推しの伊藤若冲の画集!「若冲原寸美術館 100% Jakuchu!」

推しの一冊「若冲原寸美術館 100% Jakuchu!」

 

伊藤若冲の作品を、書籍で楽しむなら画集に限る!!と思っています。

 

本来なら美術館に行って間近で観るとか、実際に作品を購入してじっくり見るのが最高なんでしょうけど、伊藤若冲の様に人気の画家となるとそれは難しい。そうなると、限られた選択肢となったら”本”になってきます。

 

今回は私の持っている伊藤若冲を存分に楽しむ一冊

画集編”という事で若冲原寸美術館 100% Jakuchu!の私的レビューを交えながら、本の紹介をしていきたいと思います。

 

 

「若冲原寸美術館 100%!」は、まさに実物!原寸大!!

推しの一冊「若冲原寸美術館 100% Jakuchu!」

若冲原寸美術館 100% Jakuchu!は、名前の通り原寸で作品が載っている画集です。若冲の代表作「動植綵絵」を本物さながらで味わえる!のが最大の魅力でしょうか。ほとんどの画集は、作品全体像が載っているものばかりで、100%原寸大はおそらく他にはないだろうと思います。というか美術館に行っても、ここまで間近に迫った感で観れる事はないので、ある意味唯一無二な画集だろうと思います。

 

「雪中錦鶏図(動植綵絵)」(宝暦11‐明和2年頃)伊藤若冲

「雪中錦鶏図(動植綵絵)」(宝暦11‐明和2年頃)伊藤若冲

・142.3×79.5cm、絹本着色 一幅、宮内庁三の丸尚蔵館蔵

これは「若冲原寸美術館」に載っている動植綵絵雪中錦鶏図(せっちゅうきんけいず)です。雪の積もった檜にとまる2羽の色鮮やかな錦鶏(きんけい)が目を惹くと思います。

「動植綵絵」30幅はどれもが実に色鮮やかで、色彩の極みが見事に表現されているものばかりです。何より装飾性に富んだ美しさは見事としか言いようがないわけですが、これらが原寸で観れる!のは本当にありがたいですね。作品のサイズが142.3×79.5cmなので、もちろん1作品が1ページで収まりきれるわけもなく、何ページにもまたがって1つの作品が分割して載っている感じになっています。

 

錦鶏(キンケイ)
※参考として錦鶏(キンケイ)の画像を挙げてみました(public domain画像を使用)

ちなみに錦鶏について調べてところ、山地に生息するキジ科の鳥で、オスは黄色を基調とした派手な色彩をしている鳥。中国では画に描かれる事が多いポピュラーな鳥ですが、この「雪中錦鶏図」の様に降り積もる雪と共に描かれるのは珍しいそうです。装飾的で美しい画を描きたい!という若冲のアレンジだと思いますが、この様に”美”の融合が原寸で観れるのは、実にタマラナイ部分ですね。

 

 

 

原寸で観る前に、知っておきたい若冲作品の特徴とは!?

何が凄いの!?

せっかく「若冲原寸美術館」で作品を観るなら、若冲作品の特徴を知らないともったいないと思います。特徴というか、鑑賞のポイントと言った方が正しいでしょうけど、若冲作品を私的に表現するなら技法の巧みさ!に尽きると思います。

裏側が透けて見える繊維の性質を利用した裏彩色、それから絵具と染料の巧みな使い分け。技法を挙げればキリがないけれど、こういった”技法の巧みさ!”は、作品に迫って観察しないと分からない部分だからです。今回私が100%原寸の画集を紹介した理由には、若冲の技法が大きく関わっているわけですね。

 

1、原寸で見たいポイント! 裏彩色

さて、裏彩色は日本では伝統的な技法の一つ。平安時代には仏画を中心に使用されていた技法だったそうです。「動植綵絵」は絹に描かれているのが特徴で、絹の繊維の隙間から透けることを利用して、絵を表だけでなく裏からも描く事で和らいだ色合いが見えてくるというもの。

「雪中鴛鴦図(動植綵絵)」(宝暦9年)伊藤若冲

「雪中鴛鴦図(動植綵絵)」(宝暦9年)伊藤若冲

・142.0×79.8cm、絹本着色 一幅、宮内庁三の丸尚蔵館蔵

例えば、この雪中鴛鴦図(せっちゅうえんおうず)では、雪に裏彩色の技法が使われています。表からの吹き付けによって描かれた雪は、はっきりと雪が見て取れる。対して裏から吹き付けた雪は、表から見るとうっすらと透けて見える。このかすかな色味の違いで作品に奥行きが生まれてくるわけですね。このちょっとした雪の描写にも、手を抜くことなく徹底してこだわっているのが本当に凄い!

作品の色味や奥行きも、やっぱり原寸で見てこその醍醐味だと思っています。もちろん画集なので、印刷的な問題でどこまで再現できているかは分かりませんが、少なくとも原寸で観れるのは、やっぱりタマラナイですね。^^

 

2、原寸で見たいポイント! 絵具と染料の塗り分け!

若冲の作品を細部まで観察すると、1つ1つに一切の手抜きがないのが分かってきます。葉っぱ1枚1枚を見ても、それぞれ違った色味と濃淡がある。”ここまでこだわる必要があるの!?”と思うくらい、一切の妥協がないのです。

「紅葉小禽図(動植綵絵)」(明和2‐3年頃)伊藤若冲

「紅葉小禽図(動植綵絵)」(明和2‐3年頃)伊藤若冲

・142.3×79.7cm、絹本着色 一幅、宮内庁三の丸尚蔵館蔵

この紅葉小禽図(こうようしょうきんず)には、計570枚のカエデの葉が描かれているそうです。でもそれぞれのカエデは、色味など微妙に違うのが分かりますよね。もちろん裏彩色の技法による効果もありますが、絵具や染料の厚みを変えた塗り分けも大きなポイント!染み込む性質を活かした染料独特な色味と淡さ。葉っぱ1枚1枚に、ここまでこだわる必要があるのか??と思うほどです。

絵具なのか?染料なのか?といった違いを観察するというよりも、カエデの葉の微妙な色味や深みを感じるだけでも楽しいと思います。これも原寸大ならでなの醍醐味だと思います。

 

3、原寸で見たいポイント! 圧倒的な細密描写

若冲と言えば、徹底的を通り越した圧倒的な細密描写も魅力です。誰が見ても凄い!としか言いようがない描き方です。「動植綵絵」には、鶏や鶴、孔雀など様々な鳥が登場してきますが、どの鳥にも共通するのが羽の細密過ぎる描写です。

「老松白鳳図(動植綵絵)」(明和2‐3年頃)伊藤若冲

「老松白鳳図(動植綵絵)」(明和2‐3年頃)伊藤若冲

・141.8×79.7cm、絹本着色 一幅、宮内庁三の丸尚蔵館蔵

この老松白鳳図(ろうしょうはくほうず)でも、細工の様に描かれた白い羽の描写は必見です。物凄い細かく描かれているのが、上の画像からも分かると思います。これが原寸で観れるわけですから…、ちょっと興奮してきませんか??

西洋画では主役となる対象物は細密に描き、奥にあるものはあっさりと描いて遠近感や奥行きを表現したりします。でも若冲に限っては、すべてが主役の様に徹底して細密に描いています。もちろん濃淡で奥行きを表現したりと若冲なりの表現方法は見て取れますが、これまでの遠近表現の常識をイイ意味で裏切っているのも特徴でしょうね。

一切の手抜きがない若冲の彩色画を、原寸大で味わえる!「若冲原寸美術館」の一番の醍醐味だと思います。

 

Book Review

若冲の良さが分かってくると、自ずと作品を間近でじっくり観察したくなってくるのが美術好きの性。今回紹介した「若冲原寸美術館 100% Jakuchu!」は、若冲の良さを味わいたい!そんな人に最適な一冊だと思います。

ぜひ、参考にしてほしいと思います。

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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