムについて簡単解説!
アメリカを代表する印象派の画家と言えば、女流画家の”メアリー・カサット”と、今回紹介するチャイルド・ハッサムの2人が挙がると思います。
ただカサットは活動の拠点がほぼフランスでしたから、純粋にアメリカで活動したとなると、”チャイルド・ハッサム”が代表格になると思います。
ー フレデリック・チャイルド・ハッサムの生い立ち ー
・Frederick Childe Hassam 、1859年10月17日 – 1935年8月27日
1859年、アメリカのボストン(現在のマサチューセッツのドーチェスター)で生まれる。
1872年家庭の事情もあり学校を退学、その後出版社で経理として働く。しかし適性のなさもあり、程なくして製図技師、イラストレーターとして活動。雑誌「Harper’s Weekly」や「Scribner’s Monthly」、「The Century」のイラストを手がけ様になります。
1886年、ニューヨークで開催された「印象派展」で、ハッサムは印象派という画風に魅了される。これがきっかけでヨーロッパに渡り、パリのアカデミー・ジュリアンで絵の勉強をします。
・42.5×61cm、カンヴァスに油彩、個人蔵
1889年、サロン・ド・パリやパリ万国博覧会の展覧会に作品を出品し、銅メダル(bronze medal)を獲得。同年アメリカに帰国し、ジュリアン・オールデン・ウィアー(J.Alden Weir)、ジョン・ヘンリー・トワックトマン(John Henry Twachtman)ら印象派の画家たちと交友を重ねながら、地道に画家としての活動を継続。
1897年、仲間と共に”米国芸術家協会(Society of American Artists)”を脱退し、「Ten American Painters(通称The Ten)」と呼ばれる美術家グループを結成する。以降は評価も高まり、アメリカの印象派を引っ張りながら、画家として成功をおさめていきます。
フランスのイメージが強い”印象派”ですが、実はアメリカでも人気な絵画だったのが興味深い!
実はハッサムが印象派の画家として活躍できた理由には、当時の時代背景が良かったのもあります。南北戦争も終わり、アメリカはより工業化、近代化していった。それに伴って多くの人が、芸術に興味持つようになっていったからです。
当時の印象派は今ほど人気はなかったので、取っ付き易い絵画だったというわけです。
・91.4×66.2cm、カンヴァスに油彩、ニューヨーク歴史協会(美術館)
例えば、ハッサムの代表作と言われる「フラッグ(Flag)」シリーズもその一つ。
1916年頃から描いた、国旗をテーマにしたシリーズ作品ですが、人気になった背景には”第一次世界大戦”という出来事が大きく関係しています。
・46×39cm、カンヴァスに油彩、プリンストン大学美術館所蔵
国旗を描いた作品と言えば、印象派の巨匠”クロード・モネ”を思い浮かべる人もいるでしょう。
元々ハッサムが「フラッグ」シリーズを描くきっかけは、フランス滞在時だったと言われています。時代的に考えても、モネの影響を受けているのは間違いないかと。
実は豆知識的エピソードですが、ホワイトハウスのオバマ大統領のオフィスには、ハッサムの作品「The Avenue in the Rain」が飾ってあったのは結構有名な話です。
ハッサムが本当に描きたかったものは?
私の中でチャイルド・ハッサムの代表作と言ったら、”都市の街路”を描いた風景画は外せません!
もちろん都市の風景画は、クロード・モネやレッサー・ユリィなど多くの画家も描いている題材です。でもハッサムに関して言えば、彼らにはない独特な味わいがあったりします。
チャイルド・ハッサムにしかない、独特な味わい!?
生い立ちを深堀していくと、その理由も何となく見えてくると思うのです。
・46×38.5cm、カンヴァスに油彩、個人蔵
私が思うに、ハッサムの大きなターニングポイントは、1904年(ハッサム45歳の頃)になると思っています。
この頃から描く題材にも変化が表れてきたから。それまで好んで描いていた都市部の風景画が減少していったのです。
自身の健康や精神的に病んだのも理由だそうですが、何より都市の様相が一変したきたのが大きな要因だと言われています。
・64×77cm、カンヴァスに油彩、トレド美術館所蔵
ハッサムの生い立ちを探っていくと、興味深いエピソードが見えてきます。
チャイルド・ハッサムの言葉…
”ニューヨークは世界で最も美しい場所。でも多くの人は、自分たちの国の良さを分からないでいる。”
英語では”humanity in motion”という言葉で表現されていますが、私なりに意訳して解釈すると、”人間らしさの感じられる都市の景観を描きたかったのだろう”と…。
ハッサムが本当に描きたかったもの!
それは都市の風景ではなく、人間模様が感じられる街並みだったのではないか!と。
・カンヴァスに油彩、ジョン&マーブル・リングリング美術館
歴史を感じさせる建物や馬車が走っていた道路、そこを歩く人間たちの様子。ハッサムはそんな人間模様が感じられる街並みをカンヴァスに残したかったのだろうと思うのです。
高層ビルが建ち始め、車が走る様になり、より近代化していく街の様子に対し、ハッサムは嫌気が差していった。人間模様が感じられない都市の風景が嫌になったのではないかと。
まとめとして…
印象派の画家たちはそれぞれ独自の画風を持っているけれど、共通しているのは”好きな風景や人物を描いた”という点!
好きな風景をカンヴァスに描くから、素敵な作品が生まれるんでしょうね。
だから印象派絵画は色あせることなく、魅力的に見えると思うのです。
印象派の絵画は、ただ眺めて見るだけでもオモシロイです。
でも、もうちょっと深掘りしていくと、また違った魅力や発見があるから超オモシロイ!!
実際にハッサムの作品を鑑賞する際は、今回の話を参考に観てみるのもイイかと思います。
すると違った発見があるかもしれませんよ!
「ウスター美術館所蔵 印象派展」の開催概要
先ほどちょっと触れましたが、2024年にはアメリカの印象派画家に焦点を当てた展覧会が開催します。
今回紹介したチャイルド・ハッサムの作品も数点展示されるので、ぜひ気になる人は足を運んでみるのもイイかと。
【 印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵 】 ・(東京展)2024年1月27日(土)~4月7日(日)、東京都美術館にて |
という訳で、展覧会でハッサムの作品を見かけたら、ぜひ気に留めて魅入ってほしいと思います。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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