サンタクロースの起源”聖ニコラウス”を、美術視点で解説!

サンタクロース

 

サンタさんがプレゼントを持ってくる!

僕らが子供の頃だったら、こういった認識でも良かったかもしれない。

でもある程度年を重ねた大人なら、サンタの元のなった人物”聖ニコラウス”について知っておくのもイイかと。これも大人の最低限の知識だろうと思うわけです。

そして欲を言えば、ついでに西洋画にも触れてくれたら尚嬉しい!

 

クリスマスはキリスト教とも関係がありますし、何より宗教画でよく描かれる題材だったりします。

ぜひ今回をきっかけに、宗教画に触れてみるのもイイかと思います。

 

目次

サンタクロースの起源となった人物”聖ニコラウス”を解説!
特に有名なエピソード「聖ニコラウスと貧しい3人の娘」
イリヤ・レーピンの「聖ニコラウス」の絵がコチラ!

(参考)キリストの降誕祭”クリスマス”に観たい作品を3点選んでみました。

 

 

 

 

サンタクロースの起源”聖ニコラウス”を解説!

解説

まずは、サンタクロースの元になった人物聖ニコラウス(saint Nicholas)から話していこうと思います。

 

一般的に僕らの持っているサンタさんのイメージと言えば、”白いひげを生やし、赤い服を着た老人の姿”を想像すると思います。そしてトナカイのひくそりに乗って、子供たちの寝静まった頃に、プレゼントを配って回る

おそらく多くの人もこんな姿をイメージするでしょうね。

 

このサンタクロースの元になったのが”聖ニコラウス”、つまりキリスト教における聖人(つまり司祭)です。

 

ミュラバーリのニコラウス Nicholas of Myra(Bari)

キリスト教の聖人で最もよく知られている人物。子供、水夫、旅行者の守護聖人であり、年頃の娘の守護者でもある。また、サンタクロースの原型となった人物。

4世紀小アジアのミュラの司教であった。またその聖遺物は11世紀にイタリアのバーリに運ばれた事から、ミュラ(もしくはバーリ)のニコラウスとも呼ばれる。

通常は司教杖を手にした司教服姿の中年の人物として描かれる事が多く、持ち物は3つの黄金の玉か財布で、聖者の足元か書物の上に置かれる。

・『西洋美術解読事典』を一部参考

 

「聖ニコラウス」(16世紀頃)ティントレット

「聖ニコラウス」(16世紀頃)ティントレット

・114×56cm、カンヴァスに油彩、ウィーン美術史美術館所蔵

一般的に聖人ですから、西洋画で描かれる際は、人物を特定するキーワード”アトリビュート”もあります。

聖ニコラウスの場合は、持物が黄金や財布だったりします。

通常その人物が行ってきた行為や成果が、”持物”として描かれる事が多い。それにサンタクロースの原型というわけですから、聖ニコラウスの行ってきた行動がどういった事かも、ある程度想像つくのではないでしょうか。

 

 

 

 

特に有名なエピソード「聖ニコラウスと貧しい3人の娘」

「聖ニコラウスの伝説」(1447‐1448年)フラ・アンジェリコ

「聖ニコラウスの伝説」(1447‐1448年)フラ・アンジェリコ

・34×60cm、パネルにテンペラと金、バチカン絵画館(ピナコテーカ)

”聖ニコラウス”にまつわるエピソードはいくつかありますが、特に有名なものは「聖ニコラウスと3人の娘」でしょうか。

簡単に言えば、貧しい家族を救うために、黄金を投げ込んだという話です。

現在僕らが抱いているサンタさんのイメージにも繋がる話なので、これは絶対に外せないエピソードでしょうか。

 

聖ニコラウスと貧しい3人の娘

聖ニコラウスの近所に、非常に貧しい家族が住んでいました。その家の男はあまりの貧しさに、3人の娘を売春宿に売らなけれならなかったのです。

この話を聞いた聖ニコラウスは、娘たちを救おうと、黄金を家の窓から投げ込みました。

しかし3日目の晩に、男に投げ入れているのがバレてしまいました。聖ニコラウスは、この事は誰にも口外しないように説得します。

この黄金のお陰で、娘たちは売られる事なく、家族は一緒に過ごす事ができました。

 

このエピソードが子供の守護聖人となった理由で、そしてアトリビュート(持ち物)に黄金財布が描かれる理由でもあるわけです。

 

「聖ニコラウスと3人の貧しい娘たち」(1425年頃)ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ

「聖ニコラウスと3人の貧しい娘たち」(1425年頃)ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ

・37×37cm、パネルにテンペラ、バチカン絵画館(ピナコテーカ)

西洋画、特に宗教画において、背景の知識があるとより深みも増してくるとは言うけれど、まさに最たる例だと思います。

一見宗教画って理解しにくく、敷居も高く感じるジャンルではあるけれど、描かれている背景やストーリーが分かると面白く感じる。これが宗教画のオモシロさだと思っています。

クリスマスやサンタクロースをきっかけに、ここまで深く宗教画に触れられたわけですから、何事もきっかけって大事だと思いませんか?

 

なみに聖ニコラウスのエピソードは、他にもあります。ここではそのいくつかを簡単に紹介しようと思います。

「無実の3人を死刑から救う聖ニコラウス」(1447‐1448年)フラ・アンジェリコ

「無実の3人を死刑から救う聖ニコラウス」(1447‐1448年)フラ・アンジェリコ

・パネルにテンペラと金、ウンブリア国立絵画館所蔵

例えば、”ミュラで飢饉が起こった際、聖ニコラウスは港に荷揚げされた穀物を、奇跡的な力によって何倍にも増やした”。

荒波を鎮め、沈みかかった船を助けた”など。この伝説が、水夫の守護聖人となる所以ですね。

また想像するとかなり怖い話にはなりますが、”3人の子供を殺し、死体を塩漬けにして客に提供していた宿に泊まった時、聖ニコラウスは奇跡的に殺された3人の子供を生き返らせた”とか。

普通に考えるとあり得ない話ですが、ここまで伝説化するという事は、それだけ”聖ニコラウス”の存在が偉大だったという証でしょうね。

 

 

 

 

イリヤ・レーピンの「聖ニコラウス」の絵がコチラ!

「無実の3人を死刑から救う聖ニコラウス」(1888年)イリヤ・レーピン

「無実の3人を死刑から救う聖ニコラウス」(1888年)イリヤ・レーピン

・215×196cm、カンヴァスに油彩、ロシア美術館所蔵

聖ニコラウスはよく描かれる人物でもありますが、中でも私が紹介したいのが”イリヤ・レーピン”です。

私にとって題材と画家の画風との相性も大事だと思っていて、まさにレーピンと聖ニコラウスの相性もイイかと。

写実性の高さもそうですが、何より内面を浮き彫りにしたかの様な描写力!これで描いた作品ですから、いかに説得力があるか分かると思います。

 

サンタクロース

さすがにここまで写実性が高いと、この聖ニコラウスがサンタさんだよ!とはさすがに子供の前では説明できない。

夢を壊してしまうそうですしね。

でもある程度年を重ねた人なら、サンタクロースの原型について知っておくのもイイかと。大人としての良識という意味でも、大事だと思うのです。

そしてサンタをきっかけに、西洋画にも深く触れる事が出来たわけですから。何事もきっかけって大事だと思いませんか!?

(参考)キリストの降誕祭”クリスマス”に観たい作品を3点選んでみました。

 

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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