カラヴァッジョの「キリストの埋葬」

Deposizione

 

カラヴァッジョキリストの埋葬

 

カラヴァッジョの特徴が存分に発揮されたこの作品は、
その後の多くの画家たちに影響を与えてきました。

あの”王の画家にして、画家の王”とまで称された
ルーベンスもこの作品に影響を受け模写する程…

・・・

「キリストの埋葬」(1602年)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

「キリストの埋葬」(1602年)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

カラヴァッジョキリストの埋葬(1602年)
・306×214cm、カンヴァスに油彩、バチカン美術館所蔵

この作品はタイトルの通り、
磔刑に処され死したイエスの肉体を
弟子たちが抱きかかえて掘った穴に降ろそうとしている場面を描いています。

 

 

絵を見て感動!
ドラマチックすぎる光と影の明暗表現
何度見てもこの光と影のコントラストは劇的ですね!

それに浮き出た血管や肌の質感。
皺の1つ1つまで描くという徹底した写実さは凄いの一言!

カラヴァッジョの特徴が見て取れると思います。

そしてキリストとその周りの人物との構図は、
まさに考えつくされたかの様な完成さがあると言われています。

 

この「キリストの埋葬」が高く評価されている理由には、
こういった古典的な様式カラヴァッジョの卓越した写実性
そして”ドラマチック”ともいえる表現力の高さが要因と言われています。

 

元々この作品はサンタ・マリア・イン・ヴァリチェッラ教会の礼拝堂のために描かれたものだそうです。

それが1797年ナポレオンによって持ち去られ
一時フランスのルーヴル美術館に飾られていたそうです。
それからフランスから返還されて現在に至ったとわけです。

 

考え…・思い…
個人的に一番印象的なのは、
まるで””を観ているかのような迫力と臨場感!!

それにキリストの体に当てられたスポットライトの光は、
平面な絵画でありながらまるで浮き出て存在しているかの様に見えてくるのです。

 

「キリストの埋葬(detail)」(1602年)カラヴァッジョ

「キリストの埋葬(detail)」(1602年)カラヴァッジョ

スポットライトの光と浮き出ているかのような存在感

キリストの偉大さが強調されている様にも見えてきませんか!?

 

イエスの右腕がぐったりと垂れ下がっているんだけれど、
でもなぜか遺体と言うより”聖なる者”にも見えてしまう。

つくづく思う事ですが、
カラヴァッジョとキリストの絵はとても相性がイイと思うのです。

 

人を殺すと言う罪を犯しながら
それでも高い評価を受けた画家”カラヴァッジョ”。

そんなカラヴァッジョの作品がバチカン美術館に飾られるのも頷けますね!

 

 

もう少し「キリストの埋葬」を深堀りしてみると…

聖書(Bible)

 

さて…私の持論ですが宗教絵画は
その描かれた背景を知るとより愉しめると思っています。

 

作品に描かれた人物や物語が分かると、
よりその作品の深みが見えてくると思うからです。

もちろんこの「キリストの埋葬」にも例外ではないと思うのです。

 

ここからは簡単ですが、
「ヨハネの福音書」を挙げながら
このキリストの埋葬の場面について見てみようと思います。

 

・・・

「キリストの埋葬」(1602年)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

「キリストの埋葬」(1602年)ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

この作品には多くの人物画描かれていますが、
中でもイエスの膝を抱えている茶色の服の男の存在に目が行くと思います。

この男性は”ニコデモ”と言われています。

ニコデモという人物はあまり聞かない名だと思いますが、
「ヨハネによる福音書」ではユダヤ人とされていて、
イエスに反対するファリサイ派の最高議会議員だった人物だったそうです。

そして後にイエスに共感し賛同したと言われているそうです。

 

そしてこのニコデモの隣にいる男性が弟子の一人”聖ヨハネ”です。

弟子たちの中で唯一”殉教”しなかった人物と言われています。
※”殉教”とは…信仰のために自らの命をささげる事、失う事。

それから後ろにいる手を上に挙げている女性。
こちらは”クロパの妻マリア”と言われています。
(解釈によれば聖母マリアの姉妹といわれているそうです。)

その左隣にいるのがイエスに従った女性”マグダラのマリア”。

この”マグダラのマリア”はイエスが十字架にかけられるのを見守り、
そしてイエスが埋葬されるまでを見ていた女性と言われています。
この女性については様々な説がありますが
キリストを語る上では特に重要な人物と言われています。

 

「キリストの埋葬(detail)」(1602年)カラヴァッジョ

「キリストの埋葬(detail)」(1602年)カラヴァッジョ

そして特に気になるのがこの修道姿の高齢の女性です。

こちらはイエスの母”聖母マリア”です。

”聖母マリア”は絵画作品ではよく描かれる事が多い女性で、
”聖母子”をテーマにした作品は有名だと思います。

 

絵を見て感動!
私はここでふとこんな事を思ったのです…

聖母マリアは一体どれほどの悲しみだったんだろうと!?

というのも自分が亡くなるよりも前に
子のイエスが亡くなってしまったのです。
おそらく相当な悲しみだったのだろうと思います。

イエスの功績は大きかったのかもしれないけど、
親からすると親不孝になるのかもしれませんね…。

 

さてここで「ヨハネの福音書」の一部を挙げてみます。

イエス・キリストは磔刑に処され息を引き取られました。(19章30節)

その後アリマタヤのヨセフがイエスの遺体の引き取りをピラトに願い出ました。
ピラトはこれを許しそして遺体を十字架から降ろしました。

ユダヤ人の埋葬の習慣に従い、
イエスを香料を染み込ませた亜麻布で包み込みました。

この日はユダヤの安息日だったため急いでイエスを墓に納めました。

※安息日はユダヤ教ではとても大切な日とされていて、
この日は仕事を休み何もしてはいけないとされています。
神が天地を創造し7日目に休息をした事からきていると言われています。

 

元々このカラヴァッジョの「キリストの埋葬」は
3月24日から国立新美術館で観れる予定でした。

残念ながらコロナで中止になってしまいましたが、
今度観られる機会があるとしたら…。

ぜひチェックしておきたいですね!

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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