アーティゾンで「彼女たちのアボリジナル・アート」を観てきました。

アーティゾン美術館で「彼女たちのアボリジナル・アート」を観てきました。

 

先日、アーティゾン美術館彼女たちのアボリジナル・アートを観てきました。

 

私にとってオーストラリアは特に親しみのある国で、前々から興味のあった展覧会でした。

早速行ってきたので、今回は展示様子も交えながらレビューしていこうと思います。

 

目次

「彼女たちのアボリジナル・アート」を観てきました!(レビュー)
一押し!はジュリー・ゴフの映像展示!
「彼女たちのアボリジナル・アート」の開催概要

 

 

 

 

「彼女たちのアボリジナル・アート」を観てきました!

アーティゾン美術館で「彼女たちのアボリジナル・アート」を観てきました。

先日、アーティゾン美術館で「彼女たちのアボリジナル・アート」を観てきたので、そのレビューから!

個人的な感想になりますが、非常に良かった!!

正直この一言に尽きますね。^^

 

芸術的にメッセージ性が強く、魅力溢れる作品が多かったですし。

何よりオーストラリアは僕にとって親しみ深い国です。

滞在時にアボリジナル・ピープルと接点があった僕にとって、色々と心に突き刺さってくるものがあったのです。

 

れでは、肝心の展示様子を見ていこうと思います。

「ボルング」(2016年)ノンギルンガ・マラウィリ ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

「ボルング」(2016年)ノンギルンガ・マラウィリ ※「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」より

・186.0×78.0cm、天然オーカー・樹皮、石橋財団アーティゾン美術館所蔵

まずは、ノンギルンガ・マラウィリ(Nonggirnga Marawili)の作品から。

今回は女性作家を中心とした展覧会で、どの作品も実に個性的です。

上の「ボルング」を観ても分かるでしょうけど、模様というかデザイン性は唯一無二!!

最近世界的にアボリジナル・アートが注目されているのも、何となく分かる気がしますね。

 

「ワンダウイの魚捕り網」(2013年)ノンギルンガ・マラウィリ ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

「ワンダウイの魚捕り網」(2013年)ノンギルンガ・マラウィリ ※「彼女たちのアボリジナル・アート」より

・天然顔料・自然に空洞化した幹、ニューサウスウェールズ州立美術館所蔵

伝統的ともいうのか、それとも原始的なのか!?

原始的というと、ちょっと古臭い感じがしてしまうけれど。

でも何故か、現代アートに通じる感じがするから不思議です。

余談にはなりますが、岡本太郎は縄文土器から着想を得た作品を多数制作していました。思うに、原始的要素と現代アートは通じる点が大いにあるって事でしょうか。

こんな風にアボリジナル・アートは、芸術的にも非常に魅力的だったりします。

 

「記憶の深淵」(2023年)ジュディ・ワトソン ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

「記憶の深淵」(2023年)ジュディ・ワトソン ※「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」より

・天然藍、鉛筆、合成ポリマー絵具・麻布、作家蔵

そしてアボリジナル・アートで忘れてはいけないのが、オーストラリア先住民が受けてきた迫害の歴史です。

1788年のイギリスの植民地化で、長い間アボリジナル・ピープルは迫害や差別を受けてきたという事実がありました。

私が20代の頃、ワーホリでオーストラリアに滞在した話になりますが、そこで当時の資料などを見る機会があったのですが、相当酷い扱いや差別を受けてきたそうです。

 

「アボリジナルの血の優位性」(2005年)ジュディ・ワトソン ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

「アボリジナルの血の優位性」(2005年)ジュディ・ワトソン ※「彼女たちのアボリジナル・アート」より

・42.0×31.0cm(各)、エッチング、クイーンズランド州立図書館所蔵

これは16枚の版画からなる作品で、アボリジナル・ピープルの選挙権の有無が記されたもの。

純血のアボリジナルには投票権はなく、ハーフ・カスト(白人の血が混じっている)は一定の条件があれば投票権が与えられるといった内容が記されていたそう。

1965年になるまで、アボリジナル・ピープルに完全な投票権は与えられなかったと言います。

アボリジナル・アート”と迫害の歴史は、切っても切れない関係にあるのが分かると思います。

 

「アボリジナルの血の優位性」(2005年)ジュディ・ワトソン ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

「アボリジナルの血の優位性」(2005年)ジュディ・ワトソン ※「彼女たちのアボリジナル・アート」より

 

実は私がオーストラリアに行ったのが、今から約20年くらい前でした。

実際にアボリジナル・ピープルと親しくなるきっかけがあり、直接話をする機会もあったわけですが…。

当時もまだ差別が根強く残っていると。

彼は運よくビジネスで上手くいったと語ってたけれど、多くのアボリジナル・ピープルは貧しい生活を課せられていると。

ガイド本で知識としては知ってはいたけれど、言葉に勝るものはないですね。

これほど言葉の重みを感じたのは、この時が初めてだったと思います。

 

 

て、ちょっと気分を変えるという意味で、ここから絵画などを見てみようと思います。

エミリー・カーマ・イングワリィの作品展示の様子 ※「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」より

エミリー・カーマ・イングワリィの作品展示の様子 ※「彼女たちのアボリジナル・アート」より

エミリー・カーマ・イングワリィ(Emily Kam Kngwarray)の作品です。

70歳後半から絵画制作を始め、亡くなるまでの約8年間で3,000点を超える作品を描いたそう。

年齢に負けないこのエネルギッシュさは凄い!の一言。

 

マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリの作品展示の様子 ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリの作品展示の様子 ※「彼女たちのアボリジナル・アート」より

マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリの作品。

カイアディルトと呼ばれる先住民コミュニティ出身の画家だそうです。

 

「私のカントリー」(2005年)マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

「私のカントリー」(2005年)マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ ※「彼女たちのアボリジナル・アート」より

・60.0×30.0cm、カンヴァスに合成ポリマー絵具、クイーンズランド州立美術館所蔵

名前が非常に長いので覚えられそうにないですが、上の「私のカントリー」は非常に印象に残った作品でした。

何とも色遣いがイイですね!!

 

「私を見つけましたね:目に見えないものが見える時」(2023年)マリィ・クラーク ※「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」より

「私を見つけましたね:目に見えないものが見える時」(2023年)マリィ・クラーク ※「彼女たちのアボリジナル・アート」より

・28.0×28.0cm(各)、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵

アボリジナル・ピープルは自然と共に生きてきたわけで、感覚的に自然の本質を観ていたって事だろうか!?

作品タイトルの”目に見えないものが見える時”は、まさに彼女にしか作れない代物だと思います。

 

「私を見つけましたね:目に見えないものが見える時」(2023年)マリィ・クラーク ※「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」より

 

 

「えぐられた大地」(2017年)イワニ・スケース ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

「えぐられた大地」(2017年)イワニ・スケース ※「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」より

・約40.0×15.0cm(各)、ウランガラス(宙吹き各)、石橋財団アーティゾン美術館所蔵

そしてこれがイワニ・スケース(Yhonnie Scarce)のガラス作品「えぐられた大地」です。

非常にインスタ映えしそうだけど、実はこれもメッセージ性の高い作品です。

この42個のガラスには、微量のウラン酸化物が含まれているそうです。

 

紫外線を当てると、緑色に発行するので非常に美しい!!

 

も、実は…

「えぐられた大地」(2017年)イワニ・スケース ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

南オーストラリアはウラン資源が豊富で、一昔前は盛んに採掘が行われていました。

でも、ご存知の通りウランは核兵器の原料でもあります。

環境破壊だけでなく、地域の住民の健康被害にも繋がっていたそう。

 

「えぐられた大地」(2017年)イワニ・スケース ※「彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術」より

ガラスの形はアボリジナル・ピープルの食料ブッシュバナナをモチーフにしているそうです。

では、ガラスに出来たひび割れは?というと…

大地の破壊や健康被害を表現しているそうです。

 

「ガラス爆弾(シリーズⅡ)」(2015年)イワニ・スケース ※「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」より

「ガラス爆弾(シリーズⅡ)」(2015年)イワニ・スケース ※「彼女たちのアボリジナル・アート」より

・25.0×60.0×25.0cm、ガラス、オーストラリア国立美術館所蔵(キャンベラ)

作品として見たら、非常に美しい!!

でもこれほどメッセージ性の高い作品は、他にあるだろうか!?

最近アボリジナル・アートの評価が高まっているそうですが、その理由も何となく分かった気がしますね。

つくづく、来て良かった!と思った次第です。^^

 

 

一押し!はジュリー・ゴフの映像展示!

さて、ここでレビューを終わらせるわけにはいかないですね。

 

私の考え
私的にコレは絶対見てほしい!!という展示があったので、最後に紹介したいと思います。

それが”ジュリー・ゴフ”の展示室での映像でした。

1、「奪われた地」2011年、映像作品(編集はジェンマ・リー)、映像時間:19分17秒
2、「オブザーヴァンス」2012年、映像作品(編集はジェンマ・リー)、映像時間:17分09秒
3、「トラマ」2015年、映像作品(編集はマーク・クィレンバーグ)、映像時間:4分50秒
4、「サイレンス沈黙させられた子どもたち」2020年、映像作品(編集はジェンマ・リー)、映像時間:6分18秒

 

がここまで強く推すには理由があります。

1つ目は、アボリジナル・ピープルについて知れるから。

2つ目は、実際にオーストラリアをほぼ一周した私が、”こんな感じだったよな~”と懐かしさを感じれる映像だったから。

どれも非常に内容が詰まった感じなので、出来ればすべてを観てほしいですね!

全部で4作品あり、すべてを観ようとすると50分くらいになるでしょうか。

展示作品や映像作品を楽しむためにも、鑑賞時間はじっくり用意しといた方がイイと思います。

これはおススメです!

 

・・・

アーティゾン美術館で「彼女たちのアボリジナル・アート」を観てきました。
今回の「彼女たちのアボリジナル・アート」ですが、芸術家たちの思いやメッセージ性が表現されたアートが多い印象でした。

自然や土地を崇拝する作品もあれば、迫害や差別の歴史と結びついた作品もあった。

どれもれっきとした”アート”には間違いないですが。

とにかく、またオーストラリアに行ってみたい!

そう思わせてくれた展覧会でした。

 

興味のある人は、ぜひ!!

 

 

 

「彼女たちのアボリジナル・アート」の開催概要

アーティゾン美術館で開催の「彼女たちのアボリジナル・アート」の開催概要

 

心の開催概要は以下になります。

彼女たちのアボリジナル・アート  オーストラリア現代美術の開催概要

・場所:アーティゾン美術館6・5階展示室
・会期:2025年6月24日(火)~9月21日(日)

・時間:10:00~18:00(毎週金曜は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで
・休館日:月曜日(7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日、8月12日、9月16日

・入館料:一般(ウェブ予約)は1,800円、一般(窓口販売)は2,000円
     大学・専門・中学生は無料(要ウェブ予約)
     中学生以下、障がい者手帳持参者と付き添い1名は無料(要ウェブ予約)

 

この「彼女たちのアボリジナル・アート」展で、押さえてほしいポイントがあります。

まずは撮影について!

基本(一部を除いて)撮影が可能になっています。好きな作品と出会えたら、ぜひ写真に収めてほしいと思います。

またチケットですが、出来ればウェブ上での購入をおススメします!

 

というわけで、素敵な美術鑑賞を!!

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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