- 2024-4-27
- Artwork (芸術作品)
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幕末から明治にかけて活躍した絵師の”河鍋暁斎”ですが、あなたはどういったイメージを持っていますか!?
おそらく、妖怪やお化けを描く画家というイメージが強いかと思います。
私の中では、現代版”水木しげる”という風に思っています。
妖怪などホラー系の絵を描くけれど、でもなぜか恐怖を抱く様な不気味さはない。場合によっては、愛らしさも感じられる画風が持ち味かな~と思っています。
そんな暁斎の作品の中で、一際目を惹く作品があります。
それが今回紹介する「松浦武四郎の涅槃図(北海道人樹下午睡図)」です。
現在静嘉堂文庫美術館で特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」で見れるので、興味のある方はぜひ参考に!
【 今回の話の流れ 】 |
なぜ「武四郎の涅槃図」が、オモシロイのか!?
・152.6×84.2cm、松浦武四郎記念館所蔵(三重県松坂市)
これは河鍋暁斎作「松浦武四郎の涅槃図(北海道人樹下午睡図)」です。
以前この絵の存在を知った時、さすがに”オオッ!!”と声を発してしまうほどでした。それほどまでに興奮してしまったわけです。
では、なぜ興奮するほどだったのか??
実は仏画という先入観をイイ意味で裏切ってくれたからです。
仏画は俗に仏教絵画で、西洋画でいう宗教画の様なもの。一般的に面白可笑しく描くものではないと思っています。
でも「松浦武四郎の涅槃図(北海道人樹下午睡図)」は、僕の仏画のイメージを覆すほどのユーモアが描かれているわけですね。
ここで参考として、”涅槃図”について説明したいと思います。
「涅槃図(ねはんず)」は、一言でお釈迦様が入滅する様子を描いたもの。
”涅槃(ニルヴァーナ)”が仏教の祖”釈迦”がこの世を離れる事を意味する。
ただ仏教において涅槃は、単なる”死”を意味するものではなく、生死を超えた悟りの境地と言われています。
仏教の最終目標は、苦しみから解放され安らかな世界にたどり着く事で、涅槃はまさにこの世界を指していると言われています。
この意味が分かると、涅槃図が仏画においていかに重要かが分かると思います。
では、「松浦武四郎の涅槃図」はどうでしょう!?
よ~く目を凝らして見て下さい。
普通なら絵の中央に描かれるのは、”お釈迦様”になるはず。でも描かれているのは、松浦武四郎という人物なのです。
仏画において”涅槃”は非常に重要なもので、本来なら面白可笑しく描くものではないと思うのです。
それにも関わらず、ここまでユーモアを交えて描くって…。
確かに暁斎の生い立ちを見ると、”異端児”という名がふさわしい画家ですから、暁斎らしい!とも言えます。逆に暁斎だからこそ、許される画風なのかもしれないですね。
ちなみに「武四郎の涅槃図」は、松浦武四郎が64歳の時(明治14年)に、河鍋暁斎に依頼して描いてもらったもの。
松浦が”自分を釈迦に見立てて描いてほしい”と依頼し、そして暁斎が約5年の歳月をかけて制作した作品だったのです。元々2人は交友関係にあった仲でしたから、完成に掛かった時間などを考えると、関係性の深さを感じますね。
私の解釈にはなりますが、松浦は自分の終活を考えて依頼したのだろうと思っています。
見た目は非常にユーモアで、ある意味仏画に反する画かもしれない。
でもこの絵によって武四郎が救われたと考えたら、「武四郎の涅槃図」も間違いなく仏画と言っても間違いないでしょうね。
ところで、松浦武四郎って誰なのだろう?
実のところ私は「武四郎の涅槃図」の存在を知るまで、松浦武四郎という人物については知りませんでした。
つくづく歴史上の人物を知らない自分に呆れてしまいますね。
(学生時代にちゃんと勉強しておけばよかったな~と。)
ちなみに私の調べてところだと、松浦武四郎は「北海道」の名付けの親と言われている人物です。
松浦武四郎は1818年(文化15年)生まれ、1888年(明治21年)没。
江戸時代末期から明治時代にかけて生きた人物。探検家、冒険家で知られ、別名”北海道人”と呼ばれています。
松浦が生きていた頃の蝦夷地(北海道や周辺の島々)は、自然豊かな土地だったそうで、現在の様に道も整備されていなかった。現地に住むアイヌ民族の協力を得ながら、蝦夷地を調査、探検したそうです。
そして「北加伊道(後に北海道)」と命名したとの事。
現在の北海道があるのも、松浦武四郎のお陰と言っても過言ではないわけです。
一つの絵をきっかけに、歴史上の人物”松浦武四郎”について知る事が出来る。改めて、美術作品って素晴らしいな~と思いますね。
現在”静嘉堂文庫美術館”で特別展『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎』展が開催しています。
ぜひ、この機会に観てみるのもイイかと思います。
【 『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎』展の開催概要 】 ・会期:2024年4月13日(土)~6月9日(日)まで |
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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