- 2019-12-14
- Artist (画家について), Artwork (芸術作品)
- コメントを書く
日本でエル・グレコの作品を見れる美術館は、今のところ東京の”国立西洋美術館”と岡山の”大原美術館”の2か所しかありません。
エル・グレコと言えば、日本でもそれなりに知名度がある画家です。個性的な構図と映える色彩が特徴的で、一度見たら忘れられないインパクトもある。しかも現在多くの作品が残っているのに、なぜか日本では2点しかないのです。おそらくエル・グレコが描いた作品の多くが宗教画だったのも大きな理由だろうと思います。
個性的で中毒性のある作品を描く画家”エル・グレコ”。ぜひチェックしてほしいと思います。
日本で観れる”エル・グレコ”の作品2点を紹介!
観た瞬間すぐにエル・グレコと分かるほど個性的!
ここまでインパクトある作品を描く画家って、他にはなかなかいないでしょうね!日本にある2つの作品も宗教画ですが、ぜひ目に焼き付けて欲しい作品です。
これは上野にある国立西洋美術館に所蔵されている作品「十字架のキリスト」。
引き伸ばした様な人体と、一度見たら忘れられない存在感と躍動感!まさに“エル・グレコ”!と言った感じですね。 国立西洋美術館は主に松方コレクションを中心に、宗教画や印象派、ロダンの彫刻など約6,000点の作品を所蔵しています。もちろんこの「十字架のキリスト」も松方コレクションの1つ。
国立西洋美術館の”常設展”は、度々展示作品を入れ替えますが、このエル・グレコの作品は常時展示しているイメージがあります。ぜひ上野に行った際は「常設展」に行って見てほしいと思います。ちなみに公式サイトで展示作品の確認ができるので、チェックしてから行くのもイイと思います。
・109.1×80.2cm、カンヴァスに油彩
そしてもう1点が岡山県倉敷市の大原美術館に所蔵されている「受胎告知」。
この作品もエルグレコらしい独特な色彩が特徴的で、赤と黄色の色合いは本当に目を惹きますね! 現在この「受胎告知」は大原美術館を象徴する作品の1つ。渡欧中だった児島虎次郎氏が、パリの画廊に売り出されているのを偶然発見したの出会いだったそうです。「受胎告知」は宗教画でも頻繁に描かれる題材で、キリストの誕生を語る上でも重要なエピソードです。それが日本の倉敷市の美術館にあるって、ある意味“奇跡”と言っても過言ではないと思います。
ちなみに大原美術館は1930年に開館した日本初となる西洋美術館だそうです。東京の国立西洋美術館が開館したのが1959年なので、それよりも約30年も早かったわけですね。
さて、ここで“受胎告知”について簡単に解説したいと思います。
”受胎告知(The Annunciation)”とは?
新約聖書に書かれているキリスト教にとって重要なエピソード。
天使ガブリエルが舞い降りてきて、
処女マリアに精霊によってキリストを妊娠した事を告げる出来事。(参考)マタイの福音書の一部(第1章18節~)
18節:イエス・キリストの誕生は次の通りです。
マリアはヨセフと婚約していましたが、マリアは結婚する前に精霊によってみごもったのです。19節:ヨセフは神の教えを守る正しい人だったので、マリアとの婚約を破棄しようと決心したのです。
20節:ヨセフがこの事で悩んでいた時、天使が夢に現れて言いました。
「ダビデの子ヨセフよ、ためらわないでマリアと結婚しなさい。マリアは精霊によってみごもったのです。」と。21節:「彼女は男の子を産むだろう。そしてその子をイエスと名付けなさい。その子こそ人々を罪から救う者である」と。
ヨセフは眠りから覚めた後に、マリアと結婚し妻と迎えたのです。そして子が産まれ”イエス”と名付けたのです。
この受胎告知は絵画でも頻繁に描かれる題材です。ぜひこの機会に押さえてほしいと思います。
日本には2点しかないエル・グレコ作品ですが、企画展では頻繁に展示されたりします。ここでは以前公開された作品を挙げてみたいと思います。
エル・グレコ「聖小ヤコブ(男性の頭部の習作)」1600年頃
これは国立新美術館で開催した「ブダペスト展」で観れた作品。
※この絵画展は2020年3月16日まで開催していました。
”聖小ヤコブ”というタイトルから、キリストの十二使徒を描いた作品なのが分かると思います。実はこの「聖小ヤコブ(男性の頭部の習作)」という作品は、当初は”エル・グレコの自画像ではないのか??”と言われていたそうです。
この「自画像」と見比べると分かりますが、耳や目元、顔立ちがエル・グレコに非常に似ているのが分かると思います。実はこの自画像は「聖小ヤコブ」の制作過程で描いた習作とされているから。似ているのも当然かもしれませんね。
画家”エル・グレコ”の作品の特徴
エル・グレコはマニエリスムの画家と言われますが、ここで”マニエリスム”について話したいと思います。
特に分かりやすい作品と言えば、
この作品が一番かと思います。
エル・グレコ「ラオコーン」(1610‐1614年頃)
この独特に引き伸ばされた人間の身体。
まさにエル・グレコらしいと思える1枚で、
マニエリスムを説明するには最適な作品だと思います。
”マニエリスム(Mannerism)”とは?
…ルネサンス後期の芸術運動。(盛期ルネサンスとバロックの間)
一言で言うなら”非現実的な人体描写”が特徴。引き伸ばした様な身体と
大げさな動きやポーズの描写。
この作風から一時期ミケランジェロの模倣者とも言われていました。”型にはまっていて、創造性もない絵画”と評価され、
”絵画の衰退を意味する言葉”とも言われていました。それが20世紀に入ってから…
マニエリスムは再評価される事になったのです。
・・・
エル・グレコ「神殿の清め」(1600年頃)
ルネサンス期に活躍した3大巨匠の一人
ミケランジェロの作品に似ている様な~と思いませんか?
この引き伸ばした様な身体と大げさな動きやポーズ。
ミケランジェロの模倣と言われるのも分かる気がしますね。
エル・グレコ「第五の封印」(1608‐1614年)
でもエル・グレコの場合は、
そんなマニエリスムの特徴もありながら、
独自の色彩感覚が特徴的の様に思いますね。
”一目見ればエル・グレコと分かる!”
そんな良くも悪くも”尖った感”があるのが
このエル・グレコの魅力だと思います。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。