- 2022-11-13
- Impression (絵画展の感想)
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すでに11月中旬なのに、ビル街で覆われた都心を歩いていると全くそんな感じがしない…。
そう思いながらたどり着いた場所が、東京駅から歩いてほど近いアーティゾン美術館でした。今日は前々から楽しみにしていた展覧会「パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂」を観にきたのです。
【 パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂 】 ・期間:2022年11月5日(土)~2023年2月5日(日) |
タイトルの”パリ・オペラ座”というテーマからして、妙にワクワクしてしまうのは私だけだろうか?今回はマネの2作品や、エドガー・ドガやシャガールなど気になる画家の作品が展示されるとの事で、何気に期待値も高かったわけです。
今回は私なりのポイントも押さえながら、「パリ・オペラ座」展のレビューをしていこうと思います。
華やかで豪華絢爛なイメージがある”パリのオペラ座”ですが、一方ではちょっとダークな感じがしないでもない。華やかさとダークさ、つまりオペラ座の光と影が、私が一番注目したいポイントだと思っています。
オペラ座の光と影の部分が作品にどう表現されているのか?
今回も、私の期待に沿うような作品に出会ってみたいものですね!!
・66.5×50.7cm、グワッシュ、オルセー美術館(ヴェルサイユ宮殿美術館に寄託)
さて、早速待ち構えていた作品がエドゥアール・ドゥタイユの「パリ・オペラ座の落成式」でした。豪華絢爛な建物と装飾に溢れた贅沢な造り。絵を見ただけでも、一度は行ってみたくなりますね。この建物は”ガルニエ宮”と呼ばれ、若干35歳のほぼ無名な建築家シャルル・ガルニエによって設計されたもの。1860年~1861年に行われたコンクールでガルニエの設計案が選ばれ、1875年についにお披露目されたのです。
今回の「パリ・オペラ座」展では、オペラ座にまつわる絵画作品だけじゃなく、舞台美術や演目の譜面、衣装デザインなど様々な資料などが展示されています。
個人的に面白かったのが舞台美術の様子を描いた「オペラ座の舞台美術アトリエの情景、ルヴォワ通り(王政復古時代)」。舞台美術に相当手間暇かけている様子が分かるのがイイですね。オペラ座という建物自体かなり凝っているだけに、美術や演目も妥協を許さないって事だろうか?個人的にこういう裏の部分が垣間見れる作品は好きで、興味を惹かれてしまいますね。
・85×75cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵
オペラ座と言うと、思い浮かぶ画家に”エドガー・ドガ(Edgar Degas)”がいます。今回ドガの作品が多数展示されていましたが、中でも上↑の「バレエの授業」、そして「舞台袖の3人の踊り子(国立西洋美術館所蔵)」、パステル画の「踊り子たち、ピンクと緑」は特に印象に残っています。舞台裏に出入りしていたドガにしか描けない作品ばかりで、今回期待していたちょっとダークな場面を描いた作品が見れたのもイイですね。
さて、ここで今回気になった資料作品を挙げてみたいと思います。
・Ⅱー1「舞台の眺め:ル・ペルティエ劇場、落成式の夜」(1821年頃)デトランプ
・Ⅱー6「アラジン(あるいは魔法のランプ)」(1822年)水彩、鉛筆
・Ⅱー18「オペラ座のアルバム」(1844年)オギュスタン・シャラメル
・Ⅱー46「オペラ座の稽古場、わが時代の歴史」(1837年)ペン、水彩、ウジェーヌ・ルイ・ラミ
この「パリ・オペラ座」は、オペラ座に関わる資料も多数展示されています。多くがパリのフランス国立図書館に所蔵されているものばかりなので、なかなかお目にかかれない資料ばかりだと思います。ぜひ観に行く際は参考にしてもらえると幸いですね。
・59.1×72.5cm、カンヴァスに油彩、ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵
・46.5×38.5cm、カンヴァスに油彩、石橋財団アーティゾン美術館所蔵
何気に楽しみにしていたマネの2作品「オペラ座の仮面舞踏会」と「仮装舞踏会」。マネの作品はありのままを描こうとした傾向が強いので、当時の様子がまざまざと表現されている様に思います。時にはスキャンダルを生む事もあったけれど、目の前の様子を正直に描こうとしたマネの作品は、個人的には説得力の高い作品に見えてしまいますね。
・45.3×54.7cm、板に油彩、大原美術館所蔵
・38×54cm、カンヴァスに油彩、カルナヴァレ美術館所蔵(パリ)
まさしく今回私が期待していた雰囲気を描いた作品です。
華やかなオペラ座の舞台の裏側、つまりちょっとダークな感じが漂う場面を描いた作品です。帽子を被った男性たちと、媚を売る様な仕草が見て取れるダンサーたちとの何とも言えない怪しい関係性。こういう場面は実際に舞台裏に行かないと見えない様子だと思います。バレエダンサーと言えば華やかなイメージがある職業だけれど、当時バレエダンサーは娼婦的な側面もあったと言われています。貧しい少女たちは良い生活をするために、お金持ちのパトロンに媚を売っていた。当時の裏側が絵画を通して見て取れるわけです。
絵画作品は小説や書籍とは違って、視覚へ間接的に訴えてくるだけに妙に怖さというか説得力がありますよね。この深みは、まさに絵画ならではの醍醐味だろうと思います。
そして後半には、個人的に好きな画家”シャガール(Marc Chagall)”の作品も展示されています。
・Ⅳー38「ガルニエ宮の天井画のための最終習作」(1963年)グワッシュ、パステル、色鉛筆
…シャガールはフランスの文化大臣アンドレ・マルローの依頼で、オペラ座の天井画を制作しています。1964年に天井画が完成し披露されたわけですが、当時はオペラ座のイメージとのギャップから多くの批判もあったそうです。
・Ⅳー39「オペラ座の人々」(1968‐1971年)カンヴァスに油彩、ポーラ美術館所蔵
そういえば、今回私の超お気に入りの作品と再会できたのは、予期せぬ嬉しさですね!普段だと箱根のポーラ美術館でしたお目にかかれない作品なのに、まさかアーティゾン美術館で再会できるとは!!
・Ⅳー37「パリ」(1937年)カンヴァスに油彩、ラウル・デユフィ
図録などでは後半に載っていますが、私が行った時は入口でお出迎えをしてくれた作品です。パリのパノラマを屏風仕立てで描いた作品で、実は左から2番目のパネル中央に”ガルニエ宮”が描かれています。オペラ座に関連する作品をこういった場で展示してくれるのは本当に嬉しい限りです。
正直この「パリ」の絵を見れただけでも、今回アーティゾンに来た価値は十分あると思っています。つくづく好きな作品は何度見てもイイ!ですね。^^
今回開催の「パリ・オペラ座」展は個人的に終始見所満載!って感じで、思った以上に満足した企画展でした。しかも展示の仕方もオペラ座の様な豪華仕立てになっていて、正直言ってこれを見たら実際にフランスのパリに行ってみたくなってしまいます。
「パリ・オペラ座」展は2023年2月5日(日)まで、東京のアーティゾン美術館で開催します。ぜひ、興味のある方は行ってみては!?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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