- 2022-12-26
- Impression (絵画展の感想)
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サンドロ・ボッティチェリの作品が、東京のビジネス街で観れる!?
普通に考えたら、ちょっと想像できないと思います。
現在丸紅ギャラリーには、日本で唯一のボッティチェリ作品「美しきシモネッタ」が所蔵されています。描かれている女性シモネッタ・ヴェスプッチは、名画「ヴィーナスの誕生」のモデルとも言われていて、他にも様々な作品にも描かれている人物。
当時ルネサンスでは美女と名高い女性シモネッタ。そんな美女を観れる!って思ったら、見たくなるのは男の性なのだろうか?
【 丸紅ギャラリー開館記念展Ⅲ ボッティチェリ記念展美しきシモネッタ 】 ・期間:2022年12月1日~2023年1月31日まで |
さて、今回は2021年11月1日に開館した”丸紅ギャラリー”の開館記念展Ⅲを見に来ました。もちろんメインはボッティチェリの「美しきシモネッタ」。というか、この作品1点のみの展示という意表を突いた美術展なわけです。それでも入場から想像以上の人がいたのには、本当にビックリでしたけれど…。
今回は「美しきシモネッタ」1点のみの展示とはいっても、ギャラリーにポツンと1点のみ飾っているというわけではないのです。もちろん現在に至るまでの過程というか、作品の考察が様々とされていたわけです。実はこれが思った以上に興味深くて、当時ルネサンスの美女の条件だったり、様々な名画にシモネッタの面影を見る事が出来ると称し、本物ではないにしろ「ヴィーナスの誕生」や「プリマヴェーラ」が挙げられていたのは面白い趣向だったのです。
これが今回の主役作品ボッティチェリの「美しきシモネッタ」。丸紅ビル1階のロビーにデカデカと飾ってあったパネルポスターです。
作品を観ると分かりますが、シモネッタの美貌にばかり目を奪われるかもしれないけれど、実は見所満載だと思っています。もちろん透き通る様に美しい肌と髪の毛の美しさは一際目を惹きます。でもそれだけじゃなく、さりげなく映える首飾りの宝石と赤い衣装に施された白の刺繍。ボッティチェリの繊細な筆づかいも必見だと思います。ぜひ、本物を見て味わってほしいポイントだと思います。
さて、この「美しきシモネッタ」は15世紀後半、推定では1469年~1475年の間に制作された作品だそうです。モデルのシモネッタ・ヴェスプッチがマルコ・ヴェスプッチと結婚してから、亡くなるまでの間に描かれただろうというわけですね。生まれながらにして備わっていた美貌もあって、ロレンツォとジュリアーノのメディチ兄弟から惚れられ、さらには当時の多くの男性をも魅了する美貌。このシモネッタという女性は当時の美人という条件に合致していたわけです。
ここで参考ですが、ルネサンス期の美人の条件について紹介したいと思います。
髪は褐色に近い淡い金色であること。肌は明るく輝き、眉は中央でふくらみ、鼻と耳にむかって細くなるのがよい。眼は大きく、白眼は青みを帯び、まつげは長すぎず、厚すぎず、黒すぎないのがよい。頬のピンクはカーブに沿って描かれること。鼻はそれとわからない程度に上に向かって細くなること。口は心持ち小さい方がよく、唇が半分開いたとき6つ以上の歯が見えないほうがよい。唇にはくぼみがあり、薄すぎないほうがよい。歯茎は赤いビロードを思い起こさせ、暗すぎてはいけない。云々。
※出典:アニョロ・フィレンズオラの著書『女性の美についての対話』
この記念展では、こういった当時の背景などが前振りとして解説されている点も面白いのです。様々な角度から、ボッティチェリの「美しきシモネッタ」を鑑賞しよう!という試みなんでしょうけど、個人的には興味深い点だったわけです。
美人としての条件を兼ね備えた女性”シモネッタ”ですが、悲しいかな…、1476年4月26日、23歳という若さでこの世を去ります。美しいシモネッタという記憶を人々に植え付けたまま、亡くなってしまったのです。さて、ここで個人的に目を惹く1点(レプリカ?)があったのですが、それがダヴィンチのシモネッタを描いたとされる素描。
女性の頭部という作品名ですが、別名”眠れる美女”とも言われているそうです。ダヴィンチは24歳の頃、シモネッタの葬儀に参列した可能性も指摘されていて、この素描は目を閉じ亡くなっているシモネッタを描いたものだと言われています。特徴が非常に似ていて、この素描がシモネッタだとすると、新たな謎の解明に繋がるかもしれないですね。
比較的コンパクトにまとめられた記念展『ボッティチェリ特別展 美しきシモネッタ』。現在丸紅ギャラリー所蔵作品なので、今回の記念展以外でも展示されるとは思いますが、ぜひ機会があったら見てほしいと思います。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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