神坂雪佳は間近で見るのが一番! …「つながる琳派スピリット」展より

「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」展 …パナソニック汐留美術館

 

パナソニック美術館で開催したつながる琳派スピリット 神坂雪佳」展に行ってきました。

これは京都にある細見美術館の琳派コレクションを中心に展開された展覧会。特に雪佳の作品が多く展示されている点は大きなポイントでしょうね。琳派の創始から江戸、そして雪佳までと一連の流れで琳派を楽しめると思います。

 

パナソニック汐留美術館にて
さて、先日早速観に行ってきたのですが、ふと感じた事がありました。それは…

神坂雪佳の琳派は図録や画像では半分も味わえない!やはり本物を間近で観るに限る!と。

 

つながる琳派スピリット 神坂雪佳

・期間:2022年10月29日(土)~12月18日(日)
 ※前期10月29日~11月29日、後期12月1日~12月18日

・場所:パナソニック汐留美術館(港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階)
・時間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)

 

この「琳派スピリット」展は琳派を代表する尾形光琳や酒井抱一、そして雪佳の代表作品など約80点が展示。でも作品数以上にボリュームがある様に感じてしまうのはなぜだろう?思うに内容がかなり充実しているって事でしょうか。

今回は「琳派スピリット」の様子を踏まえながら、江戸琳派、そして神坂琳派の見所などを私視点で話していこうと思います。

 

 

前半の見所 …神坂雪佳以外の注目作品たち!

「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」展 …パナソニック汐留美術館

「琳派スピリット」展の前半部分では琳派の誕生から、琳派が最も栄えた江戸時代までの作品が展示されています。琳派の創始者本阿弥光悦(こうえつ)俵屋宗達の作品から、酒井抱一に鈴木其一。それから、今までほとんど見る事がなかった中村芳中(ほうちゅう)中野其明。琳派に関わる多くの画家の作品が観れるのは、琳派コレクションの宝庫”細見美術館”ならではでしょうか。

 

俵屋宗達の「双犬図
…白犬と黒犬の戯れる様子を描いた作品で、特に注目は黒犬の毛並みでしょうね。たらし込みによって毛並みを表現は必見!絵具や墨の滲み具合がまた毛描きとは違った味わいがあります。

 

深江芦舟の「立葵図
…淡い色合いが特徴の作品で、全体的に花や葉の全体的に淡い色調によるたらし込みが施されています。柔らかみがあって、一歩引いた感じの雰囲気も、良いものです。

 

「桜に小禽図」(江戸後期)酒井抱一

「桜に小禽図」(江戸後期)酒井抱一

・131.2×50.4cm、絹本著色、細見美術館所蔵

前半部、特に惹かれたのが酒井抱一の桜に小禽図

たらし込みを使用した桜の幹と、美しく散りばめられた桜の花。そして小禽とあるので小鳥を描いていると思うのですが、妙に目を惹く小鳥の存在。何よりも、画全体のバランス感はイイですね。ずっと観ていたくなる作品です。

この「桜に小禽図」は今展で特に気に入った作品で、ポストカードも購入してしまいました。出来れば大画面のポスターがあったら、良かったと思った今日この頃ですね。

 

そしてもう1点挙げるなら、個人的に「成乙」印の「秋草図団扇」は妙に印象に残った作品でした。この「成乙」印を用いた画家は、尾形光琳の晩年の弟子の一人だそうです。具体的な詳細は不明で、作品も数点しか確認されていないとの事。こういった謎に満ちた画家の作品が観れるのは、けっこう貴重だろうと思います。

 

 

 

後半の見所 …神坂雪佳の注目作品たち!

「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」展の図録

「琳派スピリット」展の後半では、雪佳を代表する図案集『ちく佐』や『百々世草』、それから雪佳の図案が活かされた工芸品の数々が展示されています。個人的に必見は、屏風や掛け軸たちです。雪佳といえば、図案家としての活動ばかりが目につきますが、実は画家としても数多く作品を残しています。その絵が観れるのも今回の見所だと思います。

 

さて、最初に神坂雪佳の琳派は図録や画像では半分も味わえない!やはり本物を間近で観るに限る!と言ったのは、雪佳の原画が観れた事が大きな要因です。実は京都の美術書籍出版社”芸艸堂(うんそうどう)”には、図案集『百々世草』の原画の一部が残っているそうです。書籍では表わされていないたらし込みの技法や、装飾的な色あい。本物でしか味わえない原画ならではの醍醐味が見て取れるのは実にイイですね!^^

 

『百々世草』より「八つ橋」(1909年頃)神坂雪佳

『百々世草』より「八つ橋」(1909年頃)神坂雪佳

 

これは『百々世草』で一番知られている「八つ橋」ですが、書籍等で見ると杜若(かきつばた)の背景の部分が灰色に見えると思います。でも原画では銀で描かれているのです。

 

『百々世草』より「蔦」(1909年頃)神坂雪佳

『百々世草』より「蔦」(1909年頃)神坂雪佳

 

この「(つた)」という図案は、対照的に蔦の部分が金で描かれています。琳派の屏風では頻繁に金や銀が使用されていますが、まさか原画にも装飾的な面が演出されているとは思わなかった。それに葉の部分がたらし込みで描かれているのも注目で、琳派では頻繁に使用されている技法ですが、まさか原画でも使用されているとは!

図案集では決して見る事が出来ない原画ならでは味わい。これは本物を間近で観てこそ味わえる醍醐味でしょうね。一般的に金や銀の色は装飾的になる一方、ちょっと浮いてしまう色だったりします。それが画の中にしっかりと調和しているのが凄いな~と思います。

 

『百々世草』より「弥生」(1909年頃)神坂雪佳

『百々世草』より「弥生」(1909年頃)神坂雪佳

 

弥生」という図案で、特に注目して欲しいのが刺繍です!赤い着物に描かれている刺繍が金で、白い着物の紺部分には銀色が使われています。金銀の色がさりげなく強調されていながら、絵に溶け込んでいる。この色遣いの上手さも神坂雪佳のセンスの高さでしょうね。

今回ふと気づいた点ですが、赤色と金色、そして青系と銀色は超相性がイイ!この発見は今回の「琳派スピリット」での一番大きな収穫です。

 

て、「琳派スピリット」展で展示されている作品で、後半の屏風は個人的に見所満載だと思っています。

それぞれの作品に使用されているたらし込みの技法、特に金泥によるたらし込みは必見!花や葉の葉脈にも金がさりげなく使われている点は、画像や動画ではなかなか堪能できない部分でしょうね。琳派の画家たちは、作品のあちこちにたらし込みという技法を使用していますが、滲みの風合い間近に迫ってこそ堪能できる味わいです。個人的にはルーペは必須の小道具だと思います。

 

パナソニック汐留美術館にて
新橋のパナソニック汐留美術館にて、2022年の12月18日まで「琳派スピリット」展が開催します。前期と後期で展示作品も若干変わる様なので、さりげなく2度行くのもイイと思います。

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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