フランソワ・ジェラールの作品で、物語「アモルとプシュケ」を簡単解説!

「アモルとプシュケ(detail)」(1798年)フランソワ・ジェラール

 

ルーヴル展 愛を描く」で、一際目を惹く作品あります。フランソワ・ジェラールアモルとプシュケです。

 

人間の娘プシュケと神アモルとの愛を描いた作品で、絵画でも頻繁に描かれる題材の一つ。そんなロマンチックな話を、ここまで美しく描ける画家はジェラール以外にいないと思います。特に圧巻は、お人形さんのように可愛らしい表情のプシュケでしょうか!まさに”理想的な美”を象徴する作品だと思います。美の女神ヴィーナス(ウェヌス)が嫉妬するのも、分からないでもないですね。

 

さて、早速”女神ヴィーナスが嫉妬する!?”という話をしてしまいましたが、実は「アモルとプシュケ」はギリシャ神話がベースになっている話です。純粋に作品を見てウットリするのもイイですが、出来るならもうちょっと深く味わってほしいものです。何せ”神話画”はストーリーの一場面が描かれているから。

 

今回は作品をもっと楽しむための秘訣!として、「アモルとプシュケ」の物語を簡単解説していこうと思います。

 

 

ジェラールの「アモルとプシュケ」が、なぜ格別に美しいの?

何が見所!?

「アモルとプシュケ」は絵画でも頻繁に描かれる題材の一つです。本当にたくさんの画家が描いています。でもその中でもフランソワ・ジェラール(Francois Gerard)は別格と言っても過言ではないと思います。それだけ美しく、ウットリする要素が満載だから!

事実「ルーヴル展」でも、作品の周りは多くの人だかりができるほど!改めて思いますが、美しいものへの興味は絶大なんでしょうね。

 

「アモルとプシュケ」(1798年)フランソワ・ジェラール

「アモルとプシュケ」(1798年)フランソワ・ジェラール

・186×132cm、カンヴァスに油彩、ルーヴル美術館所蔵

どうですか?美しさの面で飛びぬけているのが分かると思います。個人的にはプシュケのお人形さんの様な可愛さと美しさに釘付けですね。^^ さすがは、新古典主義の画家フランソワ・ジェラール”だけあるな~と。

新古典主義は分かりやすく言えば、古代ギリシャやローマを模範とする芸術様式の事。”理想とする美”を追求しよう!という画風です。誰もが憧れる様な”美”がカンヴァスに描かれているわけです。美しいのは当然といえば、当然でしょう!!

そう考えるとフランソワ・ジェラールと「アモルとプシュケ」は、非常に相性がイイのが分かると思います。

 

 

 

「アモルとプシュケ」の物語を、簡単に解説します!

アモルとプシュケ

神話画」は物語の一場面が描かれる事がほとんど!

「ルーヴル展 愛を描く」では、他にも「アモルとプシュケ」を題材にした作品がありましたが、ストーリーのある場面が描かれているのが分かります。「神話画」を楽しむためにも、物語を理解する事が大切なのが分かると思います。

 

アプレイウス(Lucius Apuleius) ※Public Domain
「アモルとプシュケ」は、ローマ時代の作家アプレイウス(アープレーイユス)の書いた小説『黄金の驢馬(ロバ)』に収録されている物語。個人的にはぜひ一度読んでもらいたい話だと思っています。ストーリーは思った以上に壮大になっていますが、読み進めていくとコレがまた面白い!現代の”嫁姑問題”とも密接に繋がっている感じで、ドラマ化してもいいくらいの内容だから。さすがに長々と話しても仕方がないので、今回は簡単解説!と称し「アモルとプシュケ」の物語を見ていこうと思います。

 

アモルとプシュケ

ずは、登場人物から簡単に話したいと思います。

物語の主役は人間の娘プシュケ”と、アモル(クピド)”の2人。そして脇役だけれど、重要な存在が美の女神でお馴染み”ヴィーナス(ウェヌス)”です。

プシュケ(Psyche):人間の娘。そのあまりの美しさに、女神ウェヌスが嫉妬するほどだったとか。
クピド(Cupido):愛の神。別名”アモル(Amor)”やエロースと呼ばれる事もあります。日本ではキューピッドでお馴染み。
ウェヌス(Venus):愛と美の女神ヴィーナス。クピドの母。

 

物語アモルとプシュケ(Amor and Psyche)

とある国に、3人の王女を持つ王様がいました。中でも末娘のプシュケ(Psyche)は飛び切り美しく、美の女神”ウェヌス(ヴィーナス)”の妬みを買うほどだったとか。プシュケの美しさを快く思わないウェヌスは、子クピドに「プシュケを醜い男と結婚させなさい!」と命令します。

いたずら好きなクピドは、持っている弓矢でプシュケに呪いをかけようとしますが失敗。過って自分がプシュケに恋をしてしまいました。結局女神ウェヌスの計画は失敗に終わってしまったのです。

一方、なかなか結婚できない娘”プシュケ”を不安に思った王様は、アポロンに相談を持ち掛けます。そしてアポロンから言われた言葉が「プシュケの結婚相手は山の上で待っている。相手は人間ではなく、怪物だ!」と。プシュケは覚悟を決め、山に一人残る決意をします。そこへ突如、風の神ゼピュロスがやってきました。そしてプシュケを連れ去っていったのです。

プシュケは目を覚ますと、そこには見た事もない煌びやかな宮殿が立っていました。アポロンの言葉通り、この宮殿でプシュケは結婚生活を送る事に!しかし、いつになっても結婚相手は姿を見せてきません。なぜなら相手は翼の生やした神”クピド”だったから。さすがに姿を見られるわけにはいかなかったのです。

好奇心旺盛なプシュケは、とうぜん見えない相手に興味を持ち始めます。そこでクピドは「私の姿を見てはいけないよ!」とプシュケに言い、約束させます。しかし2人の姉にそそのかされ、結局プシュケは寝ている間にクピドの顔を確かめようとしてしまった。ランプで照らすと、そこには驚くほど美しいクピドの姿が!姿を見られたクピドは怒り、プシュケの元を飛び去ってしまったのです。

愛するクピドに逃げられ、失意のどん底に落ちたプシュケ。あちこちを探しまわりますが見つからず、最終的にクピドの母”ウェヌス”の元へ訪れる事に…。

当然ながらクピドの母”ウェヌス”は大激怒!!プシュケはウェヌスから許しをもらうため、3つの無理難題な試練を受ける事になったのでした。

試練1、ごちゃごちゃの穀物を種類別に分別

試練2、黄金の羊から毛を取ってくる

試練3、冥界の女神プロセルピナから、美の小箱を取ってくる。

何とかプロセルピナから美の小箱を受け取ったものの、またしても好奇心旺盛なプシュケは約束を破り小箱を開けてしまいます。するとプシュケは死んだように、その場で崩れ落ちてしまったのです。この危機を知ったクピドは、プシュケを助けに向かいます。目を覚ましたプシュケは、クピドの助けもあり何とか母ウェヌスから許しを貰う事に!

そして、2人は本当の意味で”結ばれた”のでした。

・参考『黄金の驢馬』(岩波文庫)などを参考に、私なりに分かりやすくまとめてみました。

出来る限り簡潔にまとめてみたつもりですが、それでもちょっと長くなってしまったでしょうか。

でも大まかな話としては、これで十分だろうと思います。絵画では物語の一場面が描かれるのがほとんど。流れが分かると、作品の理解も深まると思います。例えば次に挙げる作品は、物語のどの場面を描いた作品か分かりますか?

 

「プシュケとアモルの結婚」(1744年)フランソワ・ブーシェ

「プシュケとアモルの結婚」(1744年)フランソワ・ブーシェ

・93×130cm、カンヴァスに油彩、ルーヴル美術館所蔵

フランソワ・ブーシェの「プシュケとアモルの結婚」。

こちらも「ルーヴル展 愛を描く」で展示されるので、お見逃しなく!特に説明はいらないと思いますが、タイトルの通り”プシュケとアモルが結ばれる場面”を描いているのが分かると思います。ちなみに、周辺に描かれているのは2人を祝福する神たちが描かれています。

個人的にブーシェの「プシュケとアモルの結婚」も好きな作品です。ロマンチストな私にとっては、実にタマラナイですね!^^

もちろん、作品の雰囲気は超ロマンチックです。でも神話画は流れを知ってこそ、深みも増してくるもの!どうやって2人は試練を乗り越えたのか??波乱万丈のストーリーが分かると、より作品への想いも違ってきますしね!!

 


「アモルとプシュケ」の話は小説『黄金の驢馬(ロバ)』に収録されている物語。日本語訳された文庫本もありますが、なかなか世に出回っていないのか??現在はAmazonでも高値が付いていたりします。

でも一度は見てほしいですね!

2世紀頃に書かれた物語ですが、内容は現代にも通じる部分が非常に多いのが分かると思います。長年評価されている物語は、それだけの理由があるって事でしょうか。一つの芸術作品と、ぜひ一度読んでみるのもイイと思います。

 

て「アモルとプシュケ」の流れが分かったなら、今度は実際に作品を見て味わってほしいものです。

「ルーヴル美術館展愛を描く」は、東京開催(国立新美術館)は2023年6月12日まで。京都開催は京都市京セラ美術館にて、6月27日~9月24日まで開催します。ぜひ足を運んでみては!?

 

 
 
 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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