- 2025-4-21
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宗教画で描かれる題材に「聖トマスの不信(懐疑)」があります。
芸術に多少でも興味のある方なら、おそらく知っているでしょう。
十字架刑で亡くなったイエス・キリストの復活を印象付ける重要なエピソードでもあるからです。
今回はそんな”聖トマスの不信”について、私なりに分かりやすく解説していこうと思います。
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【 目次 】 |
”聖トマスの不信”について解説します!

「聖トマスの不信」(1601-02年頃)カラヴァッジョ
・107×146cm、カンヴァスに油彩、サン・スーシ宮殿所蔵
”聖トマスの不信”といえば、特に知られているのが”カラヴァッジョ”でしょう。
バロック期を代表するイタリアの画家で、後世に多大な影響を与えた事で知られています。
明暗技法と高い写実性、特にドラマチックな表現を特徴するカラヴァッジョですから、まさにピッタシな題材だろうと思います。

それでは肝心の”聖トマスの不信”について解説していこうと思います。
イエス・キリストは十字架刑で亡くなったのは誰もが知る話です。
それから3日後にイエス・キリストは復活し、弟子たちの前に姿を現しました。ただその場に弟子の一人”聖トマス”はいなかったのです。
他の弟子たちの話を聞いても、聖トマスはキリストの復活を信じようとしなかった。

「聖トマスの不信」(1621年)グエルチーノ
・カンヴァスに油彩、ザルツブルグ・レジデンツ・ギャラリー所蔵
それから1週間後キリストが現れ、聖トマスに「あなたの指をここに当てて、私の手を見なさい!それからあなたの手を伸ばして、私の脇腹に指し入れなさい!」と。
こうしてトマスはキリストの復活を信じたというわけです。
疑い深い聖トマスが信じるに至ったというわけですから、イエス・キリストの復活を強調するに最適なエピソードではないでしょうか。

ここで紹介した”聖トマスの不信”は、『新約聖書』の「ヨハネの福音書」第20章の24~29に記述されている話。
特に印象的な記述といえば、27節になるでしょうか…。
”そしてイエスはトマスに言われた。「あなたの指をここに付け、私の手を見なさい。あなたの手を伸ばして、私の脇腹にさし入れなさい。信じない者にならないで、信じる者になりなさい」と。”
・出典元:『新約聖書』の「ヨハネの福音書」第20章27節の日本語訳

中でも、私が特に印象的なフレーズがコチラ!
”信じない者にならないで、信じる者になりなさい”。
疑い深いトマスへの言葉なのだろうけど、今の私にも深く刺さってくるから不思議ですよね。
”聖トマスの不信”を描いた作品を見てみよう!

宗教画の面白い所は、画家の解釈に依存する部分が大きい点だと思っています。
風景画や静物画の様に、目の前のモノを描いたわけではなく、『聖書』の内容解釈が表現されているからです。
例えば、この作品はどうでしょう。

「聖トマスの不信」(1670年頃)ピエトロ・デラ・ヴェッキア
・115×166cm、カンヴァスに油彩、パラッツォ・ティエーネ所蔵
これはピエトロ・デラ・ヴェッキア(Pietro della Vecchia)の「聖トマスの不信」です。
イエスがトマスの手を持っている場面から、「ヨハネの福音書」20章27節を描いた様に見えます。
”あなたの手を伸ばして、私の脇腹にさし入れなさい。”と。

「聖トマスの不信(detail)」(1601-02年頃)カラヴァッジョ
・107×146cm、カンヴァスに油彩、サン・スーシ宮殿所蔵
対照的に、先ほど紹介したカラヴァッジョの「聖トマスの不信」では、トマスがキリストの復活を確信した瞬間が見事に表現されている感じです。
まさにドラマチックと言った所でしょうか。
画家による解釈に頼る部分が大きいという点で、宗教画はオモシロイと思うわけです。

「聖トマスの不信」(1543-1547年頃)フランチェスコ・サルヴィアーティ
・275×234cm、パネルに油彩、ルーヴル美術館所蔵
これはフランチェスコ・サルヴィアーティ(Francesco Salviati、1510年ー1563年)の作品。
当時の枢機卿ジョヴァンニ・サルヴィアーティから庇護を受けていたことから、パトロンの名を名乗る様になったと言われています。
本名はフランチェスコ・デ・ロッシ(Francesco de Rossi)で、ルネサンス後期に活躍した画家でした。

「聖トマスの不信」(1622年)ヘンドリック・テル・ブルッヘン
・108.8×136.5cm、カンヴァスに油彩、アムステルダム国立美術館所蔵
これはオランダ出身のヘンドリック・テル・ブルッヘン(Hendrick ter Brugghen)の作品。
見ても分かる通り”強い明暗技法”が特徴で、カラヴァッジョの影響を受けたのが垣間見れると思います。

「聖トマスの不信」(1620年代)ジョヴァンニ・セロディーネ
・128×160cm、カンヴァスに油彩、ワルシャワ国立美術館所蔵
「聖トマスの不信」は様々な画家が描いている題材です。
この絵はどこの場面を表現しているのか??
予想しながら、鑑賞するのもイイでしょうね。
これも宗教画の面白さであり、醍醐味だと思います。
というわけで、最後にこの絵を挙げてみようと思います。

「聖トマスの不信」(1656-1660年頃)マッティア・プレーティ
・187×145.5cm、カンヴァスに油彩、ウィーン美術史美術館所蔵
これはマッティア・プレーティ(Mattia Preti)の「聖トマスの不信」です。
カラヴァッジョに影響を受けた、俗に”カラヴァッジョスキ”の画家です。
非常にドラマチックに描かれた作品ではあるけれど、構図はカラヴァッジョと違うのが分かると思います。
特に印象的なのがキリストの表情と仕草。
さて、あなたはこの絵からキリストの心情をどう読み取りますか!?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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