「静物画」は絵画初心者でも、誰もが皆楽しめる!

美術を楽しむ

 

ここ最近”静物画”をメインにした展覧会って、あまり見かけないと思いませんか?

 

日本では風景画(特に印象派)や現代アートが好まれる傾向にある様で、そう考えれば仕方がない事です。でも個人的に静物画はおススメなジャンルだと思っています。

 

というのも、私の持論にもなりますが、絵画初心者でも充分楽しめるから!

 

 

先日「ゴッホと静物画」展を観てきて、改めて「静物画」の魅力を再確認できました。今回はせっかくの機会なので、静物画の意味や歴史的背景、楽しみ方について話していこうと思います。

 

目次

先日、ちょっと嬉しい話がありました。
そもそも静物画って何だろう!?
 1、静物画の意味について
 2、17世紀のオランダが大きなターニングポイント

静物画が初心者でも楽しめる理由は?
実は静物画は、歴史画や寓意画にも通じる部分があります。
さっそく、静物画を観に行こう!

極力絵画初心者の人でも分かる様に解説しているので、ぜひ気楽に読んでもらえると幸いですね。

 

 

 

先日、ちょっと嬉しい話がありました。

SOMPO美術館で開催の「ゴッホと静物画」展

SOMPO美術館で開催した「ゴッホと静物画」展に行ってきた時の話です。

当初私の予想では、”静物画”がメインの展覧会なので、そこまで人はいないだろうと思っていました。日本人が好きな絵画って、風景画や現代アートだろうと思っていたからです。

 

そしたら、驚き!!

予想以上の賑わいだったのです。確かにゴッホが主役というのもあるでしょうけど、それにしても静物画の展覧会でここまで混むとは!!ハッキリ言って、甘く見ていた自分が恥ずかしいですね。

そして同時に、意外にもビギナー(絵画鑑賞初級者)らしき人が多い事にもビックリ!とにかく、皆がそれなりに楽しんでいた様で、こういった光景を目に出来たのは良かったですね。^^

つくづく静物画は初心者でも、誰でも楽しめる絵画だ!と再確認できたわけです。

 

 

 

そもそも静物画って何だろう!?

解説

今さら「静物画」について説明する必要はないかもしれないけど、でも実は超大事だと思っています。

”静物画”という一つの単語には、西洋画の歴史も詰まっていると思うから。

言葉って本当によく出来ていて、すべてが凝縮されているわけですね。

 

1、静物画の意味について

Dictionary

静物画」を超簡潔に説明するなら、”静止した花や果物、野菜などを描いたもの”です。

 

もこれで終わってしまっては勿体ない。

もうちょっと深堀りしていこうと思います。先ほどもちょっと触れましたが、「静物画」というワードには、西洋画の歴史まで凝縮されていると思うからです。

 

「ケーキとワイン、ビール、ナッツのある静物」(1637年)ウィレム・クラースゾーン・ヘーダ

「ケーキとワイン、ビール、ナッツのある静物」(1637年)ウィレム・クラースゾーン・ヘーダ

・44.5×69.5cm、板に油彩、ワルシャワ国立美術館所蔵

例えば静物画は英語では”still life”と書きます。ニュアンス的には”生命が続いている”という意味合いになるかと思います。つまり果物や植物、動物の静止した状態を描いたという意味に一番近い感じがします。

そういう意味では、実に上手く表現した言葉だな~と思いますね。

 

してフランス語では”nature morte”と書きます。

意味は死んだ自然という意味になる。

「孔雀と果物、ザリガニと鳥の静物」アドリアーン・ファン・ユトレヒト

「孔雀と果物、ザリガニと鳥の静物」アドリアーン・ファン・ユトレヒト

・116×152.5cm、カンヴァスに油彩、個人蔵

実はフランスなどの西洋絵画史において、静物画の地位(格付け)は非常に低かったという歴史があります。

専門的な言葉で説明するなら”絵画のヒエラルキーにおいて、下位に位置づけられていた”となります。
※ヒエラルキーは、階層や階級(分かりやすく言えば格付け)と言った意味になります。

つまり、静物画は格の低い絵画と見なされていたのです。

 

2、17世紀のオランダが大きなターニングポイント

オランダ

長い間「静物画」は格の低い絵画として見なされていましたが、17世紀頃を境に一変します。

その大きなターニングポイントが17世紀のオランダだと言われています。

 

当時オランダは黄金時代と呼ばれていて、経済的にも文化的にも最も栄えていました。当然画家も多く輩出しています。例えばレンブラントやフェルメールはその代表格になるでしょうか。そして経済的に豊かになってきた事で、一般市民も芸術に興味を持つようになった。

でも芸術に興味を持つようになったとはいえ、絵画の知識はあまりなかった様です。そんな一般市民にとって最も親しみやすい絵画と言えば、風俗画や静物画だった。歴史画や寓意画の様に意味や背景を知らなくても、純粋に観ているだけでも楽しめるからですね。

 

”静物画”が多く描かれるようになった背景には、当時の社会背景が大きな理由というわけです。

 

「静物」(1625年頃)ピーテル・クラース

「静物」(1625年頃)ピーテル・クラース

・48×76.9cm、カンヴァスに油彩、シカゴ美術館所蔵

れに画家たちにとっても、静物画は自分たちの技術を示す最適なジャンルだったというのもあるようです。

宗教画や歴史画は描かれる題材が重要ですから、それなりに高く評価されたという背景もあった。でも静物画は目の前の対象物を描いたものに過ぎなかったため、純粋に絵の上手さに目が向けられた。

画家たちが自分たちの技術を見せつける手段として”静物画”は最適だったのだろうと思います。

 

ここまでの話で、静物画が絵画初心者でも楽しめる理由が、何となく分かってきませんか??

 

 

 

静物画が初心者でも楽しめる理由は?

なるほど!(We See!)

ここまでの話を聞いていれば、今さら説明は不要かもしれないですね。

静物画は描かれている意味が分からなくても楽しめる!

 

宗教画や歴史画をそれなりに楽しもうと思ったら、意味や背景を知らないといけません。

でも静物画は目の前の対象物を描いた作品ですから、純粋に絵の上手さを楽しめる!のが大きい。

別に聖母子や受胎告知といった宗教的知識がなくたっていいわけです。純粋に作品を観て、絵の上手さを味わうだけで充分。

 

「花と大理石の台座のある静物」(1787年)ヘーラルト・ファン・スパーンドンク

「花と大理石の台座のある静物」(1787年)ヘーラルト・ファン・スパーンドンク

・100×81cm、カンヴァスに油彩、個人蔵

この絵って本物みたいに上手いな~、まるで生きているみたい!

この感想を持てただけでも、絵画初心者にとっての美術鑑賞は大成功!だと思っています。

実際に17世紀頃のオランダの静物画はどれも上手いです。まるで写真の様です。

ありきたりの言葉になってしまいますが、凄い!としか表現のしようがない。美術の知識がなくても、ここまで本物らしく描かれたら、そりゃあ凄い!としか言えませんよね。^^

 

 

 

実は静物画は、歴史画や寓意画にも通じる部分があります。

「ヴァニタス」(1630年)ピーテル・クラース

「ヴァニタス」(1630年)ピーテル・クラース

・40×60.5cm、パネル(木版)に油彩、クレラー=ミュラー美術館所蔵

これはオランダ黄金時代に活躍した画家ピーテル・クラース(Pieter Claesz.)の作品です。

静物画は絵画初心者でも純粋に楽しめる!これは静物画の大きな魅力だろうと思っています。

 

して、もう一つの大きな魅力として、静物画は歴史画や宗教画へ踏み出すための第一歩になります。

当時「静物画」は格が低いジャンルだったため、画家たちは”静物画の格を挙げたい!”と思っていた。そういった背景から、静物画に寓意的な要素を組み入れていったわけです。それが「ヴァニタス」という静物画でした。

 

「花と髑髏のある静物」(1642年頃)アドリアーン・ファン・ユトレヒト

「花と髑髏のある静物」(1642年頃)アドリアーン・ファン・ユトレヒト

・67×86cm、カンヴァスに油彩、個人蔵

”ヴァニタス”は人生の儚さを意味する寓意的静物画です。

宗教画や寓意画でよく描かれる髑髏は、”死”を象徴するモノとされています。髑髏などの寓意的な要素を加える事で、静物画に宗教画の意味を持たせたわけです。それに当時から花の静物画はよく描かれていましたし、一般的に花の一生は短い言われていますしね。

ヴァニタスで髑髏や花が一緒に描かれるのは、共に”死”を象徴するモノだからです。

 

私が思う醍醐味

ひとえに「静物画」とはいっても、目の前の対象物を描いただけの絵画ではない。

ヴァニタスの様に寓意的要素を含んだ静物画だってあります。誰でも楽しめて、しかも宗教画や寓意画にも通じる第一歩にもなる。「静物画は実に奥が深くて、素晴らしい絵画だというのが分かってもらえたかと思います。

 

 

 

さっそく、静物画を観に行ってこう!

美術館の前にチケット購入

静物画がメインの展覧会は、あまりありませんが、でも全くないという訳ではない。今回の話を書こうと思ったきっかけは、SOMPO美術館で「ゴッホと静物画」展ですが、他にも私が良くいく国立西洋美術館でも静物画を観る事は出来ます。

 

まずは、

ゴッホの名画「ひまわり」も見れる企画展「ゴッホと静物画」展ですが、他にも私が良くいく国立西洋美術館でも静物画を観る事は出来ます。

ゴッホと静物画 ー 伝統から革新へ

・会期:2023年10月17日(火)~2024年1月21日(日)まで
・場所:SOMPO美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1)

・時間:10:00~18:00(11月17日(金)と12月8日(金)は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
・休館日:月曜日、年末年始(12月28日~1月3日)※2024年1月8日は閉館

・観覧料:当日券一般2,000円(事前購入は1,800円)、当日券大学生1,300円(事前購入は1,100円)

 

 

う一つ挙げるとすれば、上野の国立西洋美術館になります。

西洋画の王道とも言える美術館だけに、「常設展」でも静物画を観る事が出来ます。

国立西洋美術館の常設展

・場所:国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
・時間:9:30~17:30(金曜・土曜は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで

・休館日:月曜日、年末年始(12月28日~1月1日)
 ※月曜が祝日又は祝日の振替休日になる場合は開館し、翌平日が休館

・常設展の観覧料:一般個人は500円(団体は400円)、大学生個人は250円(団体は200円)
 ※企画展は別途料金が必要になります。

 

「果物籠のある静物」(1654年頃)コルネリス・デ・へーム

「果物籠のある静物」(1654年頃)コルネリス・デ・へーム

・44.5×72.5cm、板に油彩、国立西洋美術館所蔵

ただ展示替えにより見れる作品に違いは出てきますが、西洋画はしっかりと展示されると思うので、行った事のない人は一度行ってみるのもイイと思います。

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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