ターナーとカナレットの繋がりが垣間見れる一枚「溜息橋で制作するカナレット」

SOMPO美術館

 

イギリスを代表する風景画家と言えばターナーが真っ先に思い浮かぶと思います。

 

19世紀頃、つまりロマン主義を代表する画家で、大気や光の具合を描かせたら天下一!と称される程。

私も好きな画家なので、先日の「カナレット展」でターナーとの繋がりが垣間見れるエピソードが紹介されていたのは非常に嬉しい限りでした。

如何せん本物の作品展示がなかったのは残念ですが、それでもエピソードは非常に興味深いものだったのです。

 

「溜息橋、パラッツォ・ドゥカーレ、ドガーナ:制作するカナレット」(1833年)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

「溜息橋、パラッツォ・ドゥカーレ、ドガーナ:制作するカナレット」(1833年)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

・51.1×81.6cm、カンヴァスに油彩、テート美術館所蔵

作品名は「溜息橋、パラッツォ・ドゥカーレ、ドガーナ:制作するカナレット」。

内容的には結構有名なので、知っている人も多いと思います。もちろん私も知ってはいましたが、それでも今回の様にカナレットと関連付けて紹介されると、妙に興味を惹かれてしまいますよね。^^

これはサン・マルコ広場周辺一帯をパノラマ的に描いた作品で、1833年のロイヤル・アカデミー展に出品されたもの。

パッと見はなんてことはない風景画に見えますが、実は画面左に興味深い人物が描かれているのが分かると思います。

 

「溜息橋、パラッツォ・ドゥカーレ、ドガーナ:制作するカナレット(detail)」(1833年)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

「溜息橋、パラッツォ・ドゥカーレ、ドガーナ:制作するカナレット(detail)」(1833年)ターナー

イーゼルを立てるカナレットの姿が描かれているわけです。
(ちょっと分かりにくいかもしれませんが、よ~く見ると分かると思います。)

以前の僕だったら、”へ~、そうなんだ。”で終わっていたかもしれないけど。現在の私なら、”コレってもしかして、カナレットへの敬意!?”と解釈してしまう。

 

なぜなら、ターナーという人物の性格をある程度知っているからです。

 

「カナレットとヴェネツィアの輝き」展の様子より
・「カナレットとヴェネツィアの輝き」展の様子より

実は専門家からすると、これは明らかにカナレットを意識しての事だそうです。

作品制作の過程から考えても、ターナーのカナレットに対する”オマージュ”の念を表わしていると。

つまり”オマージュ敬意”と言った感じでしょうか。

もしくはターナーの性格上、カナレットへのライバル心とも読み取れるそうです。

 

「自画像」(1799年頃)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

「自画像」(1799年頃)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

・74×58cm、カンヴァスに油彩、テート美術館所蔵

時代的には見るとターナー(1775‐1851年)カナレット(1697‐1768年)の後に生きた画家なので、直接的な接点はありません。でもターナーという人物の性格上、これは絶対にカナレットを意識していると言っても間違いないでしょう。

ターナーは偉大なる画家ではあるけれど、でも人間的には非常に癖がある事で有名でした。

性格的に内向的で、人との付き合いも苦手だったそうです。

また自画像を美化して描いている点からも、自身に相当なコンプレックスがあったのは有名な話。展覧会においては、加筆する事も度々あったり。またライバル心剥き出しで、相手を強く批判した事もあったそうです。
(相当な負けず嫌いだったのは、コンスタブルとのエピソードからも分かりますよね。)

 

私の考え
コンプレックスの塊で自尊心の高いターナーが描いているわけですから。私の様な素人から見ても、”絶対にターナーはカナレットを意識している!”と。

 

だ、私の解釈としては、”カナレットへの敬意と思いたいですね。

ターナーはヴェネツィアという地を非常に愛していたし、そんな場所をカナレットは美しく描いていた。先人というか、先輩に対する敬意だろうと私は思うわけです。

実際はどういった想いで描いたかは分かりませんが、でもターナーはすでにこの世にはいませんからね。少なからず、作品を観て解釈してみるだけでもイイと思います。

解釈は人それぞれですから!

 

 

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