- 2023-4-24
- Impression (絵画展の感想)
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先日”静嘉堂文庫美術館”で開催の「明治美術狂想曲」を観てきました。
すでに終了してしまった特別展「明治美術狂想曲」ですが、個人的にはおススメな美術展だと思っています。そこまで大規模ではなかったですが、内容は実に濃く見所満載!実際に行ったからこそ良かったと言える感想ですね!
今回の記事では、私の感想レビューや”私のおススメ鑑賞方法!”にも触れています。今後作品が展示した際の大きな参考にもなると思っています。そんなわけで、参考レビューとして見ていただければ幸いですね!
【 明治美術狂想曲 】※終了しています。
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「明治美術狂想曲」というタイトルからして、明治時代の美術が中心に展示されていた展覧会でした。ある程度美術好きなら分かると思いますが、日本美術の大きなターニングポイントは明治時代だと思っています。
例えば洋画家”黒田清輝”もそうですし、重要文化財の「龍虎図屏風」を描いた”橋本雅邦”も明治時代に活躍しています。両者ともにその後の日本美術を支えた立役者でもあるわけで、そう考えたら絶対に押さえてほしい人物!!
それでは、見所を交えレビューしていこうと思います。
早速、橋本雅邦の作品を挙げてみますが、これは今回の目玉作品になっている傑作!
・(各)縦160.5×横369.5cm、絹本着色 六曲一双、静嘉堂文庫美術館所蔵
右隻に描かれているのが”龍虎図”の龍の部分です。稲妻と波しぶきの迫力!そして龍の厳かな感じが何とも印象的ですよね。画像からでも伝わるくらいですから、実際に本物を観たらより迫力満載だと思います。
右隻「龍図」の、私的おススメの鑑賞方法!
早速ですが橋本雅邦の「龍図」を観る時の、私のおススメ鑑賞方法をお話したいと思います。
画像では平面にしか見えませんが、実際は屏風なので交互に折り曲げながら展示されています。観る角度によって様々な楽しみ方が出来るのが魅力です。例えば、右⇒左、左⇒右と移動しながら観てみるのはどうでしょう?まるで龍が動いているかの様に見えると思います。
さすがに言葉で”動いているかの様!”と表現してもなかなか伝わらないでしょうけど、これは実際に作品を観て味わってほしいですね。屏風は構造上作品に奥行きが生まれてくるので、こういった動きのある鑑賞方法がポイントです!要はLIVE感が大事!って事です。
※橋下雅邦の「龍虎図屏風」は静嘉堂文庫美術館所蔵の作品(重要文化財)です。今後も展示される機会は充分あると思います。ぜひ、その時の参考にしてもらえると幸いですね。
・(各)縦160.5×横369.5cm、絹本着色 六曲一双、静嘉堂文庫美術館所蔵
対して左隻には、迫ってくる龍に対して吠え叫ぶ二頭の虎が描かれています。強風でなびく竹の描写が非常にリアルで、「雲は龍に従い、風は虎に従う。」の言葉を再現しているかの様です。さすが重要文化財に指定されるだけあるな~と思います。
ここまで貴重な重文(重要文化財)です。見れなかった人もいるでしょうから、そんな方のためには画像で我慢してほしいと思います。
↑↓画像をクリックすると、大きなサイズで観れるますよ!
参考として!
・「龍虎図屏風」明治28年(1895年)橋本雅邦 ※前期:4月8日~5月7日
・「菊鶏図屏風」明治28年(1895年)野口幽谷 ※前期:4月8日~5月7日
・「蒙古襲来碧蹄館(へきていかん)図屏風」明治28年(1895年)松本楓湖 ※後期:5月10日~6月4日
・「那馬渓図屏風」明治28年(1895年)今尾景年 ※後期:5月10日~6月4日
「明治美術狂想曲」では計4点の屏風が展示されましたが、前期後期2点ずつの展示替えになっていました。どれも静嘉堂文庫美術館を代表する作品たち!見れる機会があったら、見逃したくないですね。^^
・116.1×89.3cm、カンヴァスに油彩、静嘉堂文庫美術館所蔵
そして先ほどちょっと名を挙げましたが、今回は黒田清輝の作品が2点展示されていました。上の「裸体婦人像」と、もう一つは「雪景」です。特に「裸体婦人像」は今回の目玉作品にもなっていて、何より注目は当時のスキャンダルなエピソードでしょうか。時代的に日本は裸体というものにかなり神経質でした。そんな背景から、当時問題視されたのは容易に想像できると思います。このエピソードは結構有名な話なので、知っている人も多いでしょう。
なにせ、警察沙汰にもなったくらいですから!
黒田は「裸体婦人画」を第六回白馬会に出品します。しかし当時の日本で裸体画は風紀を乱すとして”タブー視”されてしまった。警察の指導が入り、下半身を布で覆うという措置が執られたのです。今ではちょっと考えられない話ですが、当時の日本では大問題だったそうです。1枚の作品から、当時の社会状況が読み取れるのも面白いですね!!
今回の「明治美術狂想曲」展は、それほど大きな展覧会ではありません。展示作品は約50点ほどと少ないですが、でも内容は非常に濃い!つまり質の高い作品が多い印象です。ここでは載せていませんが、私が気になった見所作品をいくつかピックアップしてみました。
・「藍釉粉彩桃樹瓶(らんゆうふんさいとうじゅへい)」清時代(18世紀)、景徳鎮窯
…私的に陶器系はあまり詳しくはないのですが、この瓶は例外!!黒っぽい色に映える桃の実や葉っぱの色味がとても美しい!!解説によれば、発色を良くするため下地の白を厚めに施しているとの事。
・「刺繡額 鞍馬天狗」明治40年(1907年頃)、菅原直之助
…能「鞍馬天狗」の主題を刺繍によって表現した作品。菅原直之助の刺繍額はこれまで何度か見た事がありますが、改めて凄い!の一言ですね。縫い方を工夫しているからなのか??見る角度によって光沢度や見え方が違ってくるのが面白い!!ぜひ、ルーペを使ってじっくりと観察してほしい逸品ですね。
・「国宝 曜変天目茶碗(稲葉天目)」(南宋時代、12~13世紀)建窯
…静嘉堂文庫美術館を象徴する国宝”曜変天目茶碗”も展示されます。日本には3点しかないとされる陶器なので、見た事のない人はぜひ見てほしい!!静嘉堂文庫の曜変天目は、斑紋が特にはっきりと現れているので最上級と評価されているほど!!偶然の産物と言われる模様は、”奇跡”とまで言われるほどです。観方によっては、ちょっと不気味にも見えるかもしれない。でも神秘的にも見える!この紙一重の模様と色味は曜変天目の魅力!だろうと思っています。
「丸の内 MY PLAZA」の1階に、さりげなく佇んでいる”静嘉堂文庫美術館”。
あまり目立つ感じではない美術館ですが、でも内部はまるで宝箱みたいな美しい造りになっています。しかも質の高い作品が多く展示されているわけで…、そう考えると本当に宝箱みたいな美術館ですよね!?
私が行った時はあまり混んでいなかったのですが、場所が丸の内にあるので日によっては混むかもしれませんね。近くには東京ステーションギャラリーや出光美術館、それにアーティゾン美術館もあります。他に美術館に行った次いで!もしくはショッピングの次いで!の感覚で行くのもイイと思います。
静嘉堂文庫美術館は随時素敵な企画展を開催しています。
【 あの世の探検 ― 地獄の十王勢ぞろい ― 】 ・会期:2023年8月11日(金)~9月24日(日) ・時間:10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで |
その後は、開館1周年記念の特別展になります。
【 開館1周年記念特別展 二つの頂 ― 宋磁と清朝官窯 ― 】 ・会期:2023年10月17日(土)~12月17日(日) ・時間:10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで |
静嘉堂文庫美術館:静嘉堂@丸の内(東京都千代田区丸の内2丁目1-1 明治生命館1階)
”宝箱”みたいな美術館です。ぜひ一度は行ってみては?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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