たまに無性に観たくなる『静物画』の意味と魅力を考察!

静物画(Still‐life painting)の魅力...

 

風景画に人物画、宗教画と様々なジャンルがなる中で、”静物画”ってちょっと脇役的なイメージがありますよね。事実、静物画メインの企画展はないし、ほとんどが次いで感覚で展示される場合が多いから。

でも、たまに”静物画(Still-life)”を無性に観たくなる時があるのです。

 

これまで色々と絵画を観てきた私が、静物画の魅力や楽しみ方について話していこうと思います。

 

目次

・私が真っ先に思い浮かべる静物画家を1人挙げます!
・静物画って何?意味を解説!
・静物画の魅力を私なりに考察します。

 

 

私が真っ先に思い浮かべる静物画家を1人挙げます!

どれでしょう?

現在では静物画というジャンルも、それなりに評価されてはいるようです。でも歴史的に見ると、静物画が高く評価された時期ってほとんどない。仮に”あなたが知っている静物画家は誰??”と問われたれたら…、一体どんな画家を思い浮かべますか?

おそらく多くの人は、名前自体挙がってこないかもしれませんね。

 

は、私の場合はどうかというと、あまり知られてはいないでしょうけど、真っ先に思い浮かぶ画家が一人!います。

アンリ・ファンタン=ラトゥール(Henri Fantin Latour)です。

19世紀頃に活躍していたフランスの画家で、主に静物画や人物画(肖像画)などを制作しました。人物画や版画(リトグラフ)も制作しているので、静物画家というにはちょっと違うかもしれませんが。ただ花の静物画で高い人気を得ていたので、私にとっては”静物画を代表する画家”と言っても過言ではないのです。

 

「静物(水差し、花、果物)」(1865年)アンリ・ファンタン=ラトゥール

「静物(水差し、花、果物)」(1865年)アンリ・ファンタン=ラトゥール

・59.1×51.5cm、カンヴァスに油彩、国立西洋美術館所蔵

現在は上野の国立西洋美術館に所蔵されている作品で、「常設展」でもよく目にする作品です。まさに目の前の物を、そのままカンヴァスに描いた!と言うような画風で、本当にリアルで写実的です。美術のイロハを知らない人でも、純粋にスゲ~と魅入る作品だと思うので、そういう意味でも絵画初心者でも楽しめる作品だと思います。

 

 

れにしても、なぜこれまで静物画があまり評価されてこなかったのか?

もちろんそれなりの理由があるからです。

歴史的に美術アカデミーが推奨していたのが宗教画や歴史画だったこともあり、なかなか静物画が高い地位を得る事がなかったから。だから静物画を代表する画家も台頭してこなかったわけです。仕方がなかったと言えばそれまでだけど。

 

「果物籠」(1595‐1596年)ミョケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

「果物籠」(1595‐1596年)ミョケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

・67.5×54.5cm、カンヴァスに油彩、アンブロジアーナ絵画館所蔵

それでもカラヴァッジョ(Michelangelo Merisi da Caravaggio)は、静物画でも高い評価を受けた画家だったわけで、そう考えたらいかに凄い画家だったのかが分かりますよね。カラヴァッジョはバロック期に活躍した画家で、この「果物籠」は1595年頃に描かれた作品です。おそらく歴史を見渡しても、カラヴァッジョほど高い次元で写実的に絵を描いた画家っていないと思っています。

まさに生きた静物画!と言った感じでしょうか。実際に作品を観れば、その写実性の高さと画力には驚くでしょうね。

 

 

静物画って何?意味を解説!

何が見所!?

さて、今さらと言えば今さらですが、ここで”静物画”というジャンルについてちょっと話してみようと思います。

 

静物画…、つまり”静かなる物の画”という意味になると思います。でも調べてみると、別に”動かない物”とは限らないのです。参考に、私がよく使う辞書の解説を挙げてみます。

 

静物画(せいぶつが) still Life(英)、nature morre(仏)、Stil-leben(独)

西洋画の一ジャンル。みずから動かない生命のない物、例えば草花、果実、死んだ魚や鳥、楽器、書物、食器などを描いた絵画。それ自体では静止しているが、それらの配列は美的効果の見地から画家によって自由に動かされる。また生き物もまったく排除されるのではなく、脇役として描かれることもある。静物は古代ローマの壁画に部分的に現われるが、中世ではほとんどみられず、ようやく14世紀末から装飾的な添え物として、あるいは宗教上のアレゴリーの要求から描かれだした。16世紀に至って死んだ鳥や魚が単独に描かれるが、17世紀のオランダ、フランス、スペイン(⇒ボデゴーン)などにおいて細密描写の恰好の対象となり、独立した画題として確立される。18世紀にはシャルダンが出て繊細な色彩で扱いアンチーム(親密)な効果を高め、19世紀には最も一般的な題材となった。

・出典元:新潮「世界美術辞典」

 

基本は動かない物を描いた絵画なんでしょうけど、でも色んな意味で動きの伴った絵画でもあるわけです。

もちろん、生きている静物が描かれている場合だってあります。それから、上の解説で”配列は美的効果の見地から画家によって自由に動かされる。”とある様に、画全体のバランスや色の美を考慮し、画家が自由に物の配置を決めているわけですね。

 

「花とサクランボ、アーティチョーク、グラスの静物」(1627年)フアン・バン・デル・アメン

「花とサクランボ、アーティチョーク、グラスの静物」(1627年)フアン・バン・デル・アメン

・81.5×110.5cm、カンヴァスに油彩、プラド美術館所蔵

明らかに、構図というか物の配置が意図的に感じませんか?

目の前にあった対象物をそのまま描いているわけじゃなく、芸術的観点から配置や構図を決め、意図的に動かしている。ある意味画家のセンスが問われるのも静物画のオモシロさでしょうか。

 

 

 

静物画の魅力を私なりに考察します!

展覧会

先ほど静物画の意味でも解説しましたが、静物画は芸術的観点から配置や構図を決めている。つまり静物画は画家のセンスが問われるジャンルだろうと思うのです。

 

画家のセンスが問われる!!

この言葉は大きなポイントでしょうね。

普通に考えてこういった構図や配置って偶然とは思えない。本当に綺麗すぎるのです

「テーブルの上の花と果物」(1865年)アンリ・ファンタン=ラトゥール

「テーブルの上の花と果物」(1865年)アンリ・ファンタン=ラトゥール

・60.0×73.3cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵

花の色味を活かすために、あえて背景を暗くしているかもしれないし。洋梨と桃の間にブドウを意図的に加えている感じにも見える。確かに物凄く整った美しい作品なんだけれど、でもよ~く見ると不自然にも感じませんか??

色の配列や全体の構図にバランス、どうやったらイイ絵が仕上げられるか??画家なりの試行錯誤が作品から読み取れる。静物画ならではの醍醐味だと思います。

 

「木製テーブルの上の静物」(17世紀頃)ヤン・ダーフィッツゾーン・デ・ヘーム

「木製テーブルの上の静物」(17世紀頃)ヤン・ダーフィッツゾーン・デ・ヘーム

・49.0×64.0cm、カンヴァスに油彩、プラド美術館所蔵

もちろん、作品から画家のセンスを読み取るのも面白いですが、純粋に作品に向き合えるのも最大の魅力!!静物画は静かなる物を描いた画ですが、見る側にとっては静かなる気持ちにさせてくれる芸術なわけです。(私が言うのもなんですが、ナウい言葉ですね。^^)

 

展覧会
たまには、落ち着いた気持ちになりたい。心穏やかになりたい。

こういった気分に浸れるのも静物画ならではの醍醐味だと思います。どうでしょう??ふと、静物画を見たくなりませんか??

 

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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