カラヴァッジョの「音楽家たち」は何が凄いの?、名画たる所以を解説!

リュートと静物

 

カラヴァッジョを代表する作品に「音楽家たち(または「奏楽者たち」)」があります。

以前、「メトロポリタン美術館展」で展示された作品なので、観た人も多いだろうと思います。パッと見は、なんてことはない楽器を演奏する若者たちを描いた作品にしか見えない。気になる点を挙げるとすれば、若者たちの衣装が妙に露出性が高いって事でしょうか。非常にリアルというか写実的に描かれているので、純粋に上手い絵だな~と思うでしょう。でも、じっくり見ていくと「音楽家たち」という作品は、地味に凄い!のが分かってくるのです。

 

何が凄いのかって!?

その理由も交えながら、名画「音楽家たち」について解説していこうと思います。

 

 

「音楽家たち」の描かれた背景と、概要について

「音楽家たち」(1597年)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

「音楽家たち」(1597年)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

 

「音楽家たち」が描かれたのは1595~1596年頃。カラヴァッジョ20代中頃の作品です。写実性の高い作風ゆえ、あまり芸術に詳しくない人でも一目で上手いのは分かると思います。これを20代頃に描いたわけですから、いかにカラヴァッジョが凄かったのか分かりますよね!?

 

「音楽家たち」の描かれた背景は?

さて、カラヴァッジョが画家として独立したのが23歳の頃。現在の感覚で言えば、23歳は早いのかもしれませんが、元々カラヴァッジョは10代前半から修行し、工房で働いていたのです。画家としてある程度経験を積んでいたわけですね。それは作品を見ても分かる事だと思います。

23歳で独立したカラヴァッジョですが、この頃に制作した「トランプ詐欺師」という作品が大きな契機となります。当時権力を持っていたデル・モンテ枢機卿の目に留まります。デル・モンテ枢機卿は芸術をこよなく愛し、しかも自分の館に多数の音楽家を抱えるほどの音楽好き!カラヴァッジョはそんな枢機卿の食客として迎えられ、パトロンとして支援してもらっていました。つまり、「音楽家たち」という作品は、枢機卿のために描いた作品だったのです。

 

「音楽家たち」の概要と気になるポイント!

「音楽家たち」はタイトルの通り、音楽を演奏する若者たちを描いた作品です。中央でリュートを弾いている気だるそうな音楽家の少年。その右側で、こちらを振り向いている青年がいますが、これはカラヴァッジョ本人だと言われています。そして一番左側に目を移すと、翼を生やした天使の様な少年がいますよね。下を向いて葡萄に手を伸ばしていて、これから葡萄を食べようとしているのだろうか?

翼を生やした少年やカラヴァッジョ本人が描かれているのも、気になるポイントですが、もう一つ上げるとすれば、それは少年たちの衣装でしょう!妙に露出的過ぎるのです。全体的に写実性が高い作品ゆえに、どうしても絵の上手さばかりに目が向きがちですが、実は結構ツッコミどころ満載の作品だったりするのです。

 

 

 

「音楽家たち」 名画たる所以と見所は?

リュートと静物

”名画”を辞書で調べると、すぐれた絵、名高い絵という意味が出てきます。確かに意味から考えても、「音楽家たち」は名画と言っても過言ではない!あちこちに散りばめられた見所!そしてカラヴァッジョの画力の高さ!知れば知るほど本当に凄いしか出てこないのです。

ここでは名画たる所以を私なりに挙げてみました。ぜひ美術館に行って、確かめる感じで鑑賞してほしいですね。

 

1,名画たる所以 質の高い静物画を含んでいるから!

「音楽家たち」には、質の高い静物画の要素が含まれています。

カンヴァスの左側に描かれている葡萄の絵。まず注目すべきポイントは静物画です!

カラヴァッジョは画家として独立する前、ジュゼッペ・チェーザリの工房で働いていました。ここでカラヴァッジョは果物や花を描く技術をかなり高めたと言われています。つまり静物画の腕前をかなり上げたのです。例えば初期の傑作「果物籠を持つ少年」もそうですが、果物の描写が物凄く上手い!専門家の評価では、描かれた果物がどんな菌によって傷んでいるのか?まで分かるほどだとか…。

カラヴァッジョの写実性は、写真の様なリアルさとはちょっと違う感じです。何というか、物の有り様(ありよう)を描くのが上手いのです!目の前の物がどの様な状態なのか?メトロポリタン美術館展で展示の今作、ぜひ静物画も見所!

 

2,名画たる所以 写実性の高さは、当時では群を抜いていた!?

「音楽家たち」の写実性の高さはものすごいものがあります。例えば手前に抱えれているバイオリン下にある楽譜。実は専門家はこの楽譜を解読する事に成功したそうです。つまり解読できるほど高い写実さがあるって事!当時でここまで高い技量の画家は他に居ただろうか?

 

3,名画たる所以 人物画や静物画、神話、寓意など様々な要素が読み取れる!

「音楽家たち」は一見すると人物画、もしくは風俗画と思うかもしれない。でも先ほど話した様に静物画の要素もあれば、寓意の意味も含んでいます。この1枚の絵には様々な要素が読み取れるのです。ちなみに寓意は直接的ではなく、別のものに例えて表す事。

この「音楽家たち」は演奏している様子を描いていますが、少し視線をずらせば”キューピッド”が描かれていたりします。キューピッドは”愛”を表わすと言われているだけに、この絵は音楽と愛の寓意的作品として考えられています。さらにはリュートを弾いている男性の何とも言えない気だるさというか、官能的表情。解釈によれば”同性愛”という意味のも取れるとか…。

見れば観るほど深い!知れば知るほど考えさせられる。まさに名画と言っても過言ではないのです。

 

 

「音楽家たち」から見えてくる当時の風習

「音楽家たち(detail)」(1597年)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

「音楽家たち(detail)」(1597年)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

さてこの絵で特に気になるのが少年たちのうつろな表情です。気だるそうな、酔っている様な、はたまた誘っているかの様にも見える。実は少年たちの表情から、当時のこのような秘密が分かってくるのです。

 

17世紀~19世紀頃。当時のキリスト教の教会では女性が歌う事は禁止されていたそうです。そのため高い声を維持するため、6~8才頃の子どもに去勢手術させて、生涯高い声を維持させていたと言います。

 

ここでCheck!
カストラートって?

デル・モンテ枢機卿は男色の好みがあった事はよく知られています。もちろん抱えていた音楽家たちの多くも、去勢されたカストラートだったと言われています。

 

カストラート(castrato)とは、去勢した男性の歌い手の事。去勢し男性ホルモンの分泌を抑制する事で、人為的に声帯の成長を抑え高い声質を維持しようとする事。

今では人道的に禁止されている様ですが、当時は当たり前に行われていました。音楽家たちのうつろで妖艶な表情。カストラートが原因だったと言われています。

 

「リュートを弾く若者」(1600年頃)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

「リュートを弾く若者」(1600年頃)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

 

うつろな表情にトロンとした目線。

そして肉付きの良いふくよかな体型。まさに去勢された人の特徴そのままって感じです。実は初期の頃のカラヴァッジョはこういった少年たちの絵が多い印象があります。

あまりエピソードや実話にはないのですが、思うにカラヴァッジョも男色を好んでいたのでは?と思ってしまう。絵から真実を探るのは難しいですが、でも様々な解釈は出来ます。私なりの解釈では「音楽家たち」に描かれている自分の姿からも、もしかしたらカラヴァッジョ自身男色の家があったのかもしれませんね。

 

カラヴァッジョの「音楽家たち」は、知れば知るほど深い!観れば観るほど深みにハマります。

どうでしょう??まさに”名画”と言ってもが過言ではないですよね!

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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